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北の砦の少年兵アトワ

追いつかない

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走って、走って、走って。

膝で顎を蹴り上げるように、傍から見たら風が吹き抜けるように速く、俺は走った。

鍛えられた足腰はがくがくと痛み、拳骨の後遺症で力は抜けて。
それでも必死に俺は走った。

なんで、とか、どうして、とか。
頭になかった。

完全な無。
何も無い、俺には、ハイネしか。

ハイネはなにかに乗せられているのか、急速に遠ざかって行く。
どうしてだろう、追いつく気がしなかった。

なんでだよ。
どうしてだよ。

あいつが何を思ってこのことを伝えたのか、俺は知らない。

分かるのは、遠ざかるハイネと、届かない手だけで。

「ハイネっ······」

もう二度と、手は届かない気がした。



『あ゛あ゛!クソが!』

『失敗した······失敗した!』

『アドキナめぇぇええええええ!!!!!!』

『繋がりが切られた······クソぉ!!!!』

『今度こそ成功するはずだったのに!』

『······いや、待てよ』

『まだ僕にはあいつがいる』

『まだやり直せる』

『巻き直しは効く』

『今度こそ、あいつとあの子を結ばなきゃ······』
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