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傭兵団の聖女マロン

マロンブラウンの髪

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「────ン、マロン!起きて!」
「ゥ、えっ、イシアさん······?」

揺さぶられるようにして目が覚めた。
見上げると、真っ青な顔をした医療班のイシアさん。
きっちりまとめられた銀髪に青い瞳の彼女は、私の母代わりでお父さんの恋人······と、勝手に私は思っている。

「ど、どうしたんですか?」
「今からコーク商会長に会うわ、おそらく、目的はあなたよ、マロン」
「えっ?えっ?」
「······前々から、コーク商会が聖女を集めていることは有名なの、今回も、ぜひお会いしたいって······あなたのことよ、マロン」
「な、なんで······」
「神聖力の持ち主を集めて、きっと、ろくな事はしないわ······お願い、これを身につけて」
「ええっ」

焦った様子のイシアさんに急かされて、手渡された魔道具を身に付けた。

途端、視界に入っていた髪の色が変わる。
酷く綺麗なマロンブラウンだった。

「よし、目の色も変わっているわね」
「ちょ、イシアさん!魔道具なんて高価なもの、どうして······」
「しー、大丈夫、黙っていればバレないわ······言ってしまうと、あの人に頼まれたの」
「あの人って······おとう、······団長?」
「そうよ」

外行の服に着替えさせられ、目を白黒させつつ手を引かれて外に出る。
そこには、仏頂面をしたアーノルトと、いつも通りの笑みを浮かべたディルがいた。

「あれ、二人ともどうしたの?」
「どうしたもこうしたも······」
「護衛だよ、マロン······マロンブラウンの髪にブルーの瞳、よく似合ってるよ。お揃いだね、マロン」

ディルが言う通り、今の私の色合いらしいその色は、ディルがその身に持っている色に他ならない。

「······なんでこいつの······」

とは言ってもディルは私なんかより何全倍も美人だから、私はかすれちゃうけど。

「えっと、コーク商会長が呼んでる······んだよね、なんで?」
「さあ?お得意の八方美人で引っ掛けてきたんじゃねぇの、どーせ禿げたおっさんだろ」
「アーノルト!失礼ですよ。それにコーク商会長はとてもお若いそうですから······とにかく、そういうことは言わないでください、相手は一国に匹敵します」

イシアさんの真剣な声に、やっと状況が呑み込めて、私はアーノルトとディルと並んでうなづいた。
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