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一騎士として志願し、破竹の勢いで進軍し“常勝将軍”とまで呼ばれるようになったエドワード・フェンティは騎士団長として華々しく凱旋した。
沿道の人々に笑顔で手を振りながら王城入りしたエドワードは、与えられた部屋に入るなり、「アルスリーア・フェンティは城に来ていないのか?」と副官のディーンに尋ねた。
「そういう連絡は入っていません。実家の子爵家にお出でなのでしょう?今は大勢の貴族が城に詰めかけていますから直ぐには来られないのでは?」
「そ、そうか。そうだな」
「国王陛下がお待ちですよ」
「ああ……」
どこか上の空で返事をする上官にディーンは苦笑した。
帰還して数日は多くの戦勝祝いに来た相手や雑務やらに追われるのは仕方ない。
それは理解しているが__、
「何故リーアは来ないっ?!俺が帰還したことはもう伝わっているはずだろう!!」
執務室として与えられた部屋でエドワードは書類に当り散らした。
ここ数日国王はもちろん数多の高位貴族からの誘いが引きも切らず、動けないエドワードは苛立っていた。
「お父君のフェンティ侯爵なら何かご存知なのでは?お会いになっていないので?」
「あの父にとっては次男ですらない俺は目に入っていなかったからな、別に会いたいとも思っていなかったが__そうだな、尋いてみるか」
エドワードは純粋に疑問に思ったようだが、副官であるディーンは嫌な予感がした。
幼馴染で婚約者で、出征時に籍だけ入れたと聞いているが八年は長い。
年頃の令嬢が他に目移り……いや、心変わりするのに充分な時間である。
「……何ですって?」
「いや、だから知らんのだ、ここ何年も会っておらんしーー」
「俺は頼んでいったでしょう!彼女のことを気にかけて欲しいと!リーアは俺の妻なんですよ?!いくら俺が三男とはいえ、」
「いや、だからな儂もお前がそんなに本気とは知らなくてだな、もちろん何か困ったことがあったら言って来るようにと言ってはおいたのだが頼ってきたことは一度もないのだ」
「そうなんですか、それでリーアに最後に会ったのはいつですか?その時何か言っていましたか?」
「それは__……」
目を泳がせる父に嫌な予感を覚えてエドワードの瞳が剣呑に光る。
見た目は完璧な貴公子なのに、“常勝将軍”とまで言われる彼は戦闘時容赦が一切ないことで有名だった。
現侯爵であるエドワードの父親もまさか息子がここまでの猛者になって帰ってくるとは思わず知らず冷や汗をかいていた。
「父上、最後にリーアに会ったのはいつですか?」
「は、八年前、だ」
沿道の人々に笑顔で手を振りながら王城入りしたエドワードは、与えられた部屋に入るなり、「アルスリーア・フェンティは城に来ていないのか?」と副官のディーンに尋ねた。
「そういう連絡は入っていません。実家の子爵家にお出でなのでしょう?今は大勢の貴族が城に詰めかけていますから直ぐには来られないのでは?」
「そ、そうか。そうだな」
「国王陛下がお待ちですよ」
「ああ……」
どこか上の空で返事をする上官にディーンは苦笑した。
帰還して数日は多くの戦勝祝いに来た相手や雑務やらに追われるのは仕方ない。
それは理解しているが__、
「何故リーアは来ないっ?!俺が帰還したことはもう伝わっているはずだろう!!」
執務室として与えられた部屋でエドワードは書類に当り散らした。
ここ数日国王はもちろん数多の高位貴族からの誘いが引きも切らず、動けないエドワードは苛立っていた。
「お父君のフェンティ侯爵なら何かご存知なのでは?お会いになっていないので?」
「あの父にとっては次男ですらない俺は目に入っていなかったからな、別に会いたいとも思っていなかったが__そうだな、尋いてみるか」
エドワードは純粋に疑問に思ったようだが、副官であるディーンは嫌な予感がした。
幼馴染で婚約者で、出征時に籍だけ入れたと聞いているが八年は長い。
年頃の令嬢が他に目移り……いや、心変わりするのに充分な時間である。
「……何ですって?」
「いや、だから知らんのだ、ここ何年も会っておらんしーー」
「俺は頼んでいったでしょう!彼女のことを気にかけて欲しいと!リーアは俺の妻なんですよ?!いくら俺が三男とはいえ、」
「いや、だからな儂もお前がそんなに本気とは知らなくてだな、もちろん何か困ったことがあったら言って来るようにと言ってはおいたのだが頼ってきたことは一度もないのだ」
「そうなんですか、それでリーアに最後に会ったのはいつですか?その時何か言っていましたか?」
「それは__……」
目を泳がせる父に嫌な予感を覚えてエドワードの瞳が剣呑に光る。
見た目は完璧な貴公子なのに、“常勝将軍”とまで言われる彼は戦闘時容赦が一切ないことで有名だった。
現侯爵であるエドワードの父親もまさか息子がここまでの猛者になって帰ってくるとは思わず知らず冷や汗をかいていた。
「父上、最後にリーアに会ったのはいつですか?」
「は、八年前、だ」
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