〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)

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「離婚届?なんでそんな話__リーアに誰かがなんか言ったの?!」
「いいえ、何も?」
気色ばむエドワードに対し、アルスリーアは冷静だ。
(と、いうかむしろ冷淡というか)
ディーンは淡々と分析する。
「じゃあどうして?なんで僕を知らない振りなんか」
「知らないからですよ?」
「リーアッ?!」
「確かに私には子供の頃婚約者がおりました。けれどその方は、私が止めるのも聞かず、理由も話さず、戦地に旅立ってしまいまして、デビュタントには迎えに来ると言っておきながら迎えに来ないどころか連絡ひとつなく、八年間会ったことも話したこともございませんのよ、ね?知らない人でしょう?」
微笑みながら言われた言葉にエドワードは真っ青になり、ディーンは合点がいった。

「リーア……」
涙を浮かべてへたり込んでしまったエドワードには気の毒だが、今はアルスリーア嬢を宥める方が急務である__たぶん。
「団長、先ずはアルスリーア嬢に釈め、いえ経緯の説明をなさった方がよろしいかと」
「いえ結構です、部外者の私に詳しい説明などなさらなくて結構ですわ。それより離婚届を__」
「離婚なんかしない!!」
「__では何をしに?」
挑戦的に言い放ったリーアからは先程浮かべた笑みは綺麗に消えている。
「落ち着いて下さいお二人とも。申し訳ない、ハワードどの」
ディーンの言に領主夫妻の存在を思い出した二人は慌てて居住まいを正す。

対面のソファーに腰掛け、
「申し訳ないがご領主夫妻には席を外していただけないだろうか」
「わかりました、では私達は_「いいえ、ここにいて下さい。」_」
「リーア」
「今の私は旦那様に雇われている身であり、この家の使用人です。このお二人に聞かせられないお話であれば、私にも聞かせないで下さいませ」
「しかし、アルスリーア嬢、」
「いや、そうして頂こう。エルドア子爵が放棄している以上、お二人は今のリーアの保護者にあたられるわけだからね」
「申し訳ありません、旦那様」
「いいや、気にする事はないよイリューシア、私たちは君のことを家族だと思っているからね。だが、エドワード殿とのことについては後で聞かせておくれ」
「勿論です。ありがとうございます、旦那様」
そう言って微笑むアルスリーアには先程までエドワードに見せていた険が微塵もなく、これは根が深そうだとディーンは嘆息した。














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