〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)

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「私が理想通りに育ったわけでも、待っていることも出来なかったのに……?それで失望されたのではなかったのですか?」
「そんなはずがない、俺がリーアに失望するなんて有り得ない。君に何も言わずに何年も待ちぼうけをくわせて、本当に悪かった。自分が格好つけたいが為に君を辛い立場に追いやるなんて、本末転倒だ。なんの為に騎士になったのか__、」
後悔の滲んだ声に、私は顔をあげて彼の瞳を見遣った。

出逢った時と変わらない青い瞳、益々輝きを増した光を弾く金髪は別れた時より少し長い。

私は?

私は成長できているだろうか?

国の英雄として戻ってきたこの人に相応しく__はないな、うん。

戦地にいたのに何故見目麗しくなっているのか心底疑問だが、生まれつきの美貌に文句を言ったって仕方がない。

黙ってしまった私を不審に思ったのか、
「リーア?」
エドワードがおずおずと手を伸ばしてくる。

私はそれを、拒否することも受け入れることもしなかった。

やがてエドワードの手が私の頬に触れるが、私は動けずにいた。



あの日ばっさりと切ってしまった赤い髪は、今ではもう腰まで伸びている。
あの時、それまでの想いも一緒に切り捨てたつもりだった。
けれど、伸ばされた手の感触は嫌じゃなかった。
懐かしさと、壊れ物に怖々触れるような彼の指先の感触にこみ上げるこれは、なんなのだろう?

これは、

「私も、確かめないといけないみたいです__エディ」





「婚約者だの夫婦だのといっても八年間音信不通だったのですから、まずはお友達から」
と言った私に勢いよく頷いたエドワードだったが、
「あの館では警備上不安だから」
とか、
「すまないが自分も王城で仕事があるから」
だとか言われて、数日後には今回の褒章で国王から賜ったという館に引っ越しさせられた。
領主夫妻には既に許可を取ったというエドワードに、
「私は仕事を辞めるなんて一度も言っていませんが?!」
「もちろんだ、休職という形にしていただいている。君の代わりの教師も手配しておいたからこちらでの生活が落ち着いたら通えばいい」
「通うっ?私は住み込みで__」
「君によると私たちはコミュニケーションが足りていないのだろう?あんなに物理的に距離が空いていては取りようがない。近くに住んでいた方が合理的ではないか?」

それはそう 
だ 
が__、
「勝手に旦那様たちと話をつけてしまうなんて」
人の仕事を何だと思っているのだろう?
「勝手に話を進めてしまってごめん、けどもうリーアと離ればなれになりたくないんだ。ここに暫く住んでみてどうしても気に入らなかった言ってくれ、二人で考えよう
「……!……」






















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