〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)

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「な、何がおかしいのよっ?!」
キツネ令嬢の目が文字通りつり上がる。
「だって、先ほどから寄ってたかって私を貶めているあなた方がまるで“自分達を手本にしなさい“とでも言うようなことばかり仰るのですもの……!私もう、おかしくって」
「「「はぁっ?」」」
お 三匹の声が揃った。流石エドワードを狙う肉食獣仲間!同じ穴のむじなは気が合いますのね?

「ああなた、どこまで私たちをバカに_「馬鹿にしているのはそちらの方ですわ」_え?」
「私は一番先に名乗ったはずですわ、アルスリーア・と。現騎士団長でありフェンティ騎士伯の爵位を賜ったエドワード・ル・フェンティのパートナーとしてこの場に出席していると、子供でもわかるように名乗って差し上げましたのよ?引き換え貴女がたは一体何なのです?子爵令嬢と連呼した挙句まだ一人も名乗ってすらいない。そんな貴女がたを見習えと?貴女がたを見習って立派な淑女が出来上がるとはどうしても思えないのですけれど?」
「「「……っ……」」」
「元同級生かもしれませんけれど、知り合いでも友人でもない方にいきなりこんな暴言を喰らうとは私思っていませんでしたわ?確かに私は今日がデビューですけれど、私がこの場に来たのは夫であるエドワード様がお望みだったからですのよ?」
「あ……」
「う……」
「そんな……」
今度は異口同音で顔を青くさせる。

忙しいな、赤くなったり青くなったり。

しん、と静かになった一帯でアルスリーアだけは涼しい顔だ。
涼しい顔だが、一番怒ってもいる。
「エスコートしたい」と宣った本人の戻りが遅すぎる。
いくら伏魔殿の生息生物を知らないと言っても放置時間が長すぎる。
もうほっぽって帰りたいが、もしこの状態を見越して引き留めている人間がいるとすれば__愉快犯か、試されているのか確かめる必要がある。

「反論がないということは、自分たちが無礼者であると認めたのかしら?」
同じ“伯爵“でもただの伯爵家と騎士伯なら騎士伯の方が発言力において上、ついでに侯爵家においても影響力は上である。
つまり、この三人は今のアルスリーアより格下。
アルスリーアがこの場面にオロオロして泣き出すような令嬢なら軍配は彼女らに上がったかもしれないが、今のアルスリーアにこんな姑息な真似は通じない。
「「「……っ……」」」
三者同時に悔しそうに歯噛みする。
__だんだん三つ子に見えてきたな。
(他に乗っかってくるのはいなさそうだな……ふむ。どうするか)

そこへ、
「__これは何の騒ぎだ!」
男性の声が割って入った。
















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