50 / 73
49
しおりを挟む
私とエドワードの挨拶は最後だった。
エドワードが陛下の寵臣だと知れ渡っているとはいえ、当然周囲__とくに高位で付き合いのない貴族たち__からはひそひそと非難の声があがる。
国王陛下、狙いすぎでは?
何げに敵対勢力削ぐのに程よく利用してませんか?
とか心中で突っ込んだところで、
「エドワード様!」
と問題児が大きな声と共に出てきた、何の紹介もなく。
普通、どこそこの王女がお越しだとかなんとか、陛下から紹介されるもんじゃないのかな?
「お会いしたかったですわ」
レベッカ王女はほんのり頬を染め、うっとりとエドワードの顔を見つめる。
(面食いなのねこの王女……)
そして目の前のエドワードの視線が絶対零度なのに気がついていない、恐るべし鈍感力。
(ある意味天晴れ、というべきかしら?)
妙な感心の仕方をするアルスリーアは眼中にないようで、レベッカ王女はエドワードの腕を取ろうとし、素早く避けられた。
同時にエドワードの腕はアルスリーアに伸び、ふわりと体が持ち上げられたかと思ったら一瞬後エドワードの背中に隠されていた。
「俺に何か用か?ミレスナの王女」
冷たいエドワードの声に、ザワっと広間が騒ついた。
「あれがミレスナの……」
「エドワード様狙いなのかしら?」
「紹介されないということは正式な招待客ではないのでしょう、血は争えませんわね?」
ひそひそした声が嘲笑を伴って広がっていく。
だが、そんな声は耳に入らないように「エドワード様に戦勝のお祝いを申し上げに参りましたの。エドワード様ったら、ミレスナにお寄りになることなくお帰りになってしまわれたのですもの__我が城に滞在中はあんなに親しくさせていただいておりましたのに」と切々と語る声に共感する声や視線は現れない。
「思わせぶりな言い方はやめてもらおう、ミレスナはただの通り道、本戦場に至るまでの拠点のひとつにすぎん。それが何故わからない?」
「まあエドワード様、奥方様に何か言われたのですか?」
ここでギッ、とエドワードの背後に立つ私の方に視線を向ける。
「本当に図々しい娘ね!エドワード様と私の邪魔になるからさっさと離婚しなさいって言ったのにまだこんなところでエドワード様の隣に立つなんて!」
ぶわりとエドワードの全身から殺気が噴き出たのを感じた。
戦場を知らないアルスリーアですら感じとれたそれは広間の客も皆感じ取ったらしく、その場で卒倒する御夫人すらいた。
いやいやいや、状況、よく見ようよ?
広間の客たちが全力で目で訴えていた。
『頼むから、この鬼神をそれ以上怒らせないでくれ』
と。
エドワードが陛下の寵臣だと知れ渡っているとはいえ、当然周囲__とくに高位で付き合いのない貴族たち__からはひそひそと非難の声があがる。
国王陛下、狙いすぎでは?
何げに敵対勢力削ぐのに程よく利用してませんか?
とか心中で突っ込んだところで、
「エドワード様!」
と問題児が大きな声と共に出てきた、何の紹介もなく。
普通、どこそこの王女がお越しだとかなんとか、陛下から紹介されるもんじゃないのかな?
「お会いしたかったですわ」
レベッカ王女はほんのり頬を染め、うっとりとエドワードの顔を見つめる。
(面食いなのねこの王女……)
そして目の前のエドワードの視線が絶対零度なのに気がついていない、恐るべし鈍感力。
(ある意味天晴れ、というべきかしら?)
妙な感心の仕方をするアルスリーアは眼中にないようで、レベッカ王女はエドワードの腕を取ろうとし、素早く避けられた。
同時にエドワードの腕はアルスリーアに伸び、ふわりと体が持ち上げられたかと思ったら一瞬後エドワードの背中に隠されていた。
「俺に何か用か?ミレスナの王女」
冷たいエドワードの声に、ザワっと広間が騒ついた。
「あれがミレスナの……」
「エドワード様狙いなのかしら?」
「紹介されないということは正式な招待客ではないのでしょう、血は争えませんわね?」
ひそひそした声が嘲笑を伴って広がっていく。
だが、そんな声は耳に入らないように「エドワード様に戦勝のお祝いを申し上げに参りましたの。エドワード様ったら、ミレスナにお寄りになることなくお帰りになってしまわれたのですもの__我が城に滞在中はあんなに親しくさせていただいておりましたのに」と切々と語る声に共感する声や視線は現れない。
「思わせぶりな言い方はやめてもらおう、ミレスナはただの通り道、本戦場に至るまでの拠点のひとつにすぎん。それが何故わからない?」
「まあエドワード様、奥方様に何か言われたのですか?」
ここでギッ、とエドワードの背後に立つ私の方に視線を向ける。
「本当に図々しい娘ね!エドワード様と私の邪魔になるからさっさと離婚しなさいって言ったのにまだこんなところでエドワード様の隣に立つなんて!」
ぶわりとエドワードの全身から殺気が噴き出たのを感じた。
戦場を知らないアルスリーアですら感じとれたそれは広間の客も皆感じ取ったらしく、その場で卒倒する御夫人すらいた。
いやいやいや、状況、よく見ようよ?
広間の客たちが全力で目で訴えていた。
『頼むから、この鬼神をそれ以上怒らせないでくれ』
と。
1,024
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します
佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。
セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。
婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる