〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)

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その願いは叶わず、レベッカが大人しく引くことはなかった。
「エドワード様はお優しすぎるのですわ。いつまでも幼馴染なんか、に?!」
延ばした腕が大きく振り払われ、レベッカはその場に尻もちをつく。
「エ、エドワード様……?」
見上げた先のエドワードの瞳の冷たさに、レベッカは息を呑む。

「俺に触るな、話し掛けるな。アルスリーアを侮辱するな。そんなことをいちいち言われなければわからないのか__本当に王女か?そんな幼児にするような説明が必要な頭しかないのならこんな場所に出てくるな」
「エ、エドワード様……そんな……」
こんな扱いを受けたことがないレベッカは衝撃で言葉が上手く出てこない。

だが、誰もこの場に入って事を納めようとはしなかった。

即ち、それが国王を筆頭としたこの国の総意だった。

だと言うのに、
「エドワード様、その女に怪しい薬でも盛られたのですか?!様子が変ですわっ!私の知るエドワード様は私以外の女性を寄せ付けず、何事にも潔癖な騎士でいらしたのに__」
「戦争中の城内など警戒していて当然だ。貴様も近付けた覚えはない、あの城の王女という身分を振りかざして強引にすり寄ってきたんだろう。それでも廊下を数分移動するくらいしか共にいた覚えはないが」

エドワードの言にクスクスと広間に笑いが満ちる。
「まぁ……」
「それで恋人気取りだなんて」
「ただの友人同士でももう少し交流してますわよ」
「あらダメよそんなことを言っては、きっとそれがミレスナ流なのではなくて?」
「つまり殿方とまともに目も合わせたことがない筋金入りの箱入りということかしら?」
「まあ!そんなはずありませんわ。だってあの方の母君といえば……」
「……ですわよねぇ」
「……ですもの……やはり血は争えないということ」
ところどころ聞こえないが、自分が母ともども馬鹿にされていることだけは理解したレベッカは羞恥に染まり、怒髪天を突く勢いで立ち上がると、
「い、今暴言を吐いた者、前へ出なさい!ミレスナの王女と王妃を公然と侮辱するなんて、恥を知りなさい!」

だが、前へ出る者もいなければ誰かに擦り付けて押し出そうとする者もいない。
どころか、気まず気に顔を見合わせる者すらいない。
「……侮辱、かしら……?」
「本当のことを言っただけで侮辱にはあたりませんわ。少なくともこの国の法では」
そう言ったのは誰あろうハイネン公爵夫人サーシャ様だ、王妃様の友人の。
(あ“ーー)
アルスリーアはこの場の台本が誰の手によるものなのか、なんとなく察した。














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