1 / 2
婚活パーティーに引き立て役で強制参加。課長「こいつは底辺の役立たずだからw」笑い者にされ、涙目になっているところに美女が現れ…
しおりを挟む
僕の名前は、市川亮。26歳だ。
専門学校を卒業して、エンジニアになった。
昔から機械が好きで、早くから携帯やパソコンを買ってもらい、同学年の誰よりも詳しかった。
最近は趣味で携帯ゲームアプリの作成にハマっている。
そんな機械大好き人間の僕の苦手なことは、人とのコミュニケーションをとることだった。
小さい頃から趣味で作り続けている、ロボットのおもちゃが大の仲良しだ。
ロボットには気を使わなくていい。
僕の話も黙って聞いていてくれる。
突然裏切ったり、仲間外れにしたり、大声で怒鳴ってくることもない。
そんな僕の将来の道は、おのずと決まっていた。
得意な機械の仕事ができる今の職場は、居心地がいい。
とてもやりがいを感じているし、自分のキャリアアップにも繋がる。
自分の中では、充実した生活を送れていると感じていた。
ただひとつを除いては・・・
小手川「だーかーらー!!聞いてる?上司だよ?俺」
オフィス中に響きわたるくらいの大きな声。
周りの社員も一瞬何事かとこちらを見るが、原因がわかった途端、さっさと自分達の仕事に戻って行った。
小手川雅也。僕の上司であり、課長である。
小手川「市川君さ、俺が頼んでおいた資料、今日までに準備しておいてって言ったよね?」
市川「あ、はい。これです。後はコピーして・・・」
小手川「今何時だと思ってる?もう夕方だよね?普通こういうのは午前中のうちに持ってくるもんじゃないかなー!!」
市川「す、すみません・・・」
昨日突然頼まれた資料作成。
自分の仕事もそこそこに、急ピッチで仕上げたのに、この言われようだ。
小手川「はあ。まあいいや。使えないこともないし。」
そういうと、僕が作成した資料にざっと目を通し、自分の席に戻って行った。
周りの社員は、気の毒そうな顔で僕を見ている。
そりゃそうだ。
この資料、本当ならば小手川が作らないといけないものなんだから。
そうこうしているうちに辺りは暗くなり、ほとんどの社員が帰宅の準備を始めていた。
僕はというと、小手川の資料作成のせいで出来なかった自分の仕事に追われていた。
小手川「市川君。」
市川「うわああ!小手川、、課長?」
いつものように大きな声ではなく、座っている僕の耳元にこっそり話しかけてきた小手川。
自分の仕事に集中していたせいか、退社時間はとっくにすぎ、社員はほとんどだれもいなくなっていた。
市川「ど、どうしたんですか?課長。」
小手川は周りをさっと見回すと、また小声で僕に話しかけてきた。
小手川「市川君。君に特別な任務を与えよう。」
嫌な予感がした。
ー数日後ー
小手川「はっはっはー!!市川君!君もスーツを着れば一人前に見えるもんだなー!!」
静かなエントランスに小手川の大声が響く。
数人の男女がこちらを向いてひそひそと話している。
僕は恥ずかしくてそっと顔を伏せた。
僕は今、人生で初めての婚活パーティーに参加している。
しかも大嫌いな上司とともにだ。
事の発端は、小手川が婚活パーティーに行きたいと言ったことから始まった。
1人で行けよ、と思ったが上司にそんなことは言えない。
僕に拒否権はなかった。
2人で受付を済ませ、大きなホールに案内された。
そこには思いのほか多くの男女がいて、僕は少し入るのをためらった。
市川「課長・・・僕、婚活パーティーに参加するの初めてで・・・」
小手川「だろうな!!それより俺のそばを離れるなよ。お前が隣りにいると、俺が目立つからな。」
そういうと小手川は、37歳にしては薄くなった髪の毛をそっと撫で付けると、ニヤッと笑った。
結局僕は小手川の引き立て役なのだ。
わかってはいたけれど。
しばらくはフリートークのようで、小手川はお目当ての女性がいないか探し始めた。
僕はそんな小手川の後ろから、極力気配を消して着いていく。
近くに女性の2人組がきた。
小手川は気持ちの悪い笑顔で話しかけに行くが、案の定女性には相手にされず、すぐに戻ってきた。
小手川「見る目のない女だ!!」
市川「・・・そうですね」
次だ次だ!と息巻く小手川。
しかし何人かの女性に声をかけるも、ことごとく相手にされない。
だんだんと小手川の機嫌が悪くなってきた。
小手川「おい!!お前がいるから陰気臭くなってるんじゃないか?もういい!お前が誰か連れて来い!!」
市川「え!?僕がですか?・・・わかりました」
とんだとばっちりだ。
小手川は近くにあった椅子に腰を下ろし、僕を手で払いのける仕草をした。
しょうがなく、誰に声をかけようかうろうろしていると、大人しそうな女性の2人組をみつけ話しかけることにした。
勇気を出して話しかけると、とても良い人達で、僕は小手川の事をすっかり忘れ、3人で会話を楽しんでいた。
小手川「おい!!!」
突然後ろで大声がしたので振り向くと、小手川が怒りの表情で立っていた。
市川「あ・・・紹介します。こちら僕の職場の上司で、小手川雅也さんです。」
僕は女性に小手川を紹介した。
小手川「どうも。課長をやっております。」
小手川は自慢げな顔で女性にあいさつをして続けた。
小手川「いやいや!こいつがどうしても婚活パーティーに行きたいって言うもんで!上司として部下のめんどうをみるのは仕事ですからねー!まぁしかしこいつは全然仕事ができない、底辺の役立たずでして。はははは。」
嬉々として僕の事を侮辱し始めた小手川。
女性2人は苦笑いだ。
小手川「いやーこんなやつ婚活パーティーに来ても、女性に受け入れられないでしょう!見た目も陰気で話してても全然楽しくないでしょうし!仕事も全然できないんですよ!この間なんか」
まだ続ける気なのか。
だんだんと涙が出てきた。
悲しくてじゃなく、悔しくてだ。
小手川にこんなに言われて、言い返すことすらできない自分自身に腹が立ってきた。
もう嫌だ。
婚活パーティーがなんだ。
上司がなんだ。
僕は拳にギュッと力を込めて小手川をにらみつける。
小手川の命の次に大事であろう、数少なくなった髪の毛を引き抜いてやろうと、一歩前に出た時だった。
貴子「あら?仕事のお話?でももっと楽しいお話、しませんか?」
そう言って突然僕の隣りに現れた美女。
絵に描いたような美女。
僕は一瞬で目を奪われた。
それは小手川も同じだったようで、目を丸くし開いた口が塞がらないようだった。
貴子「私はどうですか?一緒にお話、しませんか?」
美女はそういうと、僕の腕に軽く腕を絡めてきた。
軽く首を傾けて上目遣いで僕を見ている。
市川「・・・はいっ!!!」
小手川の事なんて頭から抜けていた。
僕はその美女とホールを抜け、外のガーデンテラスへと歩き始めた。
小手川「お、おい!!市川!!」
後ろから小手川の声が聞こえたが、無視した。
ガーデンテラスへ着くと、置いてあったベンチに美女と腰かけた。
市川「あ、あの・・・。先程はありがとうございました。」
とりあえずお礼を言ってみた。
こんな美女と話したこともないし、何の話をすればいいかわからなかった。
コミュ障の俺にはこれが精一杯だった。
貴子「ふふ。上司に無理やり連れてこられたって顔してましたよ。」
美女は僕の目をまっすぐみつめ、綺麗な顔で笑った。
僕は美女の顔を直視できず、地面をみつめもごもごと言葉にならない言葉を発していた。
貴子「そうだ!自己紹介がまだでしたね。私、篠原貴子です。」
篠原貴子という美女はずっと笑顔のまま、僕に話しかけてくれた。
市川「あ、僕は、市川亮です。26歳でエンジニアやってます。」
なんとか絞り出した言葉は、何のおもしろみもない自己紹介だった。
貴子「亮さんですね。私、25歳なので1つお兄さんですね。」
貴子さんはずっと笑顔だ。
その笑顔で、僕の心が澄んでいくのがわかった。
少しずつ話すことにも慣れ、不器用ながらではあるが、会話が続いた。
貴子「あ、もう時間みたいですね。」
楽しい時間はあっという間にすぎる。
婚活パーティーもそろそろお開きのようだ。
市川「あ、ありがとうございました!では。」
そう言ってベンチから立ち上がり、帰ろうとした僕の袖を、貴子さんがちょん、と掴んだ。
貴子「あの。もし良かったら、連絡先教えてくれませんか?」
時が止まった気がした。
かなり間抜けな顔をしていたと思う。
貴子「だめ、ですか?」
市川「いえ!あ、いや、いいえじゃなくて!よ、よろしくお願いします。」
かなり動揺しながら、なんとか連絡先を交換する事が出来た。
貴子「連絡しますね。」
貴子さんは、会った時と同じ綺麗な笑顔でそう言うと会場を後にした。
婚活パーティから1ヶ月後。
あれから僕は貴子さんと頻繁に連絡を取り合い、2人で数回会うまでの仲になっていた。
今日も2人で会う約束をしており、待ち合わせた喫茶店で貴子さんを待っている。
貴子「お待たせ。ごめんね、待った?」
市川「いいえ!全然待ってないですよ。」
今日も綺麗な貴子さんに胸が高鳴る。
何度会っても緊張してしまう。
貴子「そろそろ敬語やめない?私の方が年下なんだけどな。」
市川「そうですね。そのうち。」
貴子さんには未だに敬語が抜けない。
敬語だと壁を作っているようで申し訳ないが、なんというか、貴子さんのオーラに圧倒的されてしまうのだ。
貴子「そのうち、ね」
言うほど気にしていない様子の貴子さんは、アイスティーとホットコーヒーを注文した。
もう何も聞かずとも、僕が注文するものをわかって一緒に注文してくれる。
そういうところも素敵だ。
この1ヶ月で、完全に僕は貴子さんに恋をした。
でも、会う度に貴子さんを知れば知るほど、僕とは不釣り合いすぎて自己嫌悪に陥る。
こうやって月に何度か2人でお茶をする、それだけで充分だ。
むしろそれでも贅沢すぎるくらいだ。
注文したメニューが運ばれてきた。
貴子さんはアイスティーを一口飲むと、僕を真っ直ぐにみつめて、何か言いたそうな顔をしていた。
市川「どうしました?」
貴子「亮さん。私の彼氏になってくれない?」
僕はコーヒーカップを持ったまま固まった。
1週間後。
僕は今、貴子さんの家の前にいる。
覚悟を決めてインターホンを押すと、緊張を解く声が聞こえてきた。
貴子「亮さん。いらっしゃい。」
貴子さんに案内され、応接室に通された。
貴子「ごめんね。急に。今日しかパパの予定が空いてなくて。」
市川「いいえ!早い方が良いと思うので。」
そんな話をしていると、応接室のドアが開いた。
市川「は、はじめまして!貴子さんとお付き合いをさせていただいております、市川亮と申します。本日はお忙しいところ、お時間いただきありがとうございます。」
丁寧すぎるくらいのあいさつ。
ド忘れすることもなく、噛むこともなく、早口にはなったがちゃんと言うことができてホッとした。
清隆「篠原清隆だ。座りなさい。」
篠原清隆。貴子さんの父親であり、とある大きな会社の社長である。
清隆「で、話とはなんだね?」
早速本題に切り込んできた。
貴子「パパ。私と亮さんの交際を、パパに認めてほしいの。」
清隆さんは、僕を頭の先から足の先まで品定めするように見ている。
清隆「ほう。貴子、お前こんなメガネでもっさりした男が好きだったか?」
貴子「えぇそうよ!メガネなんて理知的でしょう?それにこの髪型は、今流行りの韓国スタイルなんだから!」
ありがとう貴子さん。
物は言いようだ。
26にもなって、さすがにきのこヘアーはまずかったか。
清隆「貴子。私がお前のことを大事に思っているのはわかっているな?この男と結婚して、お前は幸せになれるのか?父さんの言う通り、例の会社の息子と結婚すれば幸せになるんだぞ。」
僕の事が見えているのか不安になるくらい、僕の存在を無視されている気がする。
貴子「パパ。自分の事は自分で決めたいの。いっつもパパは私のためだって言うけど、私の意見は?聞いてくれたことある?」
清隆「お前はまだ若い。父さんの言うことを聞いていれば幸せになれる。」
清隆さんが貴子さんの事を溺愛しているのは伝わってくる。
しかし、その愛情が違う方向へ向かっているのも伝わってきた。
社長令嬢も大変だ。
貴子さんは今までもこうやって、自分のやりたいことを抑圧されたりしてきたのだろうか。
貴子「パパ。私、決めたから。パパが何と言おうとこれだけは譲れない。」
貴子さんも引かずに食い下がる。
清隆「そうか。貴子、お前のことだ。もう何を言っても言うことは聞くまい。だがしかし、1つだけ条件がある。」
突然の条件提示に、僕も貴子さんも困惑した。
貴子「条件?」
清隆「そうだ。市川君。君は今、エンジニアとして働いているそうだね?」
市川「は、はい!」
突然僕に話が振られ、驚いて声が裏返った。
清隆「うむ。ではその仕事、やめてもらおう。」
市川「え・・・」
貴子「パパ!?あんまりだわ。亮さんの仕事をやめさせるなんて!」
清隆「それが条件だ。貴子と付き合う覚悟があるのなら、今の会社を辞めてうちの会社に入りなさい。それができないのならこの話はなしだ。」
清隆さんはそう言うと、椅子から立ち上がり部屋を出ていった。
貴子「ごめんなさい。まさかパパがあそこまで言うなんて。ただでさえ無理言って付き合わせてしまっているのに。」
そう。
僕達は本当のところ、付き合ってはいない。
付き合っているフリをしている。
貴子さんの父親、清隆さんが経営する会社の取り引き先の社長の息子。
本当ならその社長の息子と貴子さんが交際し、結婚をする予定だった。
いわゆる政略結婚だ。
貴子さんはそれが嫌で反発し、婚活パーティーにも参加をしていたという。
貴子「ごめんなさい。やっぱりこんなことはするべきじゃなかったんだわ。」
落ち込む貴子さんを見ていると、僕も辛くなってきた。
市川「貴子さん・・・僕、会社やめます。」
貴子「それはだめ!!私のためにそこまでさせるわけにはいかないわ!エンジニアのお仕事、楽しいってよく話してくれてたじゃない!」
市川「確かに今の仕事は楽しいです。でも、貴子さんと出会って、僕はもっと楽しい事があるって知ったんです。貴子さんは僕の恩人です。あの時貴子さんが声をかけてくれなかったら、僕は多分ずっと、根暗で陰キャで、上司の嫌がらせに耐えるだけの生活を送っていたと思います。だから、恩返し、させてください。」
僕は貴子さんに素直な気持ちを話した。
貴子さんは驚いていたが、目にうっすらと涙を浮かべて微笑んだ。
それから、僕は会社を辞め、貴子さんのお父さんが経営する会社へと転職した。
慣れ親しんだ職場を辞めるのは辛かったが、小手川から離れられることは嬉しかったし、なにより貴子さんのためだと思うと苦ではなかった。
だけど僕は、新しい職場で今までより辛い洗礼を受けることになる。
市川「本日から入職しました、市川亮と申します。これからよろしくお願いします。」
あれから、大好きだったエンジニアの会社を辞め、貴子さんの父親の会社へと入職した。
自分の所属する部署へのあいさつも終わり、さあ仕事!という時に、ふと周りの視線を感じる。
市川「あ、よろしくお願いします。」
目が合った社員へあいさつをした。
完全に目が合っていたのに、まるで僕の姿が見えないかのように無視をされた。
聞こえなかったのかな?と思い、仕事に戻る。
しばらくして飲み物を取りに給湯室へ向かった時、社員の声が聞こえてきた。
社員1「きいたか?あいつ、跡取り候補らしいぜ?」
社員2「まじかよ!あれが?ありえねー!!どうせ仕事もできないんだろ?」
社員1「社長も気の毒だよな。俺達に頼むくらいだからよ。」
社長が頼む?何の話だ?
僕はそっとその場から立ち去った。
市川「あれ?ない・・・」
自分のデスクへ戻ったら、さっき渡されたはずのUSBがなくなっていた。
市川「あれ?さっきここに置いてたのに。」
さすがに入職初日から物を無くすのはだめだ。
僕が必死になって探していると、給湯室にいた社員が戻ってきていた。
社員1「市川さん、だっけ?どうしたの?」
市川「あ、えっとすみません。もらったUSBが見当たらなくって。」
社員1「えー!もうなくしちゃったの?しかもUSBってデータ消えたり漏れたりしたら大変だよ?市川さんてさ、大学どこだっけ?」
市川「え、と、大学は行ってないです。エンジニアの専門学校に行ってたんで。」
社員1「あーそ!専門学校だったら物をなくしちゃだめってこと、教わらなかったのかな?」
ははは!と笑うその社員。
でも嫌味に反応できないくらい焦っていた。
確かに入職初日の失態はやばい。
貴子さんにも顔向けできない。
でも結局USBはみつからなかった。
他の社員からの冷たい視線にも耐え、上司に紛失の報告書を提出し、その日は終わった。
思ったより歓迎されていない。
むしろ僕がこの会社から早く出ていくように仕向けられている。
貴子さんの父親である、社長によって。
でもこんなこと貴子さんに言えない。
僕が我慢するしかない。
我慢すればいい。
しかし嫌がらせは日を追う事に執拗になり、エスカレートしていった。
そしてとうとう貴子さんの耳にまで届いてしまった。
貴子「どうして私に相談してくれなかったの?」
市川「貴子さんに迷惑かけるわけにはいかないですから。僕が我慢すれば、全部うまくいきますから。」
そう言うと貴子さんはすごく悲しそうな顔をした。
貴子「どうして。どうしてそこまで。元はと言えば私のわがままから始まったことなのに。私こそ、これ以上亮さんに迷惑かけられない。」
貴子さんの目からは涙が溢れていた。
市川「貴子さん。僕は大丈夫ですよ。
こういうの慣れてるというか、平気なんで!」
とは言ったものの、さすがに毎日のように嫌がらせが続くとさすがに参ってきた。
物がなくなるのは日常茶飯事なので、極力物を少なくし、常に持ち歩くようにした。
しかしそれでも、デスクに置いていた物品はなくなり、作成途中のデータを消されることもしばしばだった。
パワハラや暴力はなかったが、陰湿ないじめのような嫌がらせが続いた。
気にしないようにしていたが、精神は疲弊し食欲もあまりなくなっていた。
それでも時々貴子さんに会う時は、辛さを顔に出さないように、平静を装っていた。
それからしばらく、職場からの嫌がらせにも耐え頑張っていたある日のことだった。
貴子「亮さん。仕事、やめてほしいの。」
市川「え!?何かあったんですか?」
貴子「私、耐えられないの。亮さんが職場の人達に嫌がらせをされていること。やっぱり無理なの!大切な人が嫌な思いをしているのは嫌。」
市川「貴子さん。え?大切な、人?」
そう聞き返すと、貴子さんは真剣な表情で言葉を続けた。
貴子「亮さん。最初は付き合ってるフリから始まった私達の関係だけど、そろそろ事実にしない?」
市川「え?それって?つまり・・・」
貴子「私と本当に付き合いませんか?って意味。」
そう言うと貴子さんは恥ずかしそうに笑った。
市川「え、え、ええ!?こんな僕でいいんですか??何の取り柄もない、陰キャのコミュ障の根暗のダメなやつですよ?」
貴子「亮さんはだめなやつなんかじゃないわ。陰キャコミュ障根暗はよくわからないけど、私は今のまま、そのままの亮さんが素敵だと思うわ。」
突然の貴子さんの告白で、僕の思考は停止している。
これは現実か?
いや、夢でもいい!
早く答えないと。
市川「ぜ、ぜひよろしくお願いします!僕は貴子さんが本当に好きです!絶対幸せにします!」
貴子「え?もうプロポーズ?ふふ、私も好きです。幸せにしてね。」
少しはにかんで笑う貴子さんは、すごく可愛かった。
これを機に、僕は前から考えていた事を伝えることにした。
市川「実は僕、前々から考えてたことがあるんですけど。独立して自分の会社を作ろうかと思っていて。」
貴子「え!?すごい!ぜひやるべきだわ!応援する!ならなおさら会社やめないとね。」
貴子さんの告白もあり、僕は会社を辞めることにした。
数日後、意を決して辞表を上司に渡した。
上司は、提出する資料をもらうかのような態度で、特に何も言わず気にも止めていないようだった。
貴子さんの父親である、清隆さんにも辞職を伝えに行きたかったが、ことごとく都合が合わないと言われ、会うこともできなかった。
出社最終日。
社員達に、今日で退職しますと伝えてもみんな特に何も言わなかった。
数人の社員から、お疲れ様でしたという業務的な言葉をかけてもらえたくらいだ。
物の少ないデスクはすぐに片付いて、まるでそこには最初から僕なんか存在しなかったような気がして、少し寂しい気持ちになった。
ー3年後ー
市川「貴子さん、最近ご両親は何か言ってくる?」
貴子「何にも?たまに連絡来るけど無視してる。」
僕は3年前、貴子さんの父親が経営する会社を辞め、フリーランスのエンジニアとして独立した。
今ではたくさんの顧客が付き、日々忙しくさせてもらっている。
貴子さんも僕が辞めてすぐに会社を辞め、父親とは絶縁状態となっている。
今は僕の会社を手伝ってくれている。
最近、様々な会社の業務効率化が捗るようなアプリの制作をしていて、それがなかなか好評で大ヒット商品となっている。
とある会社に依頼を受けて作ったアプリなのだが、その会社が貴子さんの父親のライバル会社だと知ったのは、アプリを作った後だった。
今ではそのアプリが大ヒットし、それが元で貴子さんの父親の会社が経営難になっていると噂で聞いた。
ある日、貴子さんの父親が僕の元を訪ねて来た。
清隆「市川君。君はいつかやると思っていた。さすがだ。貴子の目に狂いはなかった。ぜひ貴子を幸せにしてやってほしい。」
初めて会った時とは別人のようだ。
市川「はい。言われずとも、貴子さんの事は幸せにします。ご心配には及びません。」
清隆「そ、そうか。では家族からの頼みだ。我が社にも同じようなアプリを作ってほしい。」
貴子「お断り!」
僕が言葉を発する前に、貴子さんが部屋のドアを勢いよく開け入ってきた。
清隆「おお!貴子!会いたかったぞ!元気だったか?」
貴子「あなたの顔を見た途端元気じゃなくなったわ。何しに来たの?どの顔で亮さんに会いに来たの?」
普段の貴子さんからは想像もできないくらい怒っていた。
その怒りに圧倒され、父親である清隆も何も言葉を発せないでいた。
貴子「帰って。今すぐ。早く!」
清隆の腕を掴むと、椅子から立ち上がらせ玄関へと連れて行った。
父親が僕に嫌がらせをしたことを、僕より許していないようだ。
貴子さんは、そのまま父親を玄関から追い出すと、二度と父親を家に入れることはなかった。
そして最近、もう1人懐かしい人物が訪ねてきた。
落ち着いた雰囲気の喫茶店に、似つかわしくない大声を出しながら近付いてきた人物は、手を挙げながら僕の名前を呼んだ。
小手川「市川くーん!久しぶり!いやー、会いたかったよー!!」
小手川だ。
数年の時を経て、さらに薄毛が加速し、お腹まで出てくるというコンボを決めてきた。
市川「課長!お久しぶりです。」
小手川「課長。うん、課長ね。懐かしい。今はなんていうか、ほら、ね。課長は大変だから、もういいかなーって思ってね。はははは!!」
この感じ、降格されているな。
それもそうだろう。
逆によく課長になれたと思う。
2人分のコーヒーを注文すると、小手川が話し始めた。
小手川「市川君がいなくなって、君の仕事が全部俺に回ってきたんだよ!!ただでさえ俺は忙しかったのに、2人分の仕事をするのは無理な話だと思うだろう?」
要するに僕がいなくなった事で、小手川の仕事のできなささが露呈し、それが元で降格されたという事だろう。
小手川「他のやつらも、みんな仕事ができないやつばっかりだから大変だったんだぞ!結局課長だったばっかりに俺が責任を取らされたんだ。」
しばらく小手川の会社の愚痴が続いた。
すぐに注文したコーヒーが届き、小手川はコーヒーを飲みながら話を続けた。
小手川「それはそうと、市川君。君、今景気良いみたいだね。まあ俺のおかげで社長令嬢とも付き合えたわけだし?感謝のひとつもあっていいと思わないかい?」
これが本題か。
市川「あー、そうですね。その節はありがとうございました。」
小手川「うんうん。それでだね、お礼としてひとつ頼まれてくれないか?実は仕事を頼みたくてさ。格安で。できるだろ?俺に恩があるもんな?」
市川「・・・そうですね。小手川さんのために、とある商品開発を考えていました。その商品に関しては、小手川さんには特別に無料で提供させていただきたいなと。」
小手川「さすが話が早いな!!昔から仕事ができるやつだと思っていた!それで?どんなアプリだ??」
市川「アプリではないんですが。育毛剤ですね。小手川さんならぜひモニターになっていただきたいと・・・」
僕が説明をしている途中にも関わらず、小手川は一瞬驚いた顔をしていたが、次の瞬間顔を真っ赤にして怒り始めた。
大声を出す小手川に、お店のスタッフは少し迷惑そうな顔をしている。
そんな小手川を笑いながら、僕は自分の分のコーヒー代を置き、手を振って帰った。
その後、小手川は地方に左遷されたらしいという話を聞いた。
僕はというと、仕事は順調に軌道に乗り、貴子さんと結婚して幸せに暮らしている。
真面目に生きていれば、いつか誰かが見てくれていて、きっと幸せになれると信じていた。
僕を見てくれていたのは、今僕の隣りで綺麗な顔で笑う、天使のような貴子さんだった。
専門学校を卒業して、エンジニアになった。
昔から機械が好きで、早くから携帯やパソコンを買ってもらい、同学年の誰よりも詳しかった。
最近は趣味で携帯ゲームアプリの作成にハマっている。
そんな機械大好き人間の僕の苦手なことは、人とのコミュニケーションをとることだった。
小さい頃から趣味で作り続けている、ロボットのおもちゃが大の仲良しだ。
ロボットには気を使わなくていい。
僕の話も黙って聞いていてくれる。
突然裏切ったり、仲間外れにしたり、大声で怒鳴ってくることもない。
そんな僕の将来の道は、おのずと決まっていた。
得意な機械の仕事ができる今の職場は、居心地がいい。
とてもやりがいを感じているし、自分のキャリアアップにも繋がる。
自分の中では、充実した生活を送れていると感じていた。
ただひとつを除いては・・・
小手川「だーかーらー!!聞いてる?上司だよ?俺」
オフィス中に響きわたるくらいの大きな声。
周りの社員も一瞬何事かとこちらを見るが、原因がわかった途端、さっさと自分達の仕事に戻って行った。
小手川雅也。僕の上司であり、課長である。
小手川「市川君さ、俺が頼んでおいた資料、今日までに準備しておいてって言ったよね?」
市川「あ、はい。これです。後はコピーして・・・」
小手川「今何時だと思ってる?もう夕方だよね?普通こういうのは午前中のうちに持ってくるもんじゃないかなー!!」
市川「す、すみません・・・」
昨日突然頼まれた資料作成。
自分の仕事もそこそこに、急ピッチで仕上げたのに、この言われようだ。
小手川「はあ。まあいいや。使えないこともないし。」
そういうと、僕が作成した資料にざっと目を通し、自分の席に戻って行った。
周りの社員は、気の毒そうな顔で僕を見ている。
そりゃそうだ。
この資料、本当ならば小手川が作らないといけないものなんだから。
そうこうしているうちに辺りは暗くなり、ほとんどの社員が帰宅の準備を始めていた。
僕はというと、小手川の資料作成のせいで出来なかった自分の仕事に追われていた。
小手川「市川君。」
市川「うわああ!小手川、、課長?」
いつものように大きな声ではなく、座っている僕の耳元にこっそり話しかけてきた小手川。
自分の仕事に集中していたせいか、退社時間はとっくにすぎ、社員はほとんどだれもいなくなっていた。
市川「ど、どうしたんですか?課長。」
小手川は周りをさっと見回すと、また小声で僕に話しかけてきた。
小手川「市川君。君に特別な任務を与えよう。」
嫌な予感がした。
ー数日後ー
小手川「はっはっはー!!市川君!君もスーツを着れば一人前に見えるもんだなー!!」
静かなエントランスに小手川の大声が響く。
数人の男女がこちらを向いてひそひそと話している。
僕は恥ずかしくてそっと顔を伏せた。
僕は今、人生で初めての婚活パーティーに参加している。
しかも大嫌いな上司とともにだ。
事の発端は、小手川が婚活パーティーに行きたいと言ったことから始まった。
1人で行けよ、と思ったが上司にそんなことは言えない。
僕に拒否権はなかった。
2人で受付を済ませ、大きなホールに案内された。
そこには思いのほか多くの男女がいて、僕は少し入るのをためらった。
市川「課長・・・僕、婚活パーティーに参加するの初めてで・・・」
小手川「だろうな!!それより俺のそばを離れるなよ。お前が隣りにいると、俺が目立つからな。」
そういうと小手川は、37歳にしては薄くなった髪の毛をそっと撫で付けると、ニヤッと笑った。
結局僕は小手川の引き立て役なのだ。
わかってはいたけれど。
しばらくはフリートークのようで、小手川はお目当ての女性がいないか探し始めた。
僕はそんな小手川の後ろから、極力気配を消して着いていく。
近くに女性の2人組がきた。
小手川は気持ちの悪い笑顔で話しかけに行くが、案の定女性には相手にされず、すぐに戻ってきた。
小手川「見る目のない女だ!!」
市川「・・・そうですね」
次だ次だ!と息巻く小手川。
しかし何人かの女性に声をかけるも、ことごとく相手にされない。
だんだんと小手川の機嫌が悪くなってきた。
小手川「おい!!お前がいるから陰気臭くなってるんじゃないか?もういい!お前が誰か連れて来い!!」
市川「え!?僕がですか?・・・わかりました」
とんだとばっちりだ。
小手川は近くにあった椅子に腰を下ろし、僕を手で払いのける仕草をした。
しょうがなく、誰に声をかけようかうろうろしていると、大人しそうな女性の2人組をみつけ話しかけることにした。
勇気を出して話しかけると、とても良い人達で、僕は小手川の事をすっかり忘れ、3人で会話を楽しんでいた。
小手川「おい!!!」
突然後ろで大声がしたので振り向くと、小手川が怒りの表情で立っていた。
市川「あ・・・紹介します。こちら僕の職場の上司で、小手川雅也さんです。」
僕は女性に小手川を紹介した。
小手川「どうも。課長をやっております。」
小手川は自慢げな顔で女性にあいさつをして続けた。
小手川「いやいや!こいつがどうしても婚活パーティーに行きたいって言うもんで!上司として部下のめんどうをみるのは仕事ですからねー!まぁしかしこいつは全然仕事ができない、底辺の役立たずでして。はははは。」
嬉々として僕の事を侮辱し始めた小手川。
女性2人は苦笑いだ。
小手川「いやーこんなやつ婚活パーティーに来ても、女性に受け入れられないでしょう!見た目も陰気で話してても全然楽しくないでしょうし!仕事も全然できないんですよ!この間なんか」
まだ続ける気なのか。
だんだんと涙が出てきた。
悲しくてじゃなく、悔しくてだ。
小手川にこんなに言われて、言い返すことすらできない自分自身に腹が立ってきた。
もう嫌だ。
婚活パーティーがなんだ。
上司がなんだ。
僕は拳にギュッと力を込めて小手川をにらみつける。
小手川の命の次に大事であろう、数少なくなった髪の毛を引き抜いてやろうと、一歩前に出た時だった。
貴子「あら?仕事のお話?でももっと楽しいお話、しませんか?」
そう言って突然僕の隣りに現れた美女。
絵に描いたような美女。
僕は一瞬で目を奪われた。
それは小手川も同じだったようで、目を丸くし開いた口が塞がらないようだった。
貴子「私はどうですか?一緒にお話、しませんか?」
美女はそういうと、僕の腕に軽く腕を絡めてきた。
軽く首を傾けて上目遣いで僕を見ている。
市川「・・・はいっ!!!」
小手川の事なんて頭から抜けていた。
僕はその美女とホールを抜け、外のガーデンテラスへと歩き始めた。
小手川「お、おい!!市川!!」
後ろから小手川の声が聞こえたが、無視した。
ガーデンテラスへ着くと、置いてあったベンチに美女と腰かけた。
市川「あ、あの・・・。先程はありがとうございました。」
とりあえずお礼を言ってみた。
こんな美女と話したこともないし、何の話をすればいいかわからなかった。
コミュ障の俺にはこれが精一杯だった。
貴子「ふふ。上司に無理やり連れてこられたって顔してましたよ。」
美女は僕の目をまっすぐみつめ、綺麗な顔で笑った。
僕は美女の顔を直視できず、地面をみつめもごもごと言葉にならない言葉を発していた。
貴子「そうだ!自己紹介がまだでしたね。私、篠原貴子です。」
篠原貴子という美女はずっと笑顔のまま、僕に話しかけてくれた。
市川「あ、僕は、市川亮です。26歳でエンジニアやってます。」
なんとか絞り出した言葉は、何のおもしろみもない自己紹介だった。
貴子「亮さんですね。私、25歳なので1つお兄さんですね。」
貴子さんはずっと笑顔だ。
その笑顔で、僕の心が澄んでいくのがわかった。
少しずつ話すことにも慣れ、不器用ながらではあるが、会話が続いた。
貴子「あ、もう時間みたいですね。」
楽しい時間はあっという間にすぎる。
婚活パーティーもそろそろお開きのようだ。
市川「あ、ありがとうございました!では。」
そう言ってベンチから立ち上がり、帰ろうとした僕の袖を、貴子さんがちょん、と掴んだ。
貴子「あの。もし良かったら、連絡先教えてくれませんか?」
時が止まった気がした。
かなり間抜けな顔をしていたと思う。
貴子「だめ、ですか?」
市川「いえ!あ、いや、いいえじゃなくて!よ、よろしくお願いします。」
かなり動揺しながら、なんとか連絡先を交換する事が出来た。
貴子「連絡しますね。」
貴子さんは、会った時と同じ綺麗な笑顔でそう言うと会場を後にした。
婚活パーティから1ヶ月後。
あれから僕は貴子さんと頻繁に連絡を取り合い、2人で数回会うまでの仲になっていた。
今日も2人で会う約束をしており、待ち合わせた喫茶店で貴子さんを待っている。
貴子「お待たせ。ごめんね、待った?」
市川「いいえ!全然待ってないですよ。」
今日も綺麗な貴子さんに胸が高鳴る。
何度会っても緊張してしまう。
貴子「そろそろ敬語やめない?私の方が年下なんだけどな。」
市川「そうですね。そのうち。」
貴子さんには未だに敬語が抜けない。
敬語だと壁を作っているようで申し訳ないが、なんというか、貴子さんのオーラに圧倒的されてしまうのだ。
貴子「そのうち、ね」
言うほど気にしていない様子の貴子さんは、アイスティーとホットコーヒーを注文した。
もう何も聞かずとも、僕が注文するものをわかって一緒に注文してくれる。
そういうところも素敵だ。
この1ヶ月で、完全に僕は貴子さんに恋をした。
でも、会う度に貴子さんを知れば知るほど、僕とは不釣り合いすぎて自己嫌悪に陥る。
こうやって月に何度か2人でお茶をする、それだけで充分だ。
むしろそれでも贅沢すぎるくらいだ。
注文したメニューが運ばれてきた。
貴子さんはアイスティーを一口飲むと、僕を真っ直ぐにみつめて、何か言いたそうな顔をしていた。
市川「どうしました?」
貴子「亮さん。私の彼氏になってくれない?」
僕はコーヒーカップを持ったまま固まった。
1週間後。
僕は今、貴子さんの家の前にいる。
覚悟を決めてインターホンを押すと、緊張を解く声が聞こえてきた。
貴子「亮さん。いらっしゃい。」
貴子さんに案内され、応接室に通された。
貴子「ごめんね。急に。今日しかパパの予定が空いてなくて。」
市川「いいえ!早い方が良いと思うので。」
そんな話をしていると、応接室のドアが開いた。
市川「は、はじめまして!貴子さんとお付き合いをさせていただいております、市川亮と申します。本日はお忙しいところ、お時間いただきありがとうございます。」
丁寧すぎるくらいのあいさつ。
ド忘れすることもなく、噛むこともなく、早口にはなったがちゃんと言うことができてホッとした。
清隆「篠原清隆だ。座りなさい。」
篠原清隆。貴子さんの父親であり、とある大きな会社の社長である。
清隆「で、話とはなんだね?」
早速本題に切り込んできた。
貴子「パパ。私と亮さんの交際を、パパに認めてほしいの。」
清隆さんは、僕を頭の先から足の先まで品定めするように見ている。
清隆「ほう。貴子、お前こんなメガネでもっさりした男が好きだったか?」
貴子「えぇそうよ!メガネなんて理知的でしょう?それにこの髪型は、今流行りの韓国スタイルなんだから!」
ありがとう貴子さん。
物は言いようだ。
26にもなって、さすがにきのこヘアーはまずかったか。
清隆「貴子。私がお前のことを大事に思っているのはわかっているな?この男と結婚して、お前は幸せになれるのか?父さんの言う通り、例の会社の息子と結婚すれば幸せになるんだぞ。」
僕の事が見えているのか不安になるくらい、僕の存在を無視されている気がする。
貴子「パパ。自分の事は自分で決めたいの。いっつもパパは私のためだって言うけど、私の意見は?聞いてくれたことある?」
清隆「お前はまだ若い。父さんの言うことを聞いていれば幸せになれる。」
清隆さんが貴子さんの事を溺愛しているのは伝わってくる。
しかし、その愛情が違う方向へ向かっているのも伝わってきた。
社長令嬢も大変だ。
貴子さんは今までもこうやって、自分のやりたいことを抑圧されたりしてきたのだろうか。
貴子「パパ。私、決めたから。パパが何と言おうとこれだけは譲れない。」
貴子さんも引かずに食い下がる。
清隆「そうか。貴子、お前のことだ。もう何を言っても言うことは聞くまい。だがしかし、1つだけ条件がある。」
突然の条件提示に、僕も貴子さんも困惑した。
貴子「条件?」
清隆「そうだ。市川君。君は今、エンジニアとして働いているそうだね?」
市川「は、はい!」
突然僕に話が振られ、驚いて声が裏返った。
清隆「うむ。ではその仕事、やめてもらおう。」
市川「え・・・」
貴子「パパ!?あんまりだわ。亮さんの仕事をやめさせるなんて!」
清隆「それが条件だ。貴子と付き合う覚悟があるのなら、今の会社を辞めてうちの会社に入りなさい。それができないのならこの話はなしだ。」
清隆さんはそう言うと、椅子から立ち上がり部屋を出ていった。
貴子「ごめんなさい。まさかパパがあそこまで言うなんて。ただでさえ無理言って付き合わせてしまっているのに。」
そう。
僕達は本当のところ、付き合ってはいない。
付き合っているフリをしている。
貴子さんの父親、清隆さんが経営する会社の取り引き先の社長の息子。
本当ならその社長の息子と貴子さんが交際し、結婚をする予定だった。
いわゆる政略結婚だ。
貴子さんはそれが嫌で反発し、婚活パーティーにも参加をしていたという。
貴子「ごめんなさい。やっぱりこんなことはするべきじゃなかったんだわ。」
落ち込む貴子さんを見ていると、僕も辛くなってきた。
市川「貴子さん・・・僕、会社やめます。」
貴子「それはだめ!!私のためにそこまでさせるわけにはいかないわ!エンジニアのお仕事、楽しいってよく話してくれてたじゃない!」
市川「確かに今の仕事は楽しいです。でも、貴子さんと出会って、僕はもっと楽しい事があるって知ったんです。貴子さんは僕の恩人です。あの時貴子さんが声をかけてくれなかったら、僕は多分ずっと、根暗で陰キャで、上司の嫌がらせに耐えるだけの生活を送っていたと思います。だから、恩返し、させてください。」
僕は貴子さんに素直な気持ちを話した。
貴子さんは驚いていたが、目にうっすらと涙を浮かべて微笑んだ。
それから、僕は会社を辞め、貴子さんのお父さんが経営する会社へと転職した。
慣れ親しんだ職場を辞めるのは辛かったが、小手川から離れられることは嬉しかったし、なにより貴子さんのためだと思うと苦ではなかった。
だけど僕は、新しい職場で今までより辛い洗礼を受けることになる。
市川「本日から入職しました、市川亮と申します。これからよろしくお願いします。」
あれから、大好きだったエンジニアの会社を辞め、貴子さんの父親の会社へと入職した。
自分の所属する部署へのあいさつも終わり、さあ仕事!という時に、ふと周りの視線を感じる。
市川「あ、よろしくお願いします。」
目が合った社員へあいさつをした。
完全に目が合っていたのに、まるで僕の姿が見えないかのように無視をされた。
聞こえなかったのかな?と思い、仕事に戻る。
しばらくして飲み物を取りに給湯室へ向かった時、社員の声が聞こえてきた。
社員1「きいたか?あいつ、跡取り候補らしいぜ?」
社員2「まじかよ!あれが?ありえねー!!どうせ仕事もできないんだろ?」
社員1「社長も気の毒だよな。俺達に頼むくらいだからよ。」
社長が頼む?何の話だ?
僕はそっとその場から立ち去った。
市川「あれ?ない・・・」
自分のデスクへ戻ったら、さっき渡されたはずのUSBがなくなっていた。
市川「あれ?さっきここに置いてたのに。」
さすがに入職初日から物を無くすのはだめだ。
僕が必死になって探していると、給湯室にいた社員が戻ってきていた。
社員1「市川さん、だっけ?どうしたの?」
市川「あ、えっとすみません。もらったUSBが見当たらなくって。」
社員1「えー!もうなくしちゃったの?しかもUSBってデータ消えたり漏れたりしたら大変だよ?市川さんてさ、大学どこだっけ?」
市川「え、と、大学は行ってないです。エンジニアの専門学校に行ってたんで。」
社員1「あーそ!専門学校だったら物をなくしちゃだめってこと、教わらなかったのかな?」
ははは!と笑うその社員。
でも嫌味に反応できないくらい焦っていた。
確かに入職初日の失態はやばい。
貴子さんにも顔向けできない。
でも結局USBはみつからなかった。
他の社員からの冷たい視線にも耐え、上司に紛失の報告書を提出し、その日は終わった。
思ったより歓迎されていない。
むしろ僕がこの会社から早く出ていくように仕向けられている。
貴子さんの父親である、社長によって。
でもこんなこと貴子さんに言えない。
僕が我慢するしかない。
我慢すればいい。
しかし嫌がらせは日を追う事に執拗になり、エスカレートしていった。
そしてとうとう貴子さんの耳にまで届いてしまった。
貴子「どうして私に相談してくれなかったの?」
市川「貴子さんに迷惑かけるわけにはいかないですから。僕が我慢すれば、全部うまくいきますから。」
そう言うと貴子さんはすごく悲しそうな顔をした。
貴子「どうして。どうしてそこまで。元はと言えば私のわがままから始まったことなのに。私こそ、これ以上亮さんに迷惑かけられない。」
貴子さんの目からは涙が溢れていた。
市川「貴子さん。僕は大丈夫ですよ。
こういうの慣れてるというか、平気なんで!」
とは言ったものの、さすがに毎日のように嫌がらせが続くとさすがに参ってきた。
物がなくなるのは日常茶飯事なので、極力物を少なくし、常に持ち歩くようにした。
しかしそれでも、デスクに置いていた物品はなくなり、作成途中のデータを消されることもしばしばだった。
パワハラや暴力はなかったが、陰湿ないじめのような嫌がらせが続いた。
気にしないようにしていたが、精神は疲弊し食欲もあまりなくなっていた。
それでも時々貴子さんに会う時は、辛さを顔に出さないように、平静を装っていた。
それからしばらく、職場からの嫌がらせにも耐え頑張っていたある日のことだった。
貴子「亮さん。仕事、やめてほしいの。」
市川「え!?何かあったんですか?」
貴子「私、耐えられないの。亮さんが職場の人達に嫌がらせをされていること。やっぱり無理なの!大切な人が嫌な思いをしているのは嫌。」
市川「貴子さん。え?大切な、人?」
そう聞き返すと、貴子さんは真剣な表情で言葉を続けた。
貴子「亮さん。最初は付き合ってるフリから始まった私達の関係だけど、そろそろ事実にしない?」
市川「え?それって?つまり・・・」
貴子「私と本当に付き合いませんか?って意味。」
そう言うと貴子さんは恥ずかしそうに笑った。
市川「え、え、ええ!?こんな僕でいいんですか??何の取り柄もない、陰キャのコミュ障の根暗のダメなやつですよ?」
貴子「亮さんはだめなやつなんかじゃないわ。陰キャコミュ障根暗はよくわからないけど、私は今のまま、そのままの亮さんが素敵だと思うわ。」
突然の貴子さんの告白で、僕の思考は停止している。
これは現実か?
いや、夢でもいい!
早く答えないと。
市川「ぜ、ぜひよろしくお願いします!僕は貴子さんが本当に好きです!絶対幸せにします!」
貴子「え?もうプロポーズ?ふふ、私も好きです。幸せにしてね。」
少しはにかんで笑う貴子さんは、すごく可愛かった。
これを機に、僕は前から考えていた事を伝えることにした。
市川「実は僕、前々から考えてたことがあるんですけど。独立して自分の会社を作ろうかと思っていて。」
貴子「え!?すごい!ぜひやるべきだわ!応援する!ならなおさら会社やめないとね。」
貴子さんの告白もあり、僕は会社を辞めることにした。
数日後、意を決して辞表を上司に渡した。
上司は、提出する資料をもらうかのような態度で、特に何も言わず気にも止めていないようだった。
貴子さんの父親である、清隆さんにも辞職を伝えに行きたかったが、ことごとく都合が合わないと言われ、会うこともできなかった。
出社最終日。
社員達に、今日で退職しますと伝えてもみんな特に何も言わなかった。
数人の社員から、お疲れ様でしたという業務的な言葉をかけてもらえたくらいだ。
物の少ないデスクはすぐに片付いて、まるでそこには最初から僕なんか存在しなかったような気がして、少し寂しい気持ちになった。
ー3年後ー
市川「貴子さん、最近ご両親は何か言ってくる?」
貴子「何にも?たまに連絡来るけど無視してる。」
僕は3年前、貴子さんの父親が経営する会社を辞め、フリーランスのエンジニアとして独立した。
今ではたくさんの顧客が付き、日々忙しくさせてもらっている。
貴子さんも僕が辞めてすぐに会社を辞め、父親とは絶縁状態となっている。
今は僕の会社を手伝ってくれている。
最近、様々な会社の業務効率化が捗るようなアプリの制作をしていて、それがなかなか好評で大ヒット商品となっている。
とある会社に依頼を受けて作ったアプリなのだが、その会社が貴子さんの父親のライバル会社だと知ったのは、アプリを作った後だった。
今ではそのアプリが大ヒットし、それが元で貴子さんの父親の会社が経営難になっていると噂で聞いた。
ある日、貴子さんの父親が僕の元を訪ねて来た。
清隆「市川君。君はいつかやると思っていた。さすがだ。貴子の目に狂いはなかった。ぜひ貴子を幸せにしてやってほしい。」
初めて会った時とは別人のようだ。
市川「はい。言われずとも、貴子さんの事は幸せにします。ご心配には及びません。」
清隆「そ、そうか。では家族からの頼みだ。我が社にも同じようなアプリを作ってほしい。」
貴子「お断り!」
僕が言葉を発する前に、貴子さんが部屋のドアを勢いよく開け入ってきた。
清隆「おお!貴子!会いたかったぞ!元気だったか?」
貴子「あなたの顔を見た途端元気じゃなくなったわ。何しに来たの?どの顔で亮さんに会いに来たの?」
普段の貴子さんからは想像もできないくらい怒っていた。
その怒りに圧倒され、父親である清隆も何も言葉を発せないでいた。
貴子「帰って。今すぐ。早く!」
清隆の腕を掴むと、椅子から立ち上がらせ玄関へと連れて行った。
父親が僕に嫌がらせをしたことを、僕より許していないようだ。
貴子さんは、そのまま父親を玄関から追い出すと、二度と父親を家に入れることはなかった。
そして最近、もう1人懐かしい人物が訪ねてきた。
落ち着いた雰囲気の喫茶店に、似つかわしくない大声を出しながら近付いてきた人物は、手を挙げながら僕の名前を呼んだ。
小手川「市川くーん!久しぶり!いやー、会いたかったよー!!」
小手川だ。
数年の時を経て、さらに薄毛が加速し、お腹まで出てくるというコンボを決めてきた。
市川「課長!お久しぶりです。」
小手川「課長。うん、課長ね。懐かしい。今はなんていうか、ほら、ね。課長は大変だから、もういいかなーって思ってね。はははは!!」
この感じ、降格されているな。
それもそうだろう。
逆によく課長になれたと思う。
2人分のコーヒーを注文すると、小手川が話し始めた。
小手川「市川君がいなくなって、君の仕事が全部俺に回ってきたんだよ!!ただでさえ俺は忙しかったのに、2人分の仕事をするのは無理な話だと思うだろう?」
要するに僕がいなくなった事で、小手川の仕事のできなささが露呈し、それが元で降格されたという事だろう。
小手川「他のやつらも、みんな仕事ができないやつばっかりだから大変だったんだぞ!結局課長だったばっかりに俺が責任を取らされたんだ。」
しばらく小手川の会社の愚痴が続いた。
すぐに注文したコーヒーが届き、小手川はコーヒーを飲みながら話を続けた。
小手川「それはそうと、市川君。君、今景気良いみたいだね。まあ俺のおかげで社長令嬢とも付き合えたわけだし?感謝のひとつもあっていいと思わないかい?」
これが本題か。
市川「あー、そうですね。その節はありがとうございました。」
小手川「うんうん。それでだね、お礼としてひとつ頼まれてくれないか?実は仕事を頼みたくてさ。格安で。できるだろ?俺に恩があるもんな?」
市川「・・・そうですね。小手川さんのために、とある商品開発を考えていました。その商品に関しては、小手川さんには特別に無料で提供させていただきたいなと。」
小手川「さすが話が早いな!!昔から仕事ができるやつだと思っていた!それで?どんなアプリだ??」
市川「アプリではないんですが。育毛剤ですね。小手川さんならぜひモニターになっていただきたいと・・・」
僕が説明をしている途中にも関わらず、小手川は一瞬驚いた顔をしていたが、次の瞬間顔を真っ赤にして怒り始めた。
大声を出す小手川に、お店のスタッフは少し迷惑そうな顔をしている。
そんな小手川を笑いながら、僕は自分の分のコーヒー代を置き、手を振って帰った。
その後、小手川は地方に左遷されたらしいという話を聞いた。
僕はというと、仕事は順調に軌道に乗り、貴子さんと結婚して幸せに暮らしている。
真面目に生きていれば、いつか誰かが見てくれていて、きっと幸せになれると信じていた。
僕を見てくれていたのは、今僕の隣りで綺麗な顔で笑う、天使のような貴子さんだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる