17 / 23
16
しおりを挟む「マイカ大丈夫か!?」
「ヴィー!!」
マイカはベッドの上で上体だけ起こしながら僕に両手ほ広げた。
僕は彼女を抱きしめながら、このぬくもりが失われなかった事に安堵した。
「体調は大丈夫か?」
「うん。まだ少しふらつくけどそれだけで他は大丈夫みたい」
「マイカ良かった。目覚めた所すまないがその時の状況を教えてくれないか」
僕はマイカからお茶会の様子を負担のない様に少しづつ聞いていった。
「そうか。それなら恐らく毒は紅茶に入っていた可能性が高いな」
「それで?サブリナ様は亡くなったの?」
「いや。サブリナはまだ生きている」
何故かそう聞いてきたマイカに僕は違和感を感じる。
「そ、そうなんだ。早く回復してほしいね!」
そういってマイカはあの大きな瞳に涙をためつつ僕に再び抱き着いてきた。
彼女の背中を宥めつつ何故か僕は嫌な違和感に包まれていた。
--------------------------------
それから早急に調査を進め一人の侍女が捕らえられた。
マイカ付きの侍女だ。彼女はその日二人が飲んだ紅茶の調達と実際に紅茶を二人に淹れたのも彼女だ。
最初は否定していたが、時間が経つにつれ本当の事を言うからと涙ながらに訴えてきた。
彼女が語った真実は僕には信じられない内容だった。
「私は聖女様に言われた指示に従っただけなのです。聖女様が殿下に毒を入れろと!」
「嘘をつくな!それであれば何故聖女様自身も毒を飲まれたのだ」
「そっ、それは、聖女様が自分だけ飲まないのも怪しすぎるからといって自分にも少量の毒を入れろと仰ったのです。」
「そんな証拠にもない事を!」
「しょ、証拠ならあります!聖女様がもしもの為にとご自身で解毒剤を用意されておりました!聖女様の秘密の箱の中にその解毒剤はあるはずです。」
侍女の話した通り急ぎマイカの秘密の箱とやらを調べたらその中に解毒剤はあった。
「頼む。今は二人きりにしてくれ」
「ヴィー?ねえ。急にきて部屋の中を荒らしてこれはどういう事?」
「マイカ。僕こそ聞きたいこれは何なんだ。」
「それは・・・。私最近まで体調が悪かったでしょ?その時の薬よ!」
「マイカ侍女からすべて話を聞いている」
「ッツ。何の話を聞いたっていうのよ?」
「君がサブリナを毒殺しようとしたこと。そしてこれは君が疑われない様に飲んだ毒の解毒剤とも解ったんだ!どうしてだ!どうしてサブリナを?何故こんな事をした?3人でこれからもこの国を支えていくと誓っただろう!?」
「目障りなのよ!!!!いい子ぶっちゃって、本当は私とクロヴィスが羨ましい癖に私なんてみたいな顔して、その癖ヴィーの前ではいい顔ばっかり。結局ヴィーも何の役に立たない聖女より政務だなんだっていってサブリナの方が大事なんでしょ?大体お姫様になって楽ができると思ってあんたと居たのに、全然お姫様になれないじゃない!あんたを選んだんだりして大間違いだったわ!!!」
彼女は今まで見たことのない様な形相で私を睨みつけていた。
は、はは、ははははは。
思わず乾いた笑いが止まらない。
「じゃあ君が僕に近づいたのは?ただ楽をしたかった?お姫様に憧れていた?ただそれだけ・・・」
「当たり前じゃない!それが何よ。全然楽じゃないわ楽しくないわ!いい子でいるのも疲れたわよ。せめて王太子妃になれるならと思ったら、全然思い通りにいかないじゃない」
そういって物を投げつける彼女を見て僕は何を信じたらいいのかわからなかった。
それ以上は会話をする気にもなれず黙って部屋を出て言った。
「聖女を捕らえろ」
221
あなたにおすすめの小説
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
欲深い聖女のなれの果ては
あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。
その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。
しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。
これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。
※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった
みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。
この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。
けれど、運命になんて屈しない。
“選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。
……そう決めたのに。
彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」
涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる