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(グッドバイからはじめよう編)
大切な人の幸せを願って②
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或る日の昼休み、美紀は涼子のアドバイスに従い、二人で話をする為に理恵を校舎の裏に呼び出した。
一方の理恵も、大凡の心の整理はついているのだが、美紀に対する気持ちだけは自分でも不思議なくらい葛藤が残っていて未だ素直に話をする事が出来ずにいた。
近場から生徒達が遊んでいる声は聞こえるが姿は見えず、二人の間には何処となく気不味い緊張感が漂っていた。美紀は右手で左手の人差し指を強く握り締めた。
「……ねえ、海野さん。みんな海野さんに気遣って何も言わないけど、海野さんの事心配してるよ」
「……そんなの分かってるよ」
「……競泳の練習って、何かすごく大変そうだよね。あたし実際やった事ないからよくは分からないんだけど、あたしだったら、すぐに辞めてると思うよ。でも、海野さんはすごいよ。だって周りの人達が遊んでる間にも、いつもあんなに頑張ってるんだから」
理恵は何かの言葉に反応する様に、美紀の事を睨んだ。
「ほっといてよ。大体、実際にやった事もないくせに、軽い気持ちで頑張れなんて言わないでよ。狩谷さんは競泳部の練習がどれだけきついか、知らないでしょ?」
美紀は何も言い返せず、拳に力を込めて逃げだしそうになる気持ちを堪えていた。
「あたしは特待生の話が来た時、勉強しないで高校に行けると思ったの。全国で五位に入賞した時なんか特別きつい練習なんてしてなかったから、本気を出せば将来オリンピックで金メダルが取れるとも思って、調子に乗ってたの。それで皆からの注目を集めて、有頂天になって……でも今は後悔してるよ。ちゃんと勉強して、普通の高校に行けば良かったと思ってる……そしたら、こんな辛い思いをする事もなかったのに……」
「……ごめんなさい。海野さんがそんなに悩んでいるのに、何もしてあげられなくて……あたし卯月さんとか中澤さんと違って薄っぺらい人間だから……それで自分の都合のいい事ばかり、海野さんに押し付けて……あたし、最低だね。でもあたしは海野さんがいてくれたから、また学校に来るようになったんだよ。海野さんのおかげで、学校に来るのがすごく楽しくなったんだよ。だから今度はあたしが……」
「いい加減にしてよ!」
美紀の言葉は、理恵の一喝で掻き消されてしまった。
「そうやって、自分の都合で勝手に話を進めないでよ!狩谷さんはあたしの悩みを聞いて、自分が楽になりたいだけでしょ?挙句の果てには自分で自分の事を責めて、悲劇のヒロインでも気取ってるの!?」
何を言われても我慢しようと思っていたが、理恵の事が気掛かりなのと同時にフラストレーションも相当溜まっていた。美紀は我慢の限界だった。
「海野さん、ふざけるのもいい加減にしなよ!さっきから黙って聞いてれば言いたい放題!大体あなたは今、自分への怒りの矛先をあたしに向けてるだけじゃない!」
「だから狩谷さんに何が分かるのよ!」
先に理恵の方が美紀の胸倉辺りに掴み掛かった。
「甘えないでっ!」
美紀はそう言って、掴まれた手を解こうと理恵の両肩を突き飛ばした。掴んでいた手には全く力が入っておらず、理恵の体は何の抵抗もなく吹き飛んで校舎の壁に叩き付けられた。
理恵はそのまま、気を失って地面に崩れ落ちてしまった。
「……ねえ、ちょっと。海野さん……そういう冗談やめてよ」
美紀は何度も声を掛けたが、理恵は目を覚まさなかった。
一方の理恵も、大凡の心の整理はついているのだが、美紀に対する気持ちだけは自分でも不思議なくらい葛藤が残っていて未だ素直に話をする事が出来ずにいた。
近場から生徒達が遊んでいる声は聞こえるが姿は見えず、二人の間には何処となく気不味い緊張感が漂っていた。美紀は右手で左手の人差し指を強く握り締めた。
「……ねえ、海野さん。みんな海野さんに気遣って何も言わないけど、海野さんの事心配してるよ」
「……そんなの分かってるよ」
「……競泳の練習って、何かすごく大変そうだよね。あたし実際やった事ないからよくは分からないんだけど、あたしだったら、すぐに辞めてると思うよ。でも、海野さんはすごいよ。だって周りの人達が遊んでる間にも、いつもあんなに頑張ってるんだから」
理恵は何かの言葉に反応する様に、美紀の事を睨んだ。
「ほっといてよ。大体、実際にやった事もないくせに、軽い気持ちで頑張れなんて言わないでよ。狩谷さんは競泳部の練習がどれだけきついか、知らないでしょ?」
美紀は何も言い返せず、拳に力を込めて逃げだしそうになる気持ちを堪えていた。
「あたしは特待生の話が来た時、勉強しないで高校に行けると思ったの。全国で五位に入賞した時なんか特別きつい練習なんてしてなかったから、本気を出せば将来オリンピックで金メダルが取れるとも思って、調子に乗ってたの。それで皆からの注目を集めて、有頂天になって……でも今は後悔してるよ。ちゃんと勉強して、普通の高校に行けば良かったと思ってる……そしたら、こんな辛い思いをする事もなかったのに……」
「……ごめんなさい。海野さんがそんなに悩んでいるのに、何もしてあげられなくて……あたし卯月さんとか中澤さんと違って薄っぺらい人間だから……それで自分の都合のいい事ばかり、海野さんに押し付けて……あたし、最低だね。でもあたしは海野さんがいてくれたから、また学校に来るようになったんだよ。海野さんのおかげで、学校に来るのがすごく楽しくなったんだよ。だから今度はあたしが……」
「いい加減にしてよ!」
美紀の言葉は、理恵の一喝で掻き消されてしまった。
「そうやって、自分の都合で勝手に話を進めないでよ!狩谷さんはあたしの悩みを聞いて、自分が楽になりたいだけでしょ?挙句の果てには自分で自分の事を責めて、悲劇のヒロインでも気取ってるの!?」
何を言われても我慢しようと思っていたが、理恵の事が気掛かりなのと同時にフラストレーションも相当溜まっていた。美紀は我慢の限界だった。
「海野さん、ふざけるのもいい加減にしなよ!さっきから黙って聞いてれば言いたい放題!大体あなたは今、自分への怒りの矛先をあたしに向けてるだけじゃない!」
「だから狩谷さんに何が分かるのよ!」
先に理恵の方が美紀の胸倉辺りに掴み掛かった。
「甘えないでっ!」
美紀はそう言って、掴まれた手を解こうと理恵の両肩を突き飛ばした。掴んでいた手には全く力が入っておらず、理恵の体は何の抵抗もなく吹き飛んで校舎の壁に叩き付けられた。
理恵はそのまま、気を失って地面に崩れ落ちてしまった。
「……ねえ、ちょっと。海野さん……そういう冗談やめてよ」
美紀は何度も声を掛けたが、理恵は目を覚まさなかった。
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