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13拾い
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難しいことはよく分からないけれど、あれから1ヶ月で隣国のいざこざがおさまって、2ヶ月で生活が落ち着いた。小麦も沢山買えるし、野菜も果物もちゃんと買えるし、お給料も上がった。
なんだかウチの国の軍人と隣国の軍人の仲が改善したんだとか、チョビ髭が店に来て楽しそうに言っていたが、難しいのでよく分からない。
「アリッサ、今日もこっちで寝るか?」
「うん」
大家さんの部屋のベッドに座って、すっかり大きくなった2号を抱きしめる。灰色がかった金の毛並みが目に染みる。だって涙がでるから、染みてるに違いない。難しいからよく分からないけど。
「アリッサ、明日服でも買いに行くか!」
「.......いらない。どうせ捨てるのに」
「.......」
この間、頑張って辞書を引きながら読んだ新聞に、軍事裁判のことが書いてあった。処刑された人がいっぱいいた。
チョビ髭に聞いてみたら、処刑されるのは相当上の階級だけだと言っていた。難しいからよく分からないけれど、大佐は、どれくらい上の階級なんだろう。
「アリッサ、飯は食え。な? 一緒に食おう」
「.......うん」
最近チョビ髭と仲が良さそうな私達の国の軍人にも聞いてみたら、なんとルノの元部下だと言った。ルノの士官学校時代からの、古い部下だと。
ルノは、本当に飢饉の炊き出しの任務に行ったらしい。そこで、捨てられた私を拾ったのも本当だった。
ルノは、元々は軍人になりたくなかったらしい。でも、頭も剣も優秀すぎて、あれよあれよと士官学校へ入り、あれよあれよと部下を持たされ任務を押し付けられてしまったのだそうだ。
向いてないと言って、いつか軍を辞めようとヘラヘラ、フラフラしていたのに、飢饉を見て、私を拾って、ルノは人が変わったように働きだした。
それから、国民の幸福のために尽くすべきが軍人だ、と言うのが、ルノの口癖なのだそうだ。
ルノは軍人なのに、治水や天気の本ばかり読んで、畑の整備を勉強して、実際にスコップを持って新しい井戸を掘ったりしていたらしい。剣を持つより、機械を分解したりいろんな改善案を考えるのが好きなおかしな軍人だと噂されていたんだと。
それでも、戦争が始まればルノも剣を取る。腕が立ったルノは、階級が上がっても戦場に立った。さらに、頭も回るからと、効率よく敵の街を潰す案を考えさせられたらしい。その日に、ルノが持っていた本を全部焼き捨てたのを見たと、チョビ髭の友達は言った。
一刻も早い降伏文書の受託を上に強く推した軍人は、ルノだけだったそうだ。元々居心地が悪そうだった上層部で、どんどん孤立したそうだ。
戦争が終わる直前、捕虜と交換という条件で隣国に捕まった、の部分で、チョビ髭の友達の話は終わった。
とりあえず、難しいから全部よく分からない。分かりたくない。
「.......2号」
わふ、と鳴いた2号は私の横で寝そべっている。ああ、なんて名前を付けてくれたんだ。呼ぶ度、思い出してしまうじゃないか。こんな簡単なことも分からないなんて、馬鹿なんじゃないのか。
「大家さん.......」
「どうした」
「.......ぎゅってして。捨てないで.......!」
「当たり前だ!!」
涙が止まるまで、大家さんはずっと強く抱きしめてくれた。
拾ってもらった。だから拾った。拾って拾って、いらないなんて言わせたくなかった。どんな物でも、存在していいんだと、愛されるべきだと、私を拾った人の言葉を信じていた。拾えば拾っただけ、幸福が生まれ出ると思っていたのに。
また自分が捨てられる、なんて。思いつきもしなかった。
私は、あれから1つも拾い物をしていない。できなくなってしまった。元気いっぱい、幸せいっぱいに出来ないのに、拾えない。
私の部屋の壁にかかった濃紺のコートが、辛くて辛くて見られない。私の部屋が、私達の部屋だった時を思い出させるから、居られない。
「アリッサ、明日は店を休め。疲れすぎだ」
「大家さんは.......?」
「俺も家にいる。だから、な?」
「うん」
次の日に、私はぽーんと熱を出した。そのままずるずると不調を引きずり、まるまる1週間ベッドの上にいた。医者には、疲労とストレスだと言われた。
「アリッサ、ちょっと買い足しに行ってくる。ほんの少しだから、待っててくれるか?」
「うん」
「2号も一緒にいるからな。なんならハナちゃんもくまちゃんもいるぞ」
大家さんの部屋の窓際には、ちょっと不格好だけどちゃんと咲いた花と、いつの間にか新しい片腕が縫い付けられていたくまのぬいぐるみがある。ふちがかけたマグカップは、中のコインが目に染みるので持ってこなかった。
大家さんが、そっと私の頭を撫でて部屋を出ていった。
それだけで涙が出てしまって、2号を抱きしめようとして。
いつの間にかドアの前に移動し、ドアをカリカリと引っかく2号を目に映した。
「2号、ダメだよ。引っかいちゃだめ」
2号は頭が良いので、ダメと言われたことはやらない。
それに、私は知っている。2号は体が大きいので、前足を伸ばせばドアを自力で開けられるのだ。結構このアパート中を自由に出入りしていて、ミサお婆さんにおやつをねだったりしている。
「2号?」
2号がドアを開けた。出ていくのかと思ったら、私の方へ戻ってきて、ベッドに頭を乗せて可愛くおねだりをする時のように目線を上げた。上目遣いまで駆使するとは、やるな2号。
「.......散歩にいきたいの? そうだよね、ごめんね2号」
ベッドを降りて、適当な上着を羽織った。庭ぐらいにしか行けないが、せめてちょっとは散歩しよう。寝込んだ私のせいで2号は運動不足なのだ。
大家さんが大豆畑にする気だった庭は、途中で放置されたまま、雪が溶けた下にただの土の地面が広がっていた。
「2号、行くよ。あんまり走れなくてごめんね」
2号は、胸を張って私の前を歩き始めた。とことこ、とことこと、軽い足取りで、尻尾を上げて。
庭を無視して、道路目指して。
「ごめんね2号、あんまり遠くはちょっと」
くぅん、と悲しそうな声を出される。ちょっとだけよ、とアパートの前の散歩コースを歩いた。
だんだんと、2号の足取りが激しくなってくる。前に前にと、ぐいぐい引っ張ってくる。そろそろダメかもしれない、くらくらしてきた。買い物帰りの大家さんに見つけてもらえるかな、と思って。
路地裏に、目を向けた。
「こんにちは、お嬢さん」
濃い、緑色のコート。我が国の軍人が着るそれを着て、やけに立派な帽子を被って。白い手袋を腰元の剣に置き、胸に沢山光る飾りをつけて。
「.......お願いがあって参りました」
青く澄んだ瞳が、凛々しい眉の下で光っていた。
「このコート、どうも重いだけで暖かくないのです。よければ、紺色のコートなど、恵んで下さいませんか? 自分がかつて大事にしていたものが、どうしても見つからないのです」
「.......」
「本日はこの街の方々に、謝罪をしに参ったのですが、その前にどうしてもやらねばならぬことがありました」
2号はとっくに私の手から離れて、目の前の軍人に尻尾をちぎれんばかりに振って、じゃれて噛んでじゃれてを繰り返していた。
「.......アリッサ、僕は君に酷いことをした。僕は君に2度も救われたのに、僕は2度も君を傷つけた」
「.......」
「.......もう、拾ってはくれないかな?」
ちょっと背をかがめて、上目遣いで。顔の良さを最大限に使って、2号のおねだりのように。
1号が、そっと帽子を取った。
「.......ひ、拾う。いる、欲しい、拾う」
馬鹿みたいな答えしかできなくて、震える喉と涙が止められなくて。優しく弧を描く青い瞳から、目を離せない。
「僕、元気いっぱい、幸せいっぱいにしたいんだ。拾ってもらったから、幸せにしてもらったから。10年前のあの時、道を示してもらったから。今、君が大好きだから、一緒に幸せになりたいんだ」
澄んだ青が、揺らがず私を見ている。そんなにハッキリ、逃げ場なく言われたら。
「.......も、もう、絶対、捨てないで。そしたら、いいよ。私達を幸せにして、いいよ」
「イエス、マームっ!!!」
よく通る太い大声と、キレのある動きでの敬礼。そんなものより、もっと違うものが欲しい。
「.......アリッサ。抱きしめても、愛しても良いですか?」
「うん!」
塩辛い、かじりつくようなキスをした。
唇を離してへらりと笑ったルノは、私を優しく抱き上げて、私達の部屋のドアを開けた。
なんだかウチの国の軍人と隣国の軍人の仲が改善したんだとか、チョビ髭が店に来て楽しそうに言っていたが、難しいのでよく分からない。
「アリッサ、今日もこっちで寝るか?」
「うん」
大家さんの部屋のベッドに座って、すっかり大きくなった2号を抱きしめる。灰色がかった金の毛並みが目に染みる。だって涙がでるから、染みてるに違いない。難しいからよく分からないけど。
「アリッサ、明日服でも買いに行くか!」
「.......いらない。どうせ捨てるのに」
「.......」
この間、頑張って辞書を引きながら読んだ新聞に、軍事裁判のことが書いてあった。処刑された人がいっぱいいた。
チョビ髭に聞いてみたら、処刑されるのは相当上の階級だけだと言っていた。難しいからよく分からないけれど、大佐は、どれくらい上の階級なんだろう。
「アリッサ、飯は食え。な? 一緒に食おう」
「.......うん」
最近チョビ髭と仲が良さそうな私達の国の軍人にも聞いてみたら、なんとルノの元部下だと言った。ルノの士官学校時代からの、古い部下だと。
ルノは、本当に飢饉の炊き出しの任務に行ったらしい。そこで、捨てられた私を拾ったのも本当だった。
ルノは、元々は軍人になりたくなかったらしい。でも、頭も剣も優秀すぎて、あれよあれよと士官学校へ入り、あれよあれよと部下を持たされ任務を押し付けられてしまったのだそうだ。
向いてないと言って、いつか軍を辞めようとヘラヘラ、フラフラしていたのに、飢饉を見て、私を拾って、ルノは人が変わったように働きだした。
それから、国民の幸福のために尽くすべきが軍人だ、と言うのが、ルノの口癖なのだそうだ。
ルノは軍人なのに、治水や天気の本ばかり読んで、畑の整備を勉強して、実際にスコップを持って新しい井戸を掘ったりしていたらしい。剣を持つより、機械を分解したりいろんな改善案を考えるのが好きなおかしな軍人だと噂されていたんだと。
それでも、戦争が始まればルノも剣を取る。腕が立ったルノは、階級が上がっても戦場に立った。さらに、頭も回るからと、効率よく敵の街を潰す案を考えさせられたらしい。その日に、ルノが持っていた本を全部焼き捨てたのを見たと、チョビ髭の友達は言った。
一刻も早い降伏文書の受託を上に強く推した軍人は、ルノだけだったそうだ。元々居心地が悪そうだった上層部で、どんどん孤立したそうだ。
戦争が終わる直前、捕虜と交換という条件で隣国に捕まった、の部分で、チョビ髭の友達の話は終わった。
とりあえず、難しいから全部よく分からない。分かりたくない。
「.......2号」
わふ、と鳴いた2号は私の横で寝そべっている。ああ、なんて名前を付けてくれたんだ。呼ぶ度、思い出してしまうじゃないか。こんな簡単なことも分からないなんて、馬鹿なんじゃないのか。
「大家さん.......」
「どうした」
「.......ぎゅってして。捨てないで.......!」
「当たり前だ!!」
涙が止まるまで、大家さんはずっと強く抱きしめてくれた。
拾ってもらった。だから拾った。拾って拾って、いらないなんて言わせたくなかった。どんな物でも、存在していいんだと、愛されるべきだと、私を拾った人の言葉を信じていた。拾えば拾っただけ、幸福が生まれ出ると思っていたのに。
また自分が捨てられる、なんて。思いつきもしなかった。
私は、あれから1つも拾い物をしていない。できなくなってしまった。元気いっぱい、幸せいっぱいに出来ないのに、拾えない。
私の部屋の壁にかかった濃紺のコートが、辛くて辛くて見られない。私の部屋が、私達の部屋だった時を思い出させるから、居られない。
「アリッサ、明日は店を休め。疲れすぎだ」
「大家さんは.......?」
「俺も家にいる。だから、な?」
「うん」
次の日に、私はぽーんと熱を出した。そのままずるずると不調を引きずり、まるまる1週間ベッドの上にいた。医者には、疲労とストレスだと言われた。
「アリッサ、ちょっと買い足しに行ってくる。ほんの少しだから、待っててくれるか?」
「うん」
「2号も一緒にいるからな。なんならハナちゃんもくまちゃんもいるぞ」
大家さんの部屋の窓際には、ちょっと不格好だけどちゃんと咲いた花と、いつの間にか新しい片腕が縫い付けられていたくまのぬいぐるみがある。ふちがかけたマグカップは、中のコインが目に染みるので持ってこなかった。
大家さんが、そっと私の頭を撫でて部屋を出ていった。
それだけで涙が出てしまって、2号を抱きしめようとして。
いつの間にかドアの前に移動し、ドアをカリカリと引っかく2号を目に映した。
「2号、ダメだよ。引っかいちゃだめ」
2号は頭が良いので、ダメと言われたことはやらない。
それに、私は知っている。2号は体が大きいので、前足を伸ばせばドアを自力で開けられるのだ。結構このアパート中を自由に出入りしていて、ミサお婆さんにおやつをねだったりしている。
「2号?」
2号がドアを開けた。出ていくのかと思ったら、私の方へ戻ってきて、ベッドに頭を乗せて可愛くおねだりをする時のように目線を上げた。上目遣いまで駆使するとは、やるな2号。
「.......散歩にいきたいの? そうだよね、ごめんね2号」
ベッドを降りて、適当な上着を羽織った。庭ぐらいにしか行けないが、せめてちょっとは散歩しよう。寝込んだ私のせいで2号は運動不足なのだ。
大家さんが大豆畑にする気だった庭は、途中で放置されたまま、雪が溶けた下にただの土の地面が広がっていた。
「2号、行くよ。あんまり走れなくてごめんね」
2号は、胸を張って私の前を歩き始めた。とことこ、とことこと、軽い足取りで、尻尾を上げて。
庭を無視して、道路目指して。
「ごめんね2号、あんまり遠くはちょっと」
くぅん、と悲しそうな声を出される。ちょっとだけよ、とアパートの前の散歩コースを歩いた。
だんだんと、2号の足取りが激しくなってくる。前に前にと、ぐいぐい引っ張ってくる。そろそろダメかもしれない、くらくらしてきた。買い物帰りの大家さんに見つけてもらえるかな、と思って。
路地裏に、目を向けた。
「こんにちは、お嬢さん」
濃い、緑色のコート。我が国の軍人が着るそれを着て、やけに立派な帽子を被って。白い手袋を腰元の剣に置き、胸に沢山光る飾りをつけて。
「.......お願いがあって参りました」
青く澄んだ瞳が、凛々しい眉の下で光っていた。
「このコート、どうも重いだけで暖かくないのです。よければ、紺色のコートなど、恵んで下さいませんか? 自分がかつて大事にしていたものが、どうしても見つからないのです」
「.......」
「本日はこの街の方々に、謝罪をしに参ったのですが、その前にどうしてもやらねばならぬことがありました」
2号はとっくに私の手から離れて、目の前の軍人に尻尾をちぎれんばかりに振って、じゃれて噛んでじゃれてを繰り返していた。
「.......アリッサ、僕は君に酷いことをした。僕は君に2度も救われたのに、僕は2度も君を傷つけた」
「.......」
「.......もう、拾ってはくれないかな?」
ちょっと背をかがめて、上目遣いで。顔の良さを最大限に使って、2号のおねだりのように。
1号が、そっと帽子を取った。
「.......ひ、拾う。いる、欲しい、拾う」
馬鹿みたいな答えしかできなくて、震える喉と涙が止められなくて。優しく弧を描く青い瞳から、目を離せない。
「僕、元気いっぱい、幸せいっぱいにしたいんだ。拾ってもらったから、幸せにしてもらったから。10年前のあの時、道を示してもらったから。今、君が大好きだから、一緒に幸せになりたいんだ」
澄んだ青が、揺らがず私を見ている。そんなにハッキリ、逃げ場なく言われたら。
「.......も、もう、絶対、捨てないで。そしたら、いいよ。私達を幸せにして、いいよ」
「イエス、マームっ!!!」
よく通る太い大声と、キレのある動きでの敬礼。そんなものより、もっと違うものが欲しい。
「.......アリッサ。抱きしめても、愛しても良いですか?」
「うん!」
塩辛い、かじりつくようなキスをした。
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