狙われたその瞳

神名代洸

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リジーは眠らされていた。
気がついたのは何処かへ向かう車の中だった。
両手足は手錠をかけられていた。口には猿轡。一言も喋ることができない。
恐怖しかなかった。
なぜあの時ドアを開けてしまったのか…。
悔やんだが始まらない。
今はどうやってこの状況を変えるのかだけを考えた。
お尻のポッケに携帯が入っているのを感触でわかったが、手が届かない…。
犯人は気づいてなかったのか?謎だ。
だけどそんな事はどうでもいい。とりあえず電源が入っているであろう事を期待していた。



シュナイダーは直ぐに携帯のGPS機能を利用してリジーがどこへ連れ去られたのかを探った。
地図をグルッと動かして探すとまだそう遠くない場所にいるのがわかってすぐに行動に移した。同僚達の手を借りたのだ。カシだぞと言われて苦笑いしたが、今はそんなこと気にもならなかった。一刻も早くリジーを助け出す。それだけしか頭になかった。
そんな姿を同僚は笑ってみていたが、あまりの真剣な表情を見た時気持ちが切り替わった。
全員とは言ってもグループで行動する為6人体制だ。
必要な道具を装備し、3台の車で追う事になった。
なんでリジーばかりこんな間に合うのか…。
そこで仲間の一人がリジーについて調べ始めた。
家族構成から仕事について。友人関係までだ。
そこで驚くべきことがわかった。リジーの遠い親戚に富豪がいたのだ。
だが彼女には関係ない。
彼女の両親はごくごく普通の家庭を築いていた。

シュナイダーは黙ったまま前を見ていた。
静かにしているのは何かを考えている時だと同僚は皆知っている為誰も声をかけなかった。と言うかかけられなかった…。


同僚の一人が言った。


「あれじゃないか?」

それは黒いバンで6人乗りの車だった。
あれにきっとリジーが載せられている…そう考えただけで頭に血が上る。
追跡は全車両に無線で繋がって間を開けて追いかけた。
車で30分たった頃だろうか?車はある建物内へと吸い込まれていった。
場所は皆知っている。
ここは海外に物を運ぶための貨物置き場だ。
リジーを海外に連れて行ってどうするつもりだ?

…まぁいい、仲間が散らばって相手の様子を探る。
5分程経って無線が入った。
リジーは目隠しと手錠をかけられて身動きができないようだ。
ならばおぶって行けばいい。
少しずつ仲間たちと共に包囲網を狭めていくが、相手はまだ気付いていない様だ。
プロとは呼べない素人軍団か?
もしかしたら遊ぶ金欲しさとかで集まった奴らか?
まぁそんなことはどうでもいい。
今すぐに助け出したいリジーの事を思い、シュナイダーは警棒を手にした。

ゆっくりと奴らの目の前に一人姿を出す。
他の仲間はフォローにまわっている。敵がシュナイダーの方に向いている間にリジーを連れ去ろうとしている敵の男の背後にそっと回り込んで警棒で攻撃を開始した。
両方向からの攻撃に敵は狼狽える。そこを逃さずシュナイダーは警棒で攻撃した。その瞬間リジーが解放されると抱え上げその場から走り出した。逃げに入ったのだ。その周りを仲間達が守りつつ後退する。敵の男達は腰に手を当てると拳銃を握りしめ発砲してきた。だがリジーにあたるのはまずいと思ったようだ。猛ダッシュする男がいたがシュナイダーは待たせていた車にリジーを乗せると急発進させた。
地団駄を踏んだのは敵の男達。ここに残っているシュナイダーの仲間達を消そうと襲いかかってきた。だがベテランの彼らにはどうということはない。返り討ちして全員を縛り上げた。
同僚の一人が警察に通報していた。
そしてシュナイダーに電話すると離れたところに車を止め、リジーの体を解放していた。
「わ、わた、私、どうしてこうも狙われるの?何で?」体はガタガタと震えていた。無理もない。だが彼女には知ってもらう必要がある。自分がどんな状況だったのかを。
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