婚約破棄されたから殴りたい~裏切り者の元婚約者を筋肉でごみ屑にするまで~

みやび

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2 もう何もかも嫌になりました

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この一大スキャンダルは国内の上流階級において噂となる。
夜会で抜刀しただけでも十二分に気違いじみたことなのに、それが婚約破棄と不貞まで加われば、その話が持ちきりになるのは疑いようもなかった。

ユウナの父であるアカイア伯は、婚約者ラルフの父であるイストリア公に即座に抗議をしたのだが、相手からはのらりくらりと躱されている。
それどころか、ユウナが魔女で、ラルフとレイが勇者と聖女であり討伐した、といったうわさまで流れ始めた。

ユウナとしてはたまったものではない。
頬の傷跡は残る可能性があるといわれているし、そもそも切れ味が悪いなまくらで切られたせいでひどく痛むのだ。
何もしていないのに怪我をさせられ、悪く言われた彼女は体調を崩した。
家族は心配してくれているし、お付きの侍女もかいがいしく世話をしてくれる。
それでは癒せない心の傷を負ってしまったのだ。



このような事態になったのは、ラルフがしでかしたことがあまりにひどすぎたためだった。
婚約破棄だけならばスキャンダルであったとしてもここまでひどくはならなかっただろう。
なんせまだ結婚の約束をしている段階だ。
イストリア公側が謝罪し、金銭賠償だけで円満解決できたはずである。

しかし、ラルフが剣を抜き、相手に切りかかったのが大問題だった。
夜会で抜刀はご法度であり、さらに刃傷沙汰になったものだから関係者が増えてしまったのだ。
夜会の主催者であるレリー伯は自分の会をつぶされたと大激怒。イストリア公に正式な謝罪と賠償を要求している。
また、参加者の中には刃傷沙汰を見て卒倒し、ケガをしたものなどもいる。そういった者たちからの抗議もイストリア公に届いていた。
もちろん娘を怪我をさせられたアカイア伯は大激怒だ。
娘への愛情から行っても大激怒、家としてのメンツとしても大激怒、さらに子がユウナしかいない現状入り婿を取らなければならないが傷をつけられてその候補も激減する点も大激怒。
私人としても公人としても許すことができる限度を完全に超えてしまっていた。
このままだと両者の間で戦争が起きかねないと国をまとめる皇帝すら注視する状況になってしまった。

そこまでひどいことが起きると、人間何か理由があったのではないかと思い始める。
正常化バイアスと呼ばれる現象だが、常人の理解できない狂気の沙汰を、自分の理解できるものに勝手に解釈するというはた迷惑なものだ。
それをイストリア公は最大限利用した。
ユウナが魔女であるという噂を流し始めたのだ。
それを耳にしたユウナは完全に病んでしまった。



「ねえミナ?」
「なんですかお嬢様?」
「毒を用意してほしいの。もう嫌になっちゃった」
「……」

気落ちしたお嬢様にいろいろしてきたが、どうしようもなかった。
婚約破棄から一週間後、ユウナは侍女であるミナにそんなことを頼んだ。
普段なら、そんなことは頼まないだろう。
自分を慕う彼女に自殺用の毒を用意させるなんて非道だということすらわからないぐらい、彼女は消耗していた。
ミナは覚悟を決めた。好きな食べ物も、好きな本も、家族も、自分も、今のままでは最愛のお嬢様をとどめることはできない。
ミナは覚悟を決めた。であれば、常道ではない方法をとるべきだ。

皆が扉を開けると、そこには筋肉隆々の大男がいた。
そのまま部屋に押し入ると、ユウナを押し倒す。
それでもユウナは無反応だった。どうでもいいと思っていたのだろう。
殺されるか、犯されるか。
そんなことをぼんやり考えていたユウナの口に、男は白く濁った液体を注ぎ込むのであった。

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