2 / 10
2 もう何もかも嫌になりました
しおりを挟む
この一大スキャンダルは国内の上流階級において噂となる。
夜会で抜刀しただけでも十二分に気違いじみたことなのに、それが婚約破棄と不貞まで加われば、その話が持ちきりになるのは疑いようもなかった。
ユウナの父であるアカイア伯は、婚約者ラルフの父であるイストリア公に即座に抗議をしたのだが、相手からはのらりくらりと躱されている。
それどころか、ユウナが魔女で、ラルフとレイが勇者と聖女であり討伐した、といったうわさまで流れ始めた。
ユウナとしてはたまったものではない。
頬の傷跡は残る可能性があるといわれているし、そもそも切れ味が悪いなまくらで切られたせいでひどく痛むのだ。
何もしていないのに怪我をさせられ、悪く言われた彼女は体調を崩した。
家族は心配してくれているし、お付きの侍女もかいがいしく世話をしてくれる。
それでは癒せない心の傷を負ってしまったのだ。
このような事態になったのは、ラルフがしでかしたことがあまりにひどすぎたためだった。
婚約破棄だけならばスキャンダルであったとしてもここまでひどくはならなかっただろう。
なんせまだ結婚の約束をしている段階だ。
イストリア公側が謝罪し、金銭賠償だけで円満解決できたはずである。
しかし、ラルフが剣を抜き、相手に切りかかったのが大問題だった。
夜会で抜刀はご法度であり、さらに刃傷沙汰になったものだから関係者が増えてしまったのだ。
夜会の主催者であるレリー伯は自分の会をつぶされたと大激怒。イストリア公に正式な謝罪と賠償を要求している。
また、参加者の中には刃傷沙汰を見て卒倒し、ケガをしたものなどもいる。そういった者たちからの抗議もイストリア公に届いていた。
もちろん娘を怪我をさせられたアカイア伯は大激怒だ。
娘への愛情から行っても大激怒、家としてのメンツとしても大激怒、さらに子がユウナしかいない現状入り婿を取らなければならないが傷をつけられてその候補も激減する点も大激怒。
私人としても公人としても許すことができる限度を完全に超えてしまっていた。
このままだと両者の間で戦争が起きかねないと国をまとめる皇帝すら注視する状況になってしまった。
そこまでひどいことが起きると、人間何か理由があったのではないかと思い始める。
正常化バイアスと呼ばれる現象だが、常人の理解できない狂気の沙汰を、自分の理解できるものに勝手に解釈するというはた迷惑なものだ。
それをイストリア公は最大限利用した。
ユウナが魔女であるという噂を流し始めたのだ。
それを耳にしたユウナは完全に病んでしまった。
「ねえミナ?」
「なんですかお嬢様?」
「毒を用意してほしいの。もう嫌になっちゃった」
「……」
気落ちしたお嬢様にいろいろしてきたが、どうしようもなかった。
婚約破棄から一週間後、ユウナは侍女であるミナにそんなことを頼んだ。
普段なら、そんなことは頼まないだろう。
自分を慕う彼女に自殺用の毒を用意させるなんて非道だということすらわからないぐらい、彼女は消耗していた。
ミナは覚悟を決めた。好きな食べ物も、好きな本も、家族も、自分も、今のままでは最愛のお嬢様をとどめることはできない。
ミナは覚悟を決めた。であれば、常道ではない方法をとるべきだ。
皆が扉を開けると、そこには筋肉隆々の大男がいた。
そのまま部屋に押し入ると、ユウナを押し倒す。
それでもユウナは無反応だった。どうでもいいと思っていたのだろう。
殺されるか、犯されるか。
そんなことをぼんやり考えていたユウナの口に、男は白く濁った液体を注ぎ込むのであった。
夜会で抜刀しただけでも十二分に気違いじみたことなのに、それが婚約破棄と不貞まで加われば、その話が持ちきりになるのは疑いようもなかった。
ユウナの父であるアカイア伯は、婚約者ラルフの父であるイストリア公に即座に抗議をしたのだが、相手からはのらりくらりと躱されている。
それどころか、ユウナが魔女で、ラルフとレイが勇者と聖女であり討伐した、といったうわさまで流れ始めた。
ユウナとしてはたまったものではない。
頬の傷跡は残る可能性があるといわれているし、そもそも切れ味が悪いなまくらで切られたせいでひどく痛むのだ。
何もしていないのに怪我をさせられ、悪く言われた彼女は体調を崩した。
家族は心配してくれているし、お付きの侍女もかいがいしく世話をしてくれる。
それでは癒せない心の傷を負ってしまったのだ。
このような事態になったのは、ラルフがしでかしたことがあまりにひどすぎたためだった。
婚約破棄だけならばスキャンダルであったとしてもここまでひどくはならなかっただろう。
なんせまだ結婚の約束をしている段階だ。
イストリア公側が謝罪し、金銭賠償だけで円満解決できたはずである。
しかし、ラルフが剣を抜き、相手に切りかかったのが大問題だった。
夜会で抜刀はご法度であり、さらに刃傷沙汰になったものだから関係者が増えてしまったのだ。
夜会の主催者であるレリー伯は自分の会をつぶされたと大激怒。イストリア公に正式な謝罪と賠償を要求している。
また、参加者の中には刃傷沙汰を見て卒倒し、ケガをしたものなどもいる。そういった者たちからの抗議もイストリア公に届いていた。
もちろん娘を怪我をさせられたアカイア伯は大激怒だ。
娘への愛情から行っても大激怒、家としてのメンツとしても大激怒、さらに子がユウナしかいない現状入り婿を取らなければならないが傷をつけられてその候補も激減する点も大激怒。
私人としても公人としても許すことができる限度を完全に超えてしまっていた。
このままだと両者の間で戦争が起きかねないと国をまとめる皇帝すら注視する状況になってしまった。
そこまでひどいことが起きると、人間何か理由があったのではないかと思い始める。
正常化バイアスと呼ばれる現象だが、常人の理解できない狂気の沙汰を、自分の理解できるものに勝手に解釈するというはた迷惑なものだ。
それをイストリア公は最大限利用した。
ユウナが魔女であるという噂を流し始めたのだ。
それを耳にしたユウナは完全に病んでしまった。
「ねえミナ?」
「なんですかお嬢様?」
「毒を用意してほしいの。もう嫌になっちゃった」
「……」
気落ちしたお嬢様にいろいろしてきたが、どうしようもなかった。
婚約破棄から一週間後、ユウナは侍女であるミナにそんなことを頼んだ。
普段なら、そんなことは頼まないだろう。
自分を慕う彼女に自殺用の毒を用意させるなんて非道だということすらわからないぐらい、彼女は消耗していた。
ミナは覚悟を決めた。好きな食べ物も、好きな本も、家族も、自分も、今のままでは最愛のお嬢様をとどめることはできない。
ミナは覚悟を決めた。であれば、常道ではない方法をとるべきだ。
皆が扉を開けると、そこには筋肉隆々の大男がいた。
そのまま部屋に押し入ると、ユウナを押し倒す。
それでもユウナは無反応だった。どうでもいいと思っていたのだろう。
殺されるか、犯されるか。
そんなことをぼんやり考えていたユウナの口に、男は白く濁った液体を注ぎ込むのであった。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?
もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。
政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。
王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。
王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。
オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。
問い・その極悪令嬢は本当に有罪だったのか。
風和ふわ
ファンタジー
三日前、とある女子生徒が通称「極悪令嬢」のアース・クリスタに毒殺されようとした。
噂によると、極悪令嬢アースはその女生徒の美貌と才能を妬んで毒殺を企んだらしい。
そこで、極悪令嬢を退学させるか否か、生徒会で決定することになった。
生徒会のほぼ全員が極悪令嬢の有罪を疑わなかった。しかし──
「ちょっといいかな。これらの証拠にはどれも矛盾があるように見えるんだけど」
一人だけ。生徒会長のウラヌスだけが、そう主張した。
そこで生徒会は改めて証拠を見直し、今回の毒殺事件についてウラヌスを中心として話し合っていく──。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる