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5 健全な筋肉は健全な食事に宿る

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ユウナの普段の食事はとても少ない
サラダを食べて、メインディッシュを一口食べればあとはお菓子をつまむぐらいだ。
そのせいか体は細いし背も低い。虐待とかではなく、単純に食が細いのだ。
しかし、今は修行中。そんなことは許されなかった。

「なんです、これ……」

ユウナの顔が引きつる。
サラダはいつもの量と変わらないが、メインディッシュには大きなステーキが置いてある。
そして、豆のスープとあの悪魔の白いドロドロした液体だ。

「お嬢様向けスペシャルコースですわ。メインディッシュはステーキ1ポンド、スープはお豆たっぷり、もちろん豆乳もついています。残さず食べてくださいね」
「いや、これ、むり……」
「食べてくださいね♡」

満面の笑みでユウナに告げるミナ。
完全に逆鱗に触れていたことに気づくがもう遅かった。
サラダはいつも通り美味しかった。ニンジンと葉野菜の混ざったものだ。
問題はまず、このステーキである。
とても大きい。
ユウナの掌を余裕で超える大きさがある。1ポンド、約450g。普段のユウナなら、1日3食どころか2日ぐらいかけないと食べられない量だ。
ステーキ自体はとてもおいしそうである。あまり生っぽい肉が得意でないユウナのために焼き方はウェルダンだ。
塩コショウで味がついており、ソースも飽きないようにか3種類もついている。
だが、量がとてもきつい。ひとまず少しずつ食べていく。
運動し過ぎて食欲があまり出ないのだが、残すとミナがこわい。
ミワはにやにやしながら見ている。許さん。

少しずつ食べながら、スープの方に口をつける。
豆が3種類入ったスープだ。
コンソメの味はおいしいのだが、ユウナはどうも豆のあのぼそぼそした触感が苦手だった。
しかし、このままではこれも飲むのが苦痛である。幸い、そこまで量が多くない。
一気に口に流し込み、もぐもぐとほほを膨らませ食べる。
とんでもなくはしたないが、背に腹は代えられかった。
リスのように頬を膨らませながら、スープを咀嚼すると、そのまま豆乳と呼ばれる飲み物で飲み干した。

この豆乳は、大豆をすりつぶして煮詰めたもの、ということだ。
体によく、特に筋肉を作るのによいということで、最近兵卒たちに導入されたらしい。
他にも病人食に使われたりと、新参の食品ながら広く食されている。
ただ、味は正直かなり微妙である。
味はほのかに甘いが基本的に無味。
匂いは豆の青臭さが非常に強い。
そしてざらざらしたのど越しが非常に悪い。
端的に言って非常にまずかった。

そんな嫌いなものとまずいものと多すぎるものを押し付けられたユウナは本気で泣きそうになっていた。
しかし、周りは誰も許してくれそうにない。
ミナは絶対に許さない顔をしている。
ミワは面白がっている。
お母様はなんか感動している。たぶん今まで死にそうな顔をしていた娘がいっぱい食べるのがうれしいのだろう。
お父様は悟った顔をして頑張れと目で言ってきた。助けるつもりは絶対なさそうだ。
つまり助けはない。
やけになって肉を大きく切ってもぐもぐと元気よく食べ始めるのであった。
やけになったともいう。
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