婚約破棄されたから殴りたい~裏切り者の元婚約者を筋肉でごみ屑にするまで~

みやび

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8 決闘のお時間です

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さて、問題のお相手であるラルフだが、不貞相手のレイを連れて堂々と夜会に表れた。
とんでもない厚顔無恥っぷりである。
まだ婚約破棄も全部完全に終わっていない。
形式的には私、アカイア伯令嬢ユウナがまだ婚約者なのだ。
にもかかわらず不貞相手と、婚約者の叔母の夜会に出てくるのだから本当に頭がおかしいとは思えなかった。

まあその頭空っぽさが都合はよかった。
入ってすぐに、そのあほ面を見つける。
向こうもこちらに気づいたようだ。にやにやしながらこちらに近づいてきた。

「魔女め! どうしてこんなところにいるんだ!! はやくでてふべしっ!!!」

ああ、全部聞く前に思わず手袋を投げつけてしまった。
決闘の申し出の場合、白い手袋を投げつける。
普通は相手の足元に投げつけて相手が拾うと決闘を了承した、ということになる。
だが、思わずその憎たらしい顔に思いっきり手袋を投げつけてしまった。
予想外の一撃だったのか、ラルフはもんどりうって後ろに倒れた。
情けなさすぎないか。
周りは騒然としてざわざわと遠巻きに見ている。
エスコートのミワはサムズアップしていた。
叔母様もこちらを見てサムズアップしていた。

「アカイア伯令嬢ユウナは、イストリア公令息ラルフに決闘を申し込みます!!!」

できるだけ胸を張り、剣を抜いてそう宣言する。
決闘の儀式としての宣言だ。手袋を拾い、受ければ決闘が成立する。

「なぜそんな野蛮なことを受けねばならないんだ!」

決闘を受けるか受けないかは任意であり、もちろん受ける必要はない。
ラルフはとっさに断ろうとしているようだ。だが、そういうあたりが、馬鹿なのだ。

「ほほう、逃げるのですか」

受けないこと自体は恥ではないが、それも状況による。
現在うわさで広がっている、ユウナが魔女で、ラルフが勇者という構図を維持するには、ラルフは挑まれる限り逃げられないのだ。
ここで断ればこのうわさが一気に瓦解し、誰が始めたのかという話が出てくる。おそらくイストリア公の近辺の人間にぶち当たるし、そうなれば最悪である。
常識よりかなりひどかったから他人が善意判断してくれている状況だ。その判断が崩れれば、彼らを味方する者はいない。むしろ積極的にたたきにかかるだろう。
単純にラルフや不貞相手のレイは、謹慎して隠れているべきだったのだ。こうして出てくるから問題になる。
そういう頭がないのが彼らの悲しいところなのだろう。

周りも視線がラルフに突き刺さる。馬鹿なラルフも雰囲気が変わったことは気づいたようだ。
手袋を握りしめたまま、剣を抜く。

「イストリア公令息ラルフ! 魔女ユウナに鉄槌を下す!!」

馬鹿が馬鹿を自白する宣言をしてくれたが、舞台は整った。

「日と場所は改めて決めてやる!」
「いえ、不要です。この場でやりましょう」
「この場で!?」
「叔母様、構いませんよね」
「ふふ、可愛い姪っ子の頼みは断れませんからね。前庭を貸しますよ」

主催者の許可を得た以上、この場でやるのは何も問題ない。
ここで逃がして下手な代理人でも立てられると面倒だ。
代理人を出したらそれこそこちらもミワに頼めばいいだけだ。
あまりマナーはなっていない男だが、騎士団の中でも最強の一角だ。これ以上強い相手をイストリア公が見繕えるとは思えない。
ただ、それだと自分で殴れない。ユウナは目の前の馬鹿を自分で殴りたいのだ。

「ということで行きましょう」
「ま、まて!」
「私直々に相手してあげますよ。逃げませんよね」
「っ! 当たり前だ!!」

ラルフもミワが出てくることを考えてしり込みしていたのだろう。
しかし、ユウナ自身が戦うと聞いて、怒りを覚えるとともに強気になった。
さすがに貴族子息として、令嬢に負けるつもりはないのだろう。
もっとも一般的な貴族程度しか剣術をたしなんでおらず、しかもかなりさぼり気味だったラルフの実力は下の下であることはユウナも知っていた。
なぜそんな自信があるのか、不思議に思いながら二人は前庭へと向かうのであった。
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