引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由

ジャンマル

文字の大きさ
24 / 47
勇者覚醒

小さな疑念

しおりを挟む
「来たか!」

「春斗さん.....! なぜ!」



彼は何も言わず、腰のホルダーから銃を抜いた。言葉など無くとも、戦いで分かるさ。そう言わんばかりだった。

だからこそ、それに応じようとはしなかった。



「それには乗らない.....だから今、ここでみんなであなたを止める。そして謝ってもらう」

「出来るなら.....な。だが君たちはやるだろうな」

「わかってるならなぜ.....」



美雨さんは、僕達の視線の先で何かを訴えるようにこちらを見ている。だが、今気にする余裕はない。

美雨さんを助けるのは半蔵さんの仕事となっている。僕とエルザさんの二人がかりで春斗さんを抑える。

その隙に美雨さんを助けてもらい、最悪撤退をする予定だ。.....どこに撤退するかも考えずに。



「ふん、少し見通しが甘い!!」



彼がそう言って視線を向けたのは、美雨さんの方だった。



「.....ごめんな、半蔵」

「なっ.....!」



彼女は目がいい。それ故に、半蔵の動きは全て目視できていた。

だが、殺そうとする動きではなかった。春斗さんは殺すほどの勢いだったが.....



「舐めプ.....とか言ったら怒りそうだけどな。でも、舐めプするしかないんだよ、今は!!」

「舐めプとか宣言するあたり、まだまだでござる!!」



忍者のようにしなやかに七瀬の攻撃を避ける半蔵。それをわかっているかのように、彼の動きを先読みし、攻撃を加える七瀬。

既に一般的な動きから掛け離れているが、忍者である半蔵自身の力と、七瀬さんの春斗さん直々の修行なのかそれに着いていく体力。



目の前の化け物じみた2人を横目に、動きを止めていた僕に、エルザさんが叫びで訴えかける。



「今のうちだ!! 撤退するぞ!!」

「りょ、了解しました!!」

「露払いはさせてもらうでござる。早く!」



3人がかりで、なんとか逃げることに成功する。逃げ切ったからか、追ってはこない。



「.....助けましたよ、美雨さん」

「はい.....」



助けられたその顔は、どこか浮かない顔をしていた。だけど、その顔の意味はわからない。



「.....伊勢谷さん」

「ん、なんです?」

「きっと、これからあなたの身にはあなたの許容を超える事が起こるかもしれません。だけど、だけれどーーあなたは、父親を絶対に恨んだらダメなんです」

「父親.....知ってるの? 僕の」



その質問に、美雨さんは言葉では答えなかったが、顔を縦に振る。どこかできっと会っていたりしているんだろう。

だけど、何故彼女が父親を恨むのか。そう発言したのか真意はわからない。



だけど、きっと今はまだ些細なことなのだろう。小さなわだかまり。小さな疑問。あまりにもピースが少なすぎるそのパズルは、今は断念して、後に繋げた方がいいのだろう。



「何はともかく.....おかえりなさい、美雨さん!!」

「はい、ただいま、伊勢谷さん!!」



しかしまだ、残る謎は多い上に、これで終わると誰も思ってはいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...