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勇者覚醒
真意へ近づく
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「伊勢谷さん」
「ん?」
木山春斗の元から逃げるようにして2日。僕達はエルザさんの持つ稽古場の控え室で過ごしていた。
だが、いつまでもこんなことをしていては行けないという思いもある……だけど、どうすればいいかはわからない。春斗さんの思惑がわからないんだ。
どうして美雨さんを狙ったのか。どうして孤立するような事をしたのか。そしてーー何より気がかりなのは七瀬さんだ。
この間のエルザさん暗殺未遂といい、彼女には聞かなければならないことばかりなのだが……彼女は木山春斗についている以上、今の時点では敵として認識する他ない。仲間内で争ってる場合じゃないのに……!
「お前の才能は以前よりもコントロール出来ているな」
「はい……」
「ならばもっと自信を持て。お前がそんなんじゃみんな離れるぞ?」
とは言っても、僕についてきている訳では無いーーはずだ。
だが、一向に事が動く気配もない。自分たちで動き出すか、向こうから動いてくれるか。そして何故こんなことになったのか。聞かなきゃ行けないことは山ほどあって、そして……
「そんな新妙な顔をするな。春斗さんは大丈夫だよ。何か考えてるって」
「ならいいんですけど……」
意図や思惑が全くもってわからないからこそ怖いのだ。考えるほどわからなくなり、考えるのをやめた。はずだ……だけど、その考えもまとまらなくなり。
「なにか……あの行動の真意が分かるようなことを言っていれば……」
「……伊勢谷さん。改めて父親の事を思い出してください」
「え……?」
「近道……ではないですけど」
何かを知っている顔。そんな感じはしていたが、それが何かわからない。
そしてつい聞いてしまった。
「父親は……既に死んでるんだ」
「伊勢谷……というのは母親の性ですね?」
「そうだよ」
そして、その母親はつい先日死んだ。殺されたんだ、この一連の件に巻き込まれて。関係ない市民までに手をかけて……本当に何がしたいのだか……
「……父親の姓、聞いてませんか?」
「うん。聞いてないよ、生まれてすぐ死んだって聞いてる。だから顔も知らない」
「……それはないです」
その口振りは、まるで僕が生き別れの弟か兄か、とでも言いたいようなものだった。
「私は全てを聞いています。あなたのーー父親の事を」
「でも、なんで君に話さなきゃ行けない理由があるんだ?」
「……春斗さんなんですよ」
「え……?」
それはーー聞きたくもなく、聞いちゃいけない事のような気がした。だけど、心のどこかで、恨みや嬉しさが溢れているのも、また事実だった。
「ん?」
木山春斗の元から逃げるようにして2日。僕達はエルザさんの持つ稽古場の控え室で過ごしていた。
だが、いつまでもこんなことをしていては行けないという思いもある……だけど、どうすればいいかはわからない。春斗さんの思惑がわからないんだ。
どうして美雨さんを狙ったのか。どうして孤立するような事をしたのか。そしてーー何より気がかりなのは七瀬さんだ。
この間のエルザさん暗殺未遂といい、彼女には聞かなければならないことばかりなのだが……彼女は木山春斗についている以上、今の時点では敵として認識する他ない。仲間内で争ってる場合じゃないのに……!
「お前の才能は以前よりもコントロール出来ているな」
「はい……」
「ならばもっと自信を持て。お前がそんなんじゃみんな離れるぞ?」
とは言っても、僕についてきている訳では無いーーはずだ。
だが、一向に事が動く気配もない。自分たちで動き出すか、向こうから動いてくれるか。そして何故こんなことになったのか。聞かなきゃ行けないことは山ほどあって、そして……
「そんな新妙な顔をするな。春斗さんは大丈夫だよ。何か考えてるって」
「ならいいんですけど……」
意図や思惑が全くもってわからないからこそ怖いのだ。考えるほどわからなくなり、考えるのをやめた。はずだ……だけど、その考えもまとまらなくなり。
「なにか……あの行動の真意が分かるようなことを言っていれば……」
「……伊勢谷さん。改めて父親の事を思い出してください」
「え……?」
「近道……ではないですけど」
何かを知っている顔。そんな感じはしていたが、それが何かわからない。
そしてつい聞いてしまった。
「父親は……既に死んでるんだ」
「伊勢谷……というのは母親の性ですね?」
「そうだよ」
そして、その母親はつい先日死んだ。殺されたんだ、この一連の件に巻き込まれて。関係ない市民までに手をかけて……本当に何がしたいのだか……
「……父親の姓、聞いてませんか?」
「うん。聞いてないよ、生まれてすぐ死んだって聞いてる。だから顔も知らない」
「……それはないです」
その口振りは、まるで僕が生き別れの弟か兄か、とでも言いたいようなものだった。
「私は全てを聞いています。あなたのーー父親の事を」
「でも、なんで君に話さなきゃ行けない理由があるんだ?」
「……春斗さんなんですよ」
「え……?」
それはーー聞きたくもなく、聞いちゃいけない事のような気がした。だけど、心のどこかで、恨みや嬉しさが溢れているのも、また事実だった。
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