引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由

ジャンマル

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勇者覚醒

暗躍と希望

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 あれから数時間。僕は単独で居場所を突き詰め、彼の元を訪れていた。
 そして、彼と今ーー面と向かって話している。

「木山春斗……全部聞いたよ。美雨さんからね」
「ほう……」
「聞いた上で言わせてもらうよーーあんた間違ってるよ!」
「ほう!」

 彼はとっさの行動をしようとしたのだろうが、先に自制心が働いたのか、それ以上はなかった。だが、なんだろう、この感じ……

「血縁だってことも聞いたか?」
「聞いたよ……」
「……隠す気だったんだがな」

 そう言うと、彼は椅子に腰掛け、もの苦しい顔で続けた。

「お前はな……直接俺の遺伝子が入ってるんだ」
「だろうな」
「だからな……正直お前を殺そうかと思った」

 そう言うと、投影機を取り出す。

「これを見ろ」
「これは……?」

 それは、遺伝子のデータ……のようなものだった。だが、そこに書いてあったものを何となく僕は理解することが出来た。理解出来てしまったのだ。

「……春斗さんの10分の1だけを継承してる……」
「ああ。俺の才能は全ての才能のモデル、五感や第六感。その全てが散らばり、人類の進化の可能性のある人間に才能が発言するようになった」

 才能を開花させた人間はみんなある特殊な状況下にあるという。それは、地雷にもなるし、希望にもなる。だけど、その境界線がない故の危険性だと彼は言う。

「俺のモデルを参考に散らばってるとはいえ……そのうち全く同じものをいずれ人類は開花させる。人類の数人とかの規模じゃない。全人類だ」
「それは……危険な……ものの気がする」

 なんとなくしかイメージも理解も追いつかない。だけど、最悪の事態だけは避けなきゃ行けない。それだけは確かだった。そして、最悪の自体を回避するためにはーー

「……僕の才能が必要」
「そうだ。そしてーー俺が死ぬ事だ」
「そ、それは……!!」

 彼いわく、モデルが今死ねば、少なからず後の人類に悪影響はないと言う。だが、だけどーーそれは本当に彼の目指す勇者と言えるのか……? 命をなげうってまで、人類の進化を止める必要があるのか……?

「もちろん疑問はあるだろう。疑念もあるだろう。だが、それでいい。今はな」
「あなたは……僕に人を殺せと?」
「ああ」

 冷酷ながらも、冷静な判断。残酷ながらも、最適な判断。きっと、そうなんだろう。それでも、僕は殺すのはーー

「……」

 一瞬彼の動きが止まる。次の瞬間、彼の胸元から出血が起こり、倒れ込む。

「なっ……!!」
「わりいな。元々こういう仕事なんだよ。うちのな」
「七瀬さん! あなたはーー!!」
「春斗さんには言ってなかったな……私は今特務機関レッドフォックスで暗部をやってる。だが、勘違いするな。これはーー世界の決定だ」

 それはーー抗えない運命なのだと、僕は確信した。
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