引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由

ジャンマル

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勇者覚醒

そして世界規模へ

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「いや、いい、いいんだーー伊勢谷」
「春斗さん、でも!」
「俺が死ぬことはーー抗えない運命……だったんだよ……」

 七瀬が撤退したのを見計らって、ポケットかな何かを取り出す。端末などではなく、手ものようなものだった。

「このメモは……きっと育成協会の……運命を変えてしまう……だが、その前に……君がーー」

 その言葉を最後に、彼は救われぬ命となった。僕は遺体を運びながら、事務所に戻る。せめて、遺体くらいは持ち帰りたい。

 許した訳では無い、彼を。母子をすててまで死にたがる、そんな男を許せるはずもない。世界の命運などどうでもいいんだ、本当は。彼は、彼だけは、心のどこかで、救われるかもしれないと思ってたかもしれないのにーー

「……そう言えば……」

 帰る途中、メモを見てしまったが……それは確かに、僕達の運命を変えかねないものだった。

「早く帰らないと……!」


 ーー

「あ、伊勢谷さん。おかえりなさ……い……」
「ごめん……」

 僕が帰ったのを確認したのか、みんながだんだんと集まる。エルザさんと半蔵さんは、春斗さんの遺体を見て、怒りを抑えながら僕を叱っていたに違いないだろうに。
 そんなことはなく、ただ、メモを見せてくれ、と。

「……おい、おい! 伊勢谷。これは本当に春斗さんが残したものか!?」
「はい。確かに直接受け取りました」
「嘘だろ……ホントに……」

 メモの内容。それは、協会は既に国家にマークされているぞ、というものだった。最初は何がなんだかわからなかったがーーあの場で明確にそれを証明する出来事が起きたのを僕は思い出す。

「七瀬さんが……現れた時に、自分は国家特務機関の人間だ、って……」
「……そういうことか……」

 そう言うと、何も言わずエルザさんは事務所の社長室へと消えていった。
 春斗さんが死んだ以上、今は彼女が春斗さんの仕事を引き継ぐしかないからだ。そして、彼の部屋にはまだ僕達に伝えるべきだった情報があるかもしれないからだ。

 調べた痕跡からなにまで全部確認するぞ、というのがエルザさんから出された命令だ。こうなってしまった以上、僕達も後戻り出来ない。それが確かだからこそ、エルザさんも半蔵さんも、美雨さん達も、覚悟を決めていた。
 ここから先は、僕達が生き抜くための戦いなのは間違いなかった。

「才能を持った人間を少しでも求めて世界が動くだろう。私たちや、まだ世界に散らばっている才能を開花させる可能性があるもの、既に開花させているもの。その全てを私達は春斗さんの意志を継いで守り抜く任務がある! 無茶だとわかってる、死ぬかもしれない。だが、それでも! 世界の秩序を守るために、協力して欲しい!」

 エルザさんのその言葉は、心に響いた。
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