上 下
15 / 123
引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。(アルファ)

不信感

しおりを挟む
 連れて……行かれないっ!
 助かった。
「君はいったいどんなことを想像したんだい……?」
 え、いや。ナンデモナイデス。
「まあ、いいや。とりあえず、飛ばすぞ」
 一気にスピードを出す。これスピード違反で捕まらねえの!?
「大丈夫。これ、体感速度だけだから」
 えっ……? ……よーく見てみる。ふざけんな! これ、ペダル式の手動じゃねえか!!! んなもん疲れるわ!
「大丈夫。こぐのは俺だけだ」
 いや、おかしいだろ!? 普通の車で行けよ!
「すまんな。あいにく、免許なんてもってなくてな」
 取れよおおおおおおおおお!?!? 免許取れよおおおおおおおお!?!?
 それくらい簡単だろ。というか、この車で高速とか入れるのか……?
「取りま、全力疾走だ!」
 えええええええ!?!?
 速い。すごい速い。スポーツカー並みのスピードが出てる。
「はあ、はあ。水、水飲ませてくれ」
 あっ。うん。……あれ? 止まるんじゃないの?
「違う! 飲ませてくれ!」
 アッハイ。と言って、飲ませた。そしてまたスピードを出す……意味ねぇじゃん! でもまあ、もうすぐってとこまで来た。
「うおおおおおおおおおおお!!」
 やべえ、やべえよ。傍から見たらキチガイだよおぅ!
 もうまじ無理ィ……水のも。
「ふう……着いたぞ。降りろ」
 早えよ。文面で言えば約300か400……その間によくわからん移動法でよくわからん形でついた。やばすぎる。こいつ、やばい。キチガイそんな四文字じゃ収まらないくらいのガイジ。もうそれすら褒め言葉じゃ無いだろうか。
「お、なんか褒められてる気分だな。はは」
 ファ!? 読心術ってそんな簡単なもんなの!? ……いや、今のは普通にそんな気配を感じ取っただけだろう。うん。そうだろう。そうじゃなきゃ怖い。
「いや、読心術はハルトの部署じゃ基本だぞ? 習わなかったか?」
 嘘だろ!? 習ってねえよ! というか、読心術が基本とかキチガイ通り越してただの変態じゃねえか! もう、変態まみれじゃないか。うちの部署。どうしてくれんだよ。僕だけ健全じゃないか。いや、間接的にだけど。間接的にだけど。大事なことなので2回言っておく。あっ、別に変態紳士なだけだからな! 勘違いすんなよ!
「いや、変態紳士って自分で宣言する時点ですでに紳士じゃない」
 ネタにマジレスとかありえないんですが。どうしてくれんですか。
「とりま、入ろうぜ」
 ドアを開ける。晴ちゃんが真っ先に出てくる。あれ? 美雨さんは?
「ねえ、美雨さんは?」
「あ、お姉ちゃんは……あれ?」
 いや、知らんのかい。まあ、いいや。多分、コンビニだろう。そうだろう。そんな単純な脳であってほしい。じゃなきゃ困る。また誘拐されたんじゃないかって。
「流石に誘拐はないですよ。あはは」
 と、そんな冗談半分なこと言ってると、当然、そんな話すんじゃねえ。と、七瀬さんに怒られてしまった。
「全く……そんな不吉なこと言うんじゃねえ。コンビニだよ。あいつは」
 で、ですよね。じゃないと困ります。泣きます。
(……美雨は居ないのがちょうどよかったな。それにしても、何考えてんだ? ケビンは。こんなの、計画に入ってないぞ?)
 ケビンは、七瀬さんを見ると、何やらにやにやし始めた。
「今君不審者だと思った?」
 と、近づいていく。あからさまに不審者だ。これ、止めなくていいんですかね。
「――だ」
 ……? 一体、何を言ったんだ? 彼が何かをつぶやくと、七瀬さんの表情が変わった。少し、驚いているような表情だ。何を言われたんだ……?
「よーし。伊勢谷君! パーティーだ!」
 えっ? な、なに? いきなり。
「何って顔するなよ。もちろん、新生YIK結成記念のパーティーじゃないか」
 そ、そうなのか。って事は、さっきのはサプライズについての会話かな? そうなのかな?
(C、余計なことは喋るなよ)
(わーったって。何回も言うなよ)
 でも、なんだろう。この変な感じは。まあ、そんなことよりパーティーだ。美雨さんマダー?
「あっ、お姉ちゃん呼び戻しますね」
「いや、別にあいつの好きなタイミングで帰ってきても構わないと思うぞ」
「そ、そうですか?」
 いや、この変な感じは違和感じゃない。確実だ。何故さっきから美雨さんが居ない状態にこだわる? それに、パーティ―と言っても急すぎる。さっき、晴ちゃんですら初めて言われたような顔をしていた。社長通さずに企画するはずがない。
「おっと、ちょっと外出てくるな。行くぞ、えっと……」
「七瀬です」
「おし、行くぞ、七瀬君」
 何故だ、何故七瀬さんを連れていく? 何かある……?
 と、言って、すぐさま何やら急いだ様子で外に出ていった。……考え過ぎかな。多分、コンビニで色々買ってくるんだろう。全く、準備が遅いじゃないか。と、言っている間に、晴ちゃんと二人になってしまった。しかし、晴ちゃんが先に口を開く。しかし、その口は不安そうだった。
「ねえ、伊勢谷さん。七瀬さんはいいの。あのケビンって人……『誰』?」
 え……? そ、そんなはずないだろ。知ってるはずだろ?
「何言ってんだよ。今回の件のスペシャリストって……」
「今回の件って何ですか!? その話、詳しく話して下さい!」
 晴ちゃんは、何も知らない? いや、ケビン自体が部外者なのか? それに、七瀬さんはどうも初めて会ったような顔ではなかった。なんだ? 一体、何が起ころうとしているんだ?
しおりを挟む

処理中です...