引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。Re:boot

ジャンマル

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 杏子を助けに行くために支度をして20分。いよいよ救出作戦も大詰めだ。残るは直接助けに行く、だ。シミュレーションは重ねに重ねたから平気だろう。ふふ、行けるぞ。いける行ける!! まあ、そんな事より助けに行かなくてはいけないのだが。待ってろよ、杏子。今お兄ちゃんが助けてやるからな。とはいえ、味方でも疑問はあるよな、美雨さん。何故あそこに居合わせたかとか。聞くにも聞けないからなあ……うーん。どうしようか。ま、そのうちわかるでしょ。

「私があの場に居合わせたのは偶然じゃないですよ」
「え?」
「あの場に居合わせたのは杏子ちゃんを助けるためです」
「それが――任務だったから?」
「ええ、そうです」

 情報は最速で伝わる自信があると言っている。その情報は間違いなく信頼していいだろう。僕しか知らなかったはずの情報を知っていたんだから。間違いなく最速だ。僕が口にしたのを誰かが聞いてたかのように。ストーカー、見張り、ボディガード。色々あるが、見張りが最も正解だろう。と言っても妹の見張りだ。そりゃそうだ。僕の見張りとか誰得だよ。それに、今回の一件は僕が大きくかかわっている。事前に彼女らが知っていたのなら見張っていて当然だろう。見張るのはまだしも――ストーカーまでして。
 いや、悪い言い方ではないぞ? ストーカーされてたって言うのは。いい意味で、だ。助かったんだし。グチグチいうつもりもない。ここでグチグチ言ってたら終わりだ。僕もな。

「伊勢谷さん。準備はいいですね?」
「うん。もちろん」
「いきますよ」

 僕が心の中でべちゃくちゃしゃべくっている間に目的の倉庫についていた。まだ一日期限はあるが、平気だろう。何しろ早く助けないと気が済まないんだし。僕の気がな。行くぞ、叛逆王子。命の保険は十分か! などと僕は供述しており――なんて馬鹿が出来るのも今の内だろう。しっかりと緊張をほぐさないとな。うん。でないと本番でシミュレーションが無駄に終わる。だから頑張る。僕は。それから、忘れちゃいけないのは僕は単なる引きこもりって事だ。仕事もくそもない。僕がいる限りニートは永遠だ。なんて偉そうなことを言ってみたいお年頃でもあるのだ。
 ふう……大分緊張もほぐれた。よし、行くぞ。これから向かうは叛逆王子(仮)の住処。これから行うは我が妹、伊勢谷京子の救出。

「いよいよですね。仕事慣れって言うのも怖いですけど、まったく恐怖を感じません……」
「セリフと顔がミスマッチ! ドヤ顔してますよ!」
「え?」
「え?」

 まあ、今のは緊張してたのが見えてほぐしてくれたのだろう。ありがたい。でも、そんな緊張ももうおしまいだ。ここからは一発本番。ぶっつけ本番なんだ。緊張してたら最悪の事態を引き起こす。そうならないためにも慎重にだ。

「行きますよ、3」
「2」
「「1」」

 突入する。だが、そこには――

「誰もいない……?」
「いや、伊勢谷さんあそこ!!」
「杏子!!!」

 ロープたった一本で空中にぶら下げられている。これは……やられた。迎え撃たれる。どうする――

「へっへっへ、甘いんだよ!!」
「はあああああああああああああああああああああああ! せいっ!!!!!」
「え?」

 ばきっ。
 首あたりから嫌な音がした。叛逆王子(仮)だろうか。の首は見事にこの怪力ゴリラ女と判明した美雨さんによってへし折られたのである。残念だったね、叛逆王子(仮)……
 何はともあれ、これで救出に成功したはず――

「あれ、杏子?」
「伊勢谷さん、まずいですよ」
「え?」
「彼女の安否は政府が保護しちゃったみたいです」
「それって、どういう……」
「せんそうがおっぱじまりますよ」
「は?」

 杏子一人がいるだけで戦争って……何馬鹿気たこと言ってるんだよ、美羽さん。そんな馬鹿なことあるわけ……ないだろ……

 その後彼女に話を聞き、納得しきれないが納得してしまった。彼女は――杏子はジャンヌダルクの子孫の可能性が高いと。でも、だったら僕でもいいという疑問が起きる。だが違う。僕と杏子は――『血がつながっていない』そうだ、杏子は養子なんだ。16年前、僕が三歳だった時、彼女はわが家へ来た。話によると、両親からひどい虐待を受け、施設で生活していたという。そんな彼女の話を聞き、両親は決心したという、彼女を、杏子をわが家へ来させることを。
 そして彼女をいれた我が家の新生活が始まった。新しく楽しい生活が始まると思っていた。でも、そんなことはなかった。

 僕たちの楽しかった生活は、一気に引きはがされることとなる。
 5年前。杏子が小学校5年生に上がった時の事だ。突如として人類は王族派と引きこもり派の覇権争いへと発展した。理由は現在も不明だが、その争いこそ、ジャンヌの子孫を掛けた争いだったという。
 妹は日ごろからみんなに崇められていたといっていた。そう、引きこもり派の人間なのに、王族派の人間によってだ。その時点で気付けばよかった。その時点で救ってやればよかった。
 その日から、僕と妹の間に大きな溝が生まれることになる。
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