7 / 271
引き勇
ジャンヌの遺産
しおりを挟む
って、そうじゃねえ。というと、大事な話。と、改まって真面目に話してきた。
『お前、ハルトさんに言われたんだろ?』
「え?」
何を? という顔をしている(というのを分かっている前庭の)と、彼女は、お前なぁ……と言ってきたが、本気でわからない。何のことだろうか。
『聞いてないか? ジャンヌの遺産のありか』
ジャンヌの遺産……あっ。思い出した。確か、あの時――
「慎二、ジャンヌの遺産は、すべての始まりの場所にある」
「……?」
と、言っていたのを思いだす。それを話すと、彼女は、「なんだそれ」というのを5回繰り返した。いや、確認にしては多いぞ。一回でOKだぞ。あえて声に出して突っ込まない。
『んで、今何処だ? お前の家か?』
「ま、まあ。終電逃したから――」
『え? 何? 終電逃したの、馬鹿じゃねえの?』
うざすぎワロタ。笑うならまだわかる。さすがに草を付けるのはどうかと。ちなみに、草を生やし過ぎると恋愛対象にされなくなるらしいぜっ! というのをスレで見たことある。本当だろうか。そうだ、今、試してみよう。
「うwwwwざwwwwすwwwwぎwwww」
『……』
返事はない。あ、あれ?
『……死ね』
はい。死ね、いただきました。今ので恋愛対象から外されただろうけど、関係ないでござるwwwwww友達すらいないでござるからなwwwwwwwwwww
草はやすしかない。いっそ、自暴自棄になるか。
『取りあえず……明日朝一出勤だ。ジャンヌの遺産の回収が任務だからな。ちょいと遠くに行くぞ』
「え?」
『え? じゃねえ。北海道だよ。でっかいどう』
……あ、あの。急にシャレを挟まれましても……
『な、なんか言えよ! 恥ずかしいだろ!』
草はやしてる時点で人間として恥ずかしいんだよなぁ……あっ、これは僕の持論であってマジレスじゃねえから。決して恨まないでくれよ!
『とりま、北海道だ。晴は行かねえけどな』
「なんで晴ちゃんは?」
『あいつは忙しいんだよ』
ああ。そう言えば、もう社長業やってるんだった。そりゃ忙しいよな。
『美雨も行くぞ。とりあえず、伝えることは伝えたんだ。準備しとけ?』
了解と言って、電話を切ったのはいいものの……いきなりすぎるわっ!!! まさか、父さんの耳元でささやいたことにこんな意味があるとは……やっぱあのじいさん面倒事押し付けていったな!? ちゃんと仕事しろ!!
とまあ、準備だよな。……父さんにもらった銃と、何がいるんだろう。あ、金か。いくらいるんだ……って、違う。金の前にパスポートだ。あったっけ……
と、準備していると、チャイムが鳴った。
『もしもーし』
急いでドアを開けに向かう。その途中で、こけた。が、無事にたどり着いた。(無事とは言ってない)ガチャ。と、ドアが開いていたのに気付き、中に入ってくる。ドロボおおおおお! なんてやるのはやめとこう。
「君、伊勢谷君だよね?」
「は、はい……」
誰だ……? 印象深い星形のサングラス、そして、フランスパンのプリントされたTシャツを着た明らかな不審者。怪しすぎる。というか、これを不審者と言わずなんという。そんな、完成された不審者が目の前に居る。お巡りさん、こいつです!
「おっと、通報はよせ。俺は、れっきとしたハルトの親友だ」
えっ? そんなのいたって聞いたことないけど。
「とりま、今、ジャンヌの遺産の任務任されてるだろ?」
なんでそれを? おかしい。言った覚えはないし、聞かれた覚えもない。こいつ、いったい何者なんだ?
「話は、晴ちゃんから聞いている。俺は、ケビン。フランスを愛する男、ケビン・アルトベルトだ。」
クラッカーみたいな名前しやがってええええええ!! と、そこじゃない。晴ちゃんから聞いたって事は、信用していいのか……?
「とりま、ジャンヌの遺産専門の勇者ってとこだな」
都合が良すぎないか? それは。ジャンヌの遺産って、そもそもなんだよ……
「ジャンヌの遺産ってのはな、ジャンヌが使ったとされる特殊な箱の通称だ」
んだよ、それ。胡散臭いにもほどがあるだろ。
「そいつさえあれば、願いが何でも叶う。だから、それを回収せにゃならんのだ」
うっわ、痛すぎ。なんだよそれ。SFの見すぎ。それと、そのサングラスどうにかならないんですか? 見てると笑いしかないんですが。マジでやめてほしい。いい意味で。
「ま、そいつを巡って起こりそうな戦争を事前に止めるってわけだ」
もしかして、あの夢ってこうなった後の話なのか? いや、都合良すぎか。それは。
「ジャンヌの遺産がある限り、俺たちは国を追われる可能性もある。この国が、人間相手に自衛隊。なんて話もあり得るぞ」
ほんとにあの夢の通りじゃないか……つまり、ああならんように止めろって事か。よし、いいだろう。やってやろうじゃないか。あんな未来嫌だしな。
「やってくれるか?」
「はい」
と、答えると、車出すぞ。と言って、ケビンのと思われる車に乗せられた。あ、あれ? 逃げるタイミング逃した?
もしかして、このまま連れてかれる……!?
連れて……行かれないっ!
助かった。
「君はいったいどんなことを想像したんだい……?」
え、いや。ナンデモナイデス。
「まあ、いいや。とりあえず、飛ばすぞ」
一気にスピードを出す。これスピード違反で捕まらねえの!?
「大丈夫。これ、体感速度だけだから」
えっ……? ……よーく見てみる。ふざけんな! これ、ペダル式の手動じゃねえか!!! んなもん疲れるわ!
「大丈夫。こぐのは俺だけだ」
いや、おかしいだろ!? 普通の車で行けよ!
「すまんな。あいにく、免許なんてもってなくてな」
取れよおおおおおおおおお!?!? 免許取れよおおおおおおおお!?!?
それくらい簡単だろ。というか、この車で高速とか入れるのか……?
「取りま、全力疾走だ!」
えええええええ!?!?
速い。すごい速い。スポーツカー並みのスピードが出てる。
「はあ、はあ。水、水飲ませてくれ」
あっ。うん。……あれ? 止まるんじゃないの?
「違う! 飲ませてくれ!」
アッハイ。と言って、飲ませた。そしてまたスピードを出す……意味ねぇじゃん! でもまあ、もうすぐってとこまで来た。
「うおおおおおおおおおおお!!」
やべえ、やべえよ。傍から見たらキチガイだよおぅ!
もうまじ無理ィ……水のも。
「ふう……着いたぞ。降りろ」
早えよ。文面で言えば約300か400……その間によくわからん移動法でよくわからん形でついた。やばすぎる。こいつ、やばい。キチガイそんな四文字じゃ収まらないくらいのガイジ。もうそれすら褒め言葉じゃ無いだろうか。
「お、なんか褒められてる気分だな。はは」
ファ!? 読心術ってそんな簡単なもんなの!? ……いや、今のは普通にそんな気配を感じ取っただけだろう。うん。そうだろう。そうじゃなきゃ怖い。
「いや、読心術はハルトの部署じゃ基本だぞ? 習わなかったか?」
嘘だろ!? 習ってねえよ! というか、読心術が基本とかキチガイ通り越してただの変態じゃねえか! もう、変態まみれじゃないか。うちの部署。どうしてくれんだよ。僕だけ健全じゃないか。いや、間接的にだけど。間接的にだけど。大事なことなので2回言っておく。あっ、別に変態紳士なだけだからな! 勘違いすんなよ!
「いや、変態紳士って自分で宣言する時点ですでに紳士じゃない」
ネタにマジレスとかありえないんですが。どうしてくれんですか。
「とりま、入ろうぜ」
ドアを開ける。晴ちゃんが真っ先に出てくる。あれ? 美雨さんは?
「ねえ、美雨さんは?」
「あ、お姉ちゃんは……あれ?」
いや、知らんのかい。まあ、いいや。多分、コンビニだろう。そうだろう。そんな単純な脳であってほしい。じゃなきゃ困る。また誘拐されたんじゃないかって。
「流石に誘拐はないですよ。あはは」
と、そんな冗談半分なこと言ってると、当然、そんな話すんじゃねえ。と、七瀬さんに怒られてしまった。
「全く……そんな不吉なこと言うんじゃねえ。コンビニだよ。あいつは」
で、ですよね。じゃないと困ります。泣きます。
(……美雨は居ないのがちょうどよかったな。それにしても、何考えてんだ? ケビンは。こんなの、計画に入ってないぞ?)
ケビンは、七瀬さんを見ると、何やらにやにやし始めた。
「今君不審者だと思った?」
と、近づいていく。あからさまに不審者だ。これ、止めなくていいんですかね。
「――だ」
……? 一体、何を言ったんだ? 彼が何かをつぶやくと、七瀬さんの表情が変わった。少し、驚いているような表情だ。何を言われたんだ……?
「よーし。伊勢谷君! パーティーだ!」
えっ? な、なに? いきなり。
「何って顔するなよ。もちろん、新生YIK結成記念のパーティーじゃないか」
そ、そうなのか。って事は、さっきのはサプライズについての会話かな? そうなのかな?
(C、余計なことは喋るなよ)
(わーったって。何回も言うなよ)
でも、なんだろう。この変な感じは。まあ、そんなことよりパーティーだ。美雨さんマダー?
「あっ、お姉ちゃん呼び戻しますね」
「いや、別にあいつの好きなタイミングで帰ってきても構わないと思うぞ」
「そ、そうですか?」
いや、この変な感じは違和感じゃない。確実だ。何故さっきから美雨さんが居ない状態にこだわる? それに、パーティ―と言っても急すぎる。さっき、晴ちゃんですら初めて言われたような顔をしていた。社長通さずに企画するはずがない。
「おっと、ちょっと外出てくるな。行くぞ、えっと……」
「七瀬です」
「おし、行くぞ、七瀬君」
何故だ、何故七瀬さんを連れていく? 何かある……?
と、言って、すぐさま何やら急いだ様子で外に出ていった。……考え過ぎかな。多分、コンビニで色々買ってくるんだろう。全く、準備が遅いじゃないか。と、言っている間に、晴ちゃんと二人になってしまった。しかし、晴ちゃんが先に口を開く。しかし、その口は不安そうだった。
「ねえ、伊勢谷さん。七瀬さんはいいの。あのケビンって人……『誰』?」
え……? そ、そんなはずないだろ。知ってるはずだろ?
「何言ってんだよ。今回の件のスペシャリストって……」
「今回の件って何ですか!? その話、詳しく話して下さい!」
晴ちゃんは、何も知らない? いや、ケビン自体が部外者なのか? それに、七瀬さんはどうも初めて会ったような顔ではなかった。なんだ? 一体、何が起ころうとしているんだ?
「話って……ジャンヌの遺産の回収任務だよ」
「ジャンヌの遺産ってなんですか……?」
えっ? いや、こっちが聞きたいくらいなのに。何故、知らないんだ? ああ。そうか。僕を騙そうとしているんだな。はは、騙されないぞ。晴ちゃん。
「それに、ケビンって人も本当に知りません」
嘘だといってくれよ。なら、何のために僕に接触してきたんだ? たまたま……そんな単純なものじゃないだろうし。
「私たちの任務は、ブラック企業の殲滅のはずです。そんな、ジャンヌの遺産の回収なんてやりませんよ?」
そういえば……そうだな。なら、誰なんだ? ケビンは。そう言えば、七瀬さんは以前、国の手ごまだったんだっけか。なら、ケビンもその一人なのか……?
「わ、私、コンビニに行ってきます!」
駄目だ。と、止める。美雨さんを助けに行くため。と彼女は言うだろから、僕から先に言っておく。確実に言っておく。一言でいいんだ。
「いや、僕が行く」
そう言って、晴ちゃんにはここに居るように言った。
でも、と。止められようと何度もしたが、無理やり僕が言った。戻ってきたら、説教でも何でもしてくれ。今は、美雨さんの安否が最優先だ。ーー
「おい、ケビン、こんな事に何の意味があるんだよ!」
「分かってねえな。美雨と晴を一緒にしてたらな、救えるもんも救えなくなるんだよ!」
「何わけのわかんねえこと言ってんだよ! その理由を言えって言ってんだよ!」
「今は、言えない。だが、いずれ必ず話す。その為には、伊勢谷は排除する存在なんだよ! わかってくれ、C!」
「いいや、わかんねえな。今のあたしはあいつらの仲間だ! お前なんかの指図は受けないし、あいつらに手出しもさせねえ!」
何やら、うす暗い場所での口論。その口論は、夜の商店街に、響き渡った。誰も止めようとしない。まるで、見えてないかのように。
「C、そこまで落ちぶれたか。今のお前に必要なのは、仲間じゃない! 世界のために人を殺す覚悟だ!」
口論の内容は、わけのわからないものだった。殺す。倒す。消す。いずれにせよ、怪しげな雰囲気だった。
「ああ、そうだよ。落ちぶれたよ。でもな、あいつは初めて信じようって思った仲間だ! そんな奴を、殺させやしねえ!」
駆け出す七瀬。そして、それを追いかけようとするも、足が動かないケビン。
「……くっ。なぜだ。お前さえ協力してくれれば……」
協力……? 何をだ?――
~コンビニ~
「おでん、まだですかね。そろそろ、帰らないと」
コンビニで、おでんを待つ美雨さん。なぜか、おでんが渡されないらしい。というより、コンビニ自体に人影がないという。一体、何故なのか。
「――けろ」
コンビニの中に居ても響いてくるほどの大きい声。しかし、何を言っているのか。それはまだはっきり聞こえない位置からだ。
「逃げろおおおおおおおおおお!! 美雨ううううううううう!!」
「逃げろって……この声、七瀬……!?」
戸惑う美雨。しかし、一向に動こうとしない。それはなぜなのか。おそらく、おでんを待ち続けているんだろう。
「おでんなんて後にしろ!! 今すぐそっから離れろ美雨! 爆発するぞ!」
「ば、爆発!?」
しかし、外にまだ、七瀬の姿はない。おそらく、見えない範囲から叫ばいけなければいけないほどに時間がないのだろう。それに反応するように、美雨さんも足を動かす。走るではなく、ヘッドスライディングで飛び出る。走るより、こちらのが間に合う。という判断だろう。その判断は正しかったようで、美雨さんがコンビニから出てすぐに、ボン。という音とともに、コンビニが炎に包まれる。
「はあ。はあ……ま、間に合ったか……」
先程から、叫んでいた七瀬さんが、到着する。そして、美雨さんは驚くことを言った。
「一体何なんですか! 教えてくれたのは感謝します! おでんどうしてくれるんですか!!!」
かたくなにまでおでんにこだわる美雨さん。一体、おでんに何があるんだ。
「すまない、美雨……もう少し早く着たかったんだがな……」
話がかみ合わない。いがみ合う二人。なぜだろうか、途中から、おでんの話に変わっていた。いや、そこじゃねえだろ! 目の前で店爆発したんだぞ!?
「おでんの具は、こんぶ、ちくわ、餅巾着でしょうが!」
「ちげえ! 大根、肉、肉だ!」
同じことをに二回言わんでよろしいです。
「って、そうじゃねえ。今はそんなこと言ってる場合じゃねえ。早く戻るぞ!」
「な、何を慌ててるんです……」
「政府が動き出した。晴が今いるが、逆に言えばあそこにいるのは晴だけだ。命の保証が出来ねえ」
僕が離れたのが逆に追い詰められたようだ。電話をする七瀬さん。相手は、僕だ。
「伊勢谷! すぐ戻れ、話は後だ!」
『え、えっ!?』
「お前のせいで晴が死んでもいいのか!?」
『な、何をいって……』
「戻れって言ってんだよ!」
『わ、わわ、わかった!』
引き戻す僕。話は後。そう言われ、戻された。くっそ。一体なんだって言うんだ。
(ケビン、これはお前の命令か……?)
急いで戻る。全力疾走で。
『お前、ハルトさんに言われたんだろ?』
「え?」
何を? という顔をしている(というのを分かっている前庭の)と、彼女は、お前なぁ……と言ってきたが、本気でわからない。何のことだろうか。
『聞いてないか? ジャンヌの遺産のありか』
ジャンヌの遺産……あっ。思い出した。確か、あの時――
「慎二、ジャンヌの遺産は、すべての始まりの場所にある」
「……?」
と、言っていたのを思いだす。それを話すと、彼女は、「なんだそれ」というのを5回繰り返した。いや、確認にしては多いぞ。一回でOKだぞ。あえて声に出して突っ込まない。
『んで、今何処だ? お前の家か?』
「ま、まあ。終電逃したから――」
『え? 何? 終電逃したの、馬鹿じゃねえの?』
うざすぎワロタ。笑うならまだわかる。さすがに草を付けるのはどうかと。ちなみに、草を生やし過ぎると恋愛対象にされなくなるらしいぜっ! というのをスレで見たことある。本当だろうか。そうだ、今、試してみよう。
「うwwwwざwwwwすwwwwぎwwww」
『……』
返事はない。あ、あれ?
『……死ね』
はい。死ね、いただきました。今ので恋愛対象から外されただろうけど、関係ないでござるwwwwww友達すらいないでござるからなwwwwwwwwwww
草はやすしかない。いっそ、自暴自棄になるか。
『取りあえず……明日朝一出勤だ。ジャンヌの遺産の回収が任務だからな。ちょいと遠くに行くぞ』
「え?」
『え? じゃねえ。北海道だよ。でっかいどう』
……あ、あの。急にシャレを挟まれましても……
『な、なんか言えよ! 恥ずかしいだろ!』
草はやしてる時点で人間として恥ずかしいんだよなぁ……あっ、これは僕の持論であってマジレスじゃねえから。決して恨まないでくれよ!
『とりま、北海道だ。晴は行かねえけどな』
「なんで晴ちゃんは?」
『あいつは忙しいんだよ』
ああ。そう言えば、もう社長業やってるんだった。そりゃ忙しいよな。
『美雨も行くぞ。とりあえず、伝えることは伝えたんだ。準備しとけ?』
了解と言って、電話を切ったのはいいものの……いきなりすぎるわっ!!! まさか、父さんの耳元でささやいたことにこんな意味があるとは……やっぱあのじいさん面倒事押し付けていったな!? ちゃんと仕事しろ!!
とまあ、準備だよな。……父さんにもらった銃と、何がいるんだろう。あ、金か。いくらいるんだ……って、違う。金の前にパスポートだ。あったっけ……
と、準備していると、チャイムが鳴った。
『もしもーし』
急いでドアを開けに向かう。その途中で、こけた。が、無事にたどり着いた。(無事とは言ってない)ガチャ。と、ドアが開いていたのに気付き、中に入ってくる。ドロボおおおおお! なんてやるのはやめとこう。
「君、伊勢谷君だよね?」
「は、はい……」
誰だ……? 印象深い星形のサングラス、そして、フランスパンのプリントされたTシャツを着た明らかな不審者。怪しすぎる。というか、これを不審者と言わずなんという。そんな、完成された不審者が目の前に居る。お巡りさん、こいつです!
「おっと、通報はよせ。俺は、れっきとしたハルトの親友だ」
えっ? そんなのいたって聞いたことないけど。
「とりま、今、ジャンヌの遺産の任務任されてるだろ?」
なんでそれを? おかしい。言った覚えはないし、聞かれた覚えもない。こいつ、いったい何者なんだ?
「話は、晴ちゃんから聞いている。俺は、ケビン。フランスを愛する男、ケビン・アルトベルトだ。」
クラッカーみたいな名前しやがってええええええ!! と、そこじゃない。晴ちゃんから聞いたって事は、信用していいのか……?
「とりま、ジャンヌの遺産専門の勇者ってとこだな」
都合が良すぎないか? それは。ジャンヌの遺産って、そもそもなんだよ……
「ジャンヌの遺産ってのはな、ジャンヌが使ったとされる特殊な箱の通称だ」
んだよ、それ。胡散臭いにもほどがあるだろ。
「そいつさえあれば、願いが何でも叶う。だから、それを回収せにゃならんのだ」
うっわ、痛すぎ。なんだよそれ。SFの見すぎ。それと、そのサングラスどうにかならないんですか? 見てると笑いしかないんですが。マジでやめてほしい。いい意味で。
「ま、そいつを巡って起こりそうな戦争を事前に止めるってわけだ」
もしかして、あの夢ってこうなった後の話なのか? いや、都合良すぎか。それは。
「ジャンヌの遺産がある限り、俺たちは国を追われる可能性もある。この国が、人間相手に自衛隊。なんて話もあり得るぞ」
ほんとにあの夢の通りじゃないか……つまり、ああならんように止めろって事か。よし、いいだろう。やってやろうじゃないか。あんな未来嫌だしな。
「やってくれるか?」
「はい」
と、答えると、車出すぞ。と言って、ケビンのと思われる車に乗せられた。あ、あれ? 逃げるタイミング逃した?
もしかして、このまま連れてかれる……!?
連れて……行かれないっ!
助かった。
「君はいったいどんなことを想像したんだい……?」
え、いや。ナンデモナイデス。
「まあ、いいや。とりあえず、飛ばすぞ」
一気にスピードを出す。これスピード違反で捕まらねえの!?
「大丈夫。これ、体感速度だけだから」
えっ……? ……よーく見てみる。ふざけんな! これ、ペダル式の手動じゃねえか!!! んなもん疲れるわ!
「大丈夫。こぐのは俺だけだ」
いや、おかしいだろ!? 普通の車で行けよ!
「すまんな。あいにく、免許なんてもってなくてな」
取れよおおおおおおおおお!?!? 免許取れよおおおおおおおお!?!?
それくらい簡単だろ。というか、この車で高速とか入れるのか……?
「取りま、全力疾走だ!」
えええええええ!?!?
速い。すごい速い。スポーツカー並みのスピードが出てる。
「はあ、はあ。水、水飲ませてくれ」
あっ。うん。……あれ? 止まるんじゃないの?
「違う! 飲ませてくれ!」
アッハイ。と言って、飲ませた。そしてまたスピードを出す……意味ねぇじゃん! でもまあ、もうすぐってとこまで来た。
「うおおおおおおおおおおお!!」
やべえ、やべえよ。傍から見たらキチガイだよおぅ!
もうまじ無理ィ……水のも。
「ふう……着いたぞ。降りろ」
早えよ。文面で言えば約300か400……その間によくわからん移動法でよくわからん形でついた。やばすぎる。こいつ、やばい。キチガイそんな四文字じゃ収まらないくらいのガイジ。もうそれすら褒め言葉じゃ無いだろうか。
「お、なんか褒められてる気分だな。はは」
ファ!? 読心術ってそんな簡単なもんなの!? ……いや、今のは普通にそんな気配を感じ取っただけだろう。うん。そうだろう。そうじゃなきゃ怖い。
「いや、読心術はハルトの部署じゃ基本だぞ? 習わなかったか?」
嘘だろ!? 習ってねえよ! というか、読心術が基本とかキチガイ通り越してただの変態じゃねえか! もう、変態まみれじゃないか。うちの部署。どうしてくれんだよ。僕だけ健全じゃないか。いや、間接的にだけど。間接的にだけど。大事なことなので2回言っておく。あっ、別に変態紳士なだけだからな! 勘違いすんなよ!
「いや、変態紳士って自分で宣言する時点ですでに紳士じゃない」
ネタにマジレスとかありえないんですが。どうしてくれんですか。
「とりま、入ろうぜ」
ドアを開ける。晴ちゃんが真っ先に出てくる。あれ? 美雨さんは?
「ねえ、美雨さんは?」
「あ、お姉ちゃんは……あれ?」
いや、知らんのかい。まあ、いいや。多分、コンビニだろう。そうだろう。そんな単純な脳であってほしい。じゃなきゃ困る。また誘拐されたんじゃないかって。
「流石に誘拐はないですよ。あはは」
と、そんな冗談半分なこと言ってると、当然、そんな話すんじゃねえ。と、七瀬さんに怒られてしまった。
「全く……そんな不吉なこと言うんじゃねえ。コンビニだよ。あいつは」
で、ですよね。じゃないと困ります。泣きます。
(……美雨は居ないのがちょうどよかったな。それにしても、何考えてんだ? ケビンは。こんなの、計画に入ってないぞ?)
ケビンは、七瀬さんを見ると、何やらにやにやし始めた。
「今君不審者だと思った?」
と、近づいていく。あからさまに不審者だ。これ、止めなくていいんですかね。
「――だ」
……? 一体、何を言ったんだ? 彼が何かをつぶやくと、七瀬さんの表情が変わった。少し、驚いているような表情だ。何を言われたんだ……?
「よーし。伊勢谷君! パーティーだ!」
えっ? な、なに? いきなり。
「何って顔するなよ。もちろん、新生YIK結成記念のパーティーじゃないか」
そ、そうなのか。って事は、さっきのはサプライズについての会話かな? そうなのかな?
(C、余計なことは喋るなよ)
(わーったって。何回も言うなよ)
でも、なんだろう。この変な感じは。まあ、そんなことよりパーティーだ。美雨さんマダー?
「あっ、お姉ちゃん呼び戻しますね」
「いや、別にあいつの好きなタイミングで帰ってきても構わないと思うぞ」
「そ、そうですか?」
いや、この変な感じは違和感じゃない。確実だ。何故さっきから美雨さんが居ない状態にこだわる? それに、パーティ―と言っても急すぎる。さっき、晴ちゃんですら初めて言われたような顔をしていた。社長通さずに企画するはずがない。
「おっと、ちょっと外出てくるな。行くぞ、えっと……」
「七瀬です」
「おし、行くぞ、七瀬君」
何故だ、何故七瀬さんを連れていく? 何かある……?
と、言って、すぐさま何やら急いだ様子で外に出ていった。……考え過ぎかな。多分、コンビニで色々買ってくるんだろう。全く、準備が遅いじゃないか。と、言っている間に、晴ちゃんと二人になってしまった。しかし、晴ちゃんが先に口を開く。しかし、その口は不安そうだった。
「ねえ、伊勢谷さん。七瀬さんはいいの。あのケビンって人……『誰』?」
え……? そ、そんなはずないだろ。知ってるはずだろ?
「何言ってんだよ。今回の件のスペシャリストって……」
「今回の件って何ですか!? その話、詳しく話して下さい!」
晴ちゃんは、何も知らない? いや、ケビン自体が部外者なのか? それに、七瀬さんはどうも初めて会ったような顔ではなかった。なんだ? 一体、何が起ころうとしているんだ?
「話って……ジャンヌの遺産の回収任務だよ」
「ジャンヌの遺産ってなんですか……?」
えっ? いや、こっちが聞きたいくらいなのに。何故、知らないんだ? ああ。そうか。僕を騙そうとしているんだな。はは、騙されないぞ。晴ちゃん。
「それに、ケビンって人も本当に知りません」
嘘だといってくれよ。なら、何のために僕に接触してきたんだ? たまたま……そんな単純なものじゃないだろうし。
「私たちの任務は、ブラック企業の殲滅のはずです。そんな、ジャンヌの遺産の回収なんてやりませんよ?」
そういえば……そうだな。なら、誰なんだ? ケビンは。そう言えば、七瀬さんは以前、国の手ごまだったんだっけか。なら、ケビンもその一人なのか……?
「わ、私、コンビニに行ってきます!」
駄目だ。と、止める。美雨さんを助けに行くため。と彼女は言うだろから、僕から先に言っておく。確実に言っておく。一言でいいんだ。
「いや、僕が行く」
そう言って、晴ちゃんにはここに居るように言った。
でも、と。止められようと何度もしたが、無理やり僕が言った。戻ってきたら、説教でも何でもしてくれ。今は、美雨さんの安否が最優先だ。ーー
「おい、ケビン、こんな事に何の意味があるんだよ!」
「分かってねえな。美雨と晴を一緒にしてたらな、救えるもんも救えなくなるんだよ!」
「何わけのわかんねえこと言ってんだよ! その理由を言えって言ってんだよ!」
「今は、言えない。だが、いずれ必ず話す。その為には、伊勢谷は排除する存在なんだよ! わかってくれ、C!」
「いいや、わかんねえな。今のあたしはあいつらの仲間だ! お前なんかの指図は受けないし、あいつらに手出しもさせねえ!」
何やら、うす暗い場所での口論。その口論は、夜の商店街に、響き渡った。誰も止めようとしない。まるで、見えてないかのように。
「C、そこまで落ちぶれたか。今のお前に必要なのは、仲間じゃない! 世界のために人を殺す覚悟だ!」
口論の内容は、わけのわからないものだった。殺す。倒す。消す。いずれにせよ、怪しげな雰囲気だった。
「ああ、そうだよ。落ちぶれたよ。でもな、あいつは初めて信じようって思った仲間だ! そんな奴を、殺させやしねえ!」
駆け出す七瀬。そして、それを追いかけようとするも、足が動かないケビン。
「……くっ。なぜだ。お前さえ協力してくれれば……」
協力……? 何をだ?――
~コンビニ~
「おでん、まだですかね。そろそろ、帰らないと」
コンビニで、おでんを待つ美雨さん。なぜか、おでんが渡されないらしい。というより、コンビニ自体に人影がないという。一体、何故なのか。
「――けろ」
コンビニの中に居ても響いてくるほどの大きい声。しかし、何を言っているのか。それはまだはっきり聞こえない位置からだ。
「逃げろおおおおおおおおおお!! 美雨ううううううううう!!」
「逃げろって……この声、七瀬……!?」
戸惑う美雨。しかし、一向に動こうとしない。それはなぜなのか。おそらく、おでんを待ち続けているんだろう。
「おでんなんて後にしろ!! 今すぐそっから離れろ美雨! 爆発するぞ!」
「ば、爆発!?」
しかし、外にまだ、七瀬の姿はない。おそらく、見えない範囲から叫ばいけなければいけないほどに時間がないのだろう。それに反応するように、美雨さんも足を動かす。走るではなく、ヘッドスライディングで飛び出る。走るより、こちらのが間に合う。という判断だろう。その判断は正しかったようで、美雨さんがコンビニから出てすぐに、ボン。という音とともに、コンビニが炎に包まれる。
「はあ。はあ……ま、間に合ったか……」
先程から、叫んでいた七瀬さんが、到着する。そして、美雨さんは驚くことを言った。
「一体何なんですか! 教えてくれたのは感謝します! おでんどうしてくれるんですか!!!」
かたくなにまでおでんにこだわる美雨さん。一体、おでんに何があるんだ。
「すまない、美雨……もう少し早く着たかったんだがな……」
話がかみ合わない。いがみ合う二人。なぜだろうか、途中から、おでんの話に変わっていた。いや、そこじゃねえだろ! 目の前で店爆発したんだぞ!?
「おでんの具は、こんぶ、ちくわ、餅巾着でしょうが!」
「ちげえ! 大根、肉、肉だ!」
同じことをに二回言わんでよろしいです。
「って、そうじゃねえ。今はそんなこと言ってる場合じゃねえ。早く戻るぞ!」
「な、何を慌ててるんです……」
「政府が動き出した。晴が今いるが、逆に言えばあそこにいるのは晴だけだ。命の保証が出来ねえ」
僕が離れたのが逆に追い詰められたようだ。電話をする七瀬さん。相手は、僕だ。
「伊勢谷! すぐ戻れ、話は後だ!」
『え、えっ!?』
「お前のせいで晴が死んでもいいのか!?」
『な、何をいって……』
「戻れって言ってんだよ!」
『わ、わわ、わかった!』
引き戻す僕。話は後。そう言われ、戻された。くっそ。一体なんだって言うんだ。
(ケビン、これはお前の命令か……?)
急いで戻る。全力疾走で。
0
あなたにおすすめの小説
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる