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引きされ
リターンフューチャー
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「伊勢谷殿! これを!」
渡された箱。それはーー間違いなく、ジャンヌの遺産だった。
「半蔵てめぇ!」
「うがぁぁぁぁぁ」
半蔵をケビンの持つナイフが貫く。
「伊勢谷殿、それで、世界を」
「ざけんじゃねぇぞぉ!」
半蔵が‥…やられた‥…
箱を手にした瞬間、頭痛が走った。
これはーー
一瞬瞬きをした。瞬間だった。
ーー世界がーー再構築された気がした。
「? 伊勢谷殿?」
「は、半蔵!? お、お前、生きてるのか!?」
「やだなぁ、生きてるでござるよ。ほら、見ての通りピンピン!」
「ピンピン! じゃないだろ。さっき階段から落ちたの誰だっけ?」
「み、三国殿、それは言わない約束‥…」
これはーー僕が望んだ世界なのか?
ケビンの姿が見当たらない。
日本支部の面子が着々と揃う。だが、半蔵以上にいてはいけない人物がいたのが確かだった。
「伊勢谷さーん!」
「晴‥…ちゃん‥…?」
確かに、晴ちゃんだった。間違えるわけがない。あの笑顔、あのしゃべり方、あの息づかい。忘れるわけがない。
確かに、あのとき殺されたはずだーー
「? どうしたんです?」
これはーーいったい?
落ち着けーー落ち着くんだーーこれは、幻想だ。そうに違いない。そうだ…絶対に…そうなんだ…
『うふふ、プレゼント、気に入ってもらえた?』
「だ、誰だ!」
『ジャンヌ・ダルク。知ってるでしょ?』
おかしなことを言う声だった。ジャンヌ・ダルク? 生きてたらもっとおかしい。
「ジャンヌ・ダルクは死んでいる!」
『そう。私は死んだ。でも、箱に封印された』
箱ーーそうだ! 僕は半蔵から遺産を渡されてーー
『やっと理解出来たみたいだね。そうだよ。私は本物。ただ、あなたに魔法をかけて上げただけ』
「魔法…これがか?」
『そう。あなたの望んだ世界』
確かに、これは僕が望んでいた未来だ。でもーー分かることがある。それはーー
「みんな既に死んでるんだ!! 生きていたら気持ち悪い!! こんなの、殺されるより酷くて醜い!」
そうだ。いくら望んだ世界だとしても、晴ちゃんも半蔵も既にケビンに殺されている。
だからーー
「この世界はいらない!!」
『なら、探してよ。自分で、未来を。あなたに渡したのはそんな力のはずよ』
「え……?」
随分、あっさりしていた。気持ち悪いほどに。
未来をーー探す力ーー?
また、頭痛だ。
でも、目の前に広がっていたのはーー
「な、なんだこれ!!」
『それはあるかもしれない未来。あってもおかしくない未来。様々な世界線だよ。あなたは、その中から最善の結末を選ぶ権利を得たの』
リターン・フューチャー。彼女はこの力をそう呼んでいた。あるかも知れない世界線をこの世界線に呼び込むことで瞬間的に世界線移動を行う力。
言わば、力の天秤だ。
Aの世界線が今いる世界線であるとすれば、あるかもしれないB.C.Dーーの世界線の中から一つを選び出し、Aの世界線に「自分にとって都合のいい結末」のみをコピーする。それがこの力の正体だったーー
射撃にリターン・フューチャーを乗せることができるという。
それは、射撃を打った後、銃弾を別世界戦へ飛ばした後、再び元の世界線に戻すことで《見えない銃弾》を実現出来るというものだ。
物を別の世界線へ飛ばすことも出来るのがリターン・フューチャーだ。
しかし、デメリットもある。飛ばしたものから約90秒間のクールタイムを置かないと戻せないというものだ。これは、戦場だと結構痛い。
だが、今ケビンにそれをやるしか、この戦場の戦い終わらせる方法はない。
「ふう……身心弾!」
身心弾。七瀬さんに教わった最終兵器。心身を集中させ、時間に関係なく弾を発射するというものだ。
つまり、銃身に弾を置きつつ、これにリターン・フューチャーを乗せることにより、クールタイムを実質的に無視することが出来る。何故なら、弾は発射されてない。つまり、2発打ち込める。
1発のフェイクから、後ろから迫るもう一打。これは案外避けにくいものだ。
今、それを実際にやった。
「ちぃ! おせぇ弾にやる気なんてねぇんだよ!」
直後、背後から音速の弾が放たれる。
世界線を飛ばすことにより、1度無かったことにされる。そして、世界線の中から、《音速で放たれていたら?》という事実だけを引っ張ってくることで出来る能力だ。
実際、その弾は避けることが無理だろう。
「ぐふぅ…」
僕の身心弾がケビンを貫いた。しかし、ケビンはそれでも僕達を殺そうとする。
「お、俺はなぁ…別に、どうでもいいんだよ…お前らが、野望を叶えようがどうかなんて……」
それは、多分紛れもない本音だった。
「でもなぁ、何としても手に入れたかった……あいつが手にした、あいつが望んだ、その、箱を……ぐふっ……」
日本人への復讐。多分、それはケビンが苦し紛れに吐いた戯言だろう。しかし、今のケビンの言っていることは、何も変えようのない、本音だろう。
「だからよぉ、お前は、その箱で、望んだものを……手に、いれろ……」
そして、ケビンは息を引き取った。
僕に、本音を伝えながら。
「……終わりましたね」
「いや、まだだ」
「え?」
「これから先は僕の私情だ。付いてきてくれるなら構わない!」
三国さん、七瀬さん。二人とも頷いた。
「お前の野郎としてることっつったら一つだろうな。この馬鹿げた戦争を止めるってな!」
「うむ。なら吾も協力する。三国流の流儀に乗ってな」
だがーー
ざくり。
その鈍い音は、僕の胸からだった。
「よくもーーよくもケビンを!!」
「やめろ、ハイネ!! もう終わったんだ!!」
「ケビンは私のーー私のーー父親だぁぁぁぁ!」
その場の人間すべてが、静まり返った。
渡された箱。それはーー間違いなく、ジャンヌの遺産だった。
「半蔵てめぇ!」
「うがぁぁぁぁぁ」
半蔵をケビンの持つナイフが貫く。
「伊勢谷殿、それで、世界を」
「ざけんじゃねぇぞぉ!」
半蔵が‥…やられた‥…
箱を手にした瞬間、頭痛が走った。
これはーー
一瞬瞬きをした。瞬間だった。
ーー世界がーー再構築された気がした。
「? 伊勢谷殿?」
「は、半蔵!? お、お前、生きてるのか!?」
「やだなぁ、生きてるでござるよ。ほら、見ての通りピンピン!」
「ピンピン! じゃないだろ。さっき階段から落ちたの誰だっけ?」
「み、三国殿、それは言わない約束‥…」
これはーー僕が望んだ世界なのか?
ケビンの姿が見当たらない。
日本支部の面子が着々と揃う。だが、半蔵以上にいてはいけない人物がいたのが確かだった。
「伊勢谷さーん!」
「晴‥…ちゃん‥…?」
確かに、晴ちゃんだった。間違えるわけがない。あの笑顔、あのしゃべり方、あの息づかい。忘れるわけがない。
確かに、あのとき殺されたはずだーー
「? どうしたんです?」
これはーーいったい?
落ち着けーー落ち着くんだーーこれは、幻想だ。そうに違いない。そうだ…絶対に…そうなんだ…
『うふふ、プレゼント、気に入ってもらえた?』
「だ、誰だ!」
『ジャンヌ・ダルク。知ってるでしょ?』
おかしなことを言う声だった。ジャンヌ・ダルク? 生きてたらもっとおかしい。
「ジャンヌ・ダルクは死んでいる!」
『そう。私は死んだ。でも、箱に封印された』
箱ーーそうだ! 僕は半蔵から遺産を渡されてーー
『やっと理解出来たみたいだね。そうだよ。私は本物。ただ、あなたに魔法をかけて上げただけ』
「魔法…これがか?」
『そう。あなたの望んだ世界』
確かに、これは僕が望んでいた未来だ。でもーー分かることがある。それはーー
「みんな既に死んでるんだ!! 生きていたら気持ち悪い!! こんなの、殺されるより酷くて醜い!」
そうだ。いくら望んだ世界だとしても、晴ちゃんも半蔵も既にケビンに殺されている。
だからーー
「この世界はいらない!!」
『なら、探してよ。自分で、未来を。あなたに渡したのはそんな力のはずよ』
「え……?」
随分、あっさりしていた。気持ち悪いほどに。
未来をーー探す力ーー?
また、頭痛だ。
でも、目の前に広がっていたのはーー
「な、なんだこれ!!」
『それはあるかもしれない未来。あってもおかしくない未来。様々な世界線だよ。あなたは、その中から最善の結末を選ぶ権利を得たの』
リターン・フューチャー。彼女はこの力をそう呼んでいた。あるかも知れない世界線をこの世界線に呼び込むことで瞬間的に世界線移動を行う力。
言わば、力の天秤だ。
Aの世界線が今いる世界線であるとすれば、あるかもしれないB.C.Dーーの世界線の中から一つを選び出し、Aの世界線に「自分にとって都合のいい結末」のみをコピーする。それがこの力の正体だったーー
射撃にリターン・フューチャーを乗せることができるという。
それは、射撃を打った後、銃弾を別世界戦へ飛ばした後、再び元の世界線に戻すことで《見えない銃弾》を実現出来るというものだ。
物を別の世界線へ飛ばすことも出来るのがリターン・フューチャーだ。
しかし、デメリットもある。飛ばしたものから約90秒間のクールタイムを置かないと戻せないというものだ。これは、戦場だと結構痛い。
だが、今ケビンにそれをやるしか、この戦場の戦い終わらせる方法はない。
「ふう……身心弾!」
身心弾。七瀬さんに教わった最終兵器。心身を集中させ、時間に関係なく弾を発射するというものだ。
つまり、銃身に弾を置きつつ、これにリターン・フューチャーを乗せることにより、クールタイムを実質的に無視することが出来る。何故なら、弾は発射されてない。つまり、2発打ち込める。
1発のフェイクから、後ろから迫るもう一打。これは案外避けにくいものだ。
今、それを実際にやった。
「ちぃ! おせぇ弾にやる気なんてねぇんだよ!」
直後、背後から音速の弾が放たれる。
世界線を飛ばすことにより、1度無かったことにされる。そして、世界線の中から、《音速で放たれていたら?》という事実だけを引っ張ってくることで出来る能力だ。
実際、その弾は避けることが無理だろう。
「ぐふぅ…」
僕の身心弾がケビンを貫いた。しかし、ケビンはそれでも僕達を殺そうとする。
「お、俺はなぁ…別に、どうでもいいんだよ…お前らが、野望を叶えようがどうかなんて……」
それは、多分紛れもない本音だった。
「でもなぁ、何としても手に入れたかった……あいつが手にした、あいつが望んだ、その、箱を……ぐふっ……」
日本人への復讐。多分、それはケビンが苦し紛れに吐いた戯言だろう。しかし、今のケビンの言っていることは、何も変えようのない、本音だろう。
「だからよぉ、お前は、その箱で、望んだものを……手に、いれろ……」
そして、ケビンは息を引き取った。
僕に、本音を伝えながら。
「……終わりましたね」
「いや、まだだ」
「え?」
「これから先は僕の私情だ。付いてきてくれるなら構わない!」
三国さん、七瀬さん。二人とも頷いた。
「お前の野郎としてることっつったら一つだろうな。この馬鹿げた戦争を止めるってな!」
「うむ。なら吾も協力する。三国流の流儀に乗ってな」
だがーー
ざくり。
その鈍い音は、僕の胸からだった。
「よくもーーよくもケビンを!!」
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「ケビンは私のーー私のーー父親だぁぁぁぁ!」
その場の人間すべてが、静まり返った。
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