引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引きされ

木山春斗の勇者録

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 ……この世界は退屈だ。
 狭すぎる。広すぎる。そんなの、どうでもいい。とにかく、満足できればいい。満足できる世界がないのなら――自分で作ればいいじゃないか、

「ケビン、行くぞ」
「あいよー」

 木山春斗――僕は今、旅をしている。自分探しって言うか、なんというか。とにかく、自分探しだ。

「調整、終わったのか?」
「もちろん」

 僕は人助けをして旅に出ている。人を助けられれば、それでいいのだから。

「じゃ、俺は先言ってるぜ」
「ああ。じゃあ、向こうで会おう」

 そう言って別れたのは、ケビン。ケビン・アルトベルト。
 彼は僕がフランスに立ち寄った時に出会ったハーフである。と、行ってもフランスとアメリカのハーフなのだが……どうやら母親が日本に居た時期があったらしく、僕と何ら変わりなく会話できるし、外国に行くときは心強い味方でもある。

「さーてっと……お仕事お仕事」

 今日の仕事は、麻薬の取り締まりである――

「おい、はやくよこせ!!」
「あー、すいませんねえ……あいにく、うち、宅急便なもんでね」
「何ふざけて――」
 
 ケビンの銃がうなりをあげる。

「次、無駄口叩いたら次は命取るぞ」
「す、すいませんでしたあああああああああ」

 と、ようやく僕は合流する。

「おう、まってたぜ」
「ごめん。遅れた。で、どうだ?」
「ばっちりだ」

 現行犯。僕たちは世界中の特務機関、「Redfox」から命を受けているから、現行犯で取り押さえられる権利がある。

「じゃ、俺は行くぜ」

 ケビンが向かった先は、南にある港だった――

 ケビン・アルベルト。僕の相方で、信頼するべき同僚だ。外国に行く時も心強い見方だしな。
 彼はフランスとアメリカのハーフなのだが、親が日本にいた期間があったらしく、日本語がペラペラな訳だが…勿論、フランス語、日本語、英語と…とにかく万能なのだ。
「さて…次の仕事か」

次の仕事はーーヤクザの取締か。
 こいつは骨が折れる。ケビンは今港に向かってるしな。
「はぁ…仕方ない…」
 特殊なチューンを施した俺のイーグルを見つめながら、何かを思う。
「……大丈夫、死ぬわけないからな」
 遺言……そんなもの要らないはずだーー


「おら、あんさん、覚悟できてんでしょうね?」
「か、覚悟ってなんだよぉ!」
「指詰めですよ。知ってるでしょ?」
「い、嫌だぁぁぁぁ」
「入った時点でーー」

 バン。
 火薬の匂いと発泡音が鳴り響く。
「な、なんだ!」
「Firefoxだ。現行犯で逮捕する」
「んだと、舐めやがってぇぇぇ」
 バン。
 二撃目は、容赦なく心臓を貫いた。
「抵抗するからですよ……さて、お前らはどうする」

 周りは黙り込む。
「全員逮捕だ」

 こうして、任務はひとつ終わった。
 視認が出た場合はFirefox内で機密に処理される約束だ。
 そしてーー

僕とケビンは今、アメリカに旅立とうとしていた。

 いよいよ旅立ちだ――!

「あ、そうだ」
「え?」
「飛行機、普通のじゃないからな」
「え?」

 指をさされた先に待っていた航空機――って、あれ、戦闘機じゃないか! 何がよき空の旅を。だ!!

「で、お前、別れは済んだのか?」
「ああ。済んだよ」
「いつ何があるかわからんからな」
「ああ。だから伊勢谷家に引き取ってもらったんだ」
「いつ死んでもいいように――か……」

 この辺は、すごくシビアな話だ。それ故に、あまり触れ行ってはいけない。

「んじゃ、行こうか」

 旅たちの地、アメリカ。そこに招待された経緯は、日本での活躍が認められてのことだ。

「三年か……もう一回行くか?」
「いいよ。そんな心配しなくても、慎二なら大丈夫さ」
「そうお前がいうならそうなんだろうな」

 伊勢谷家に引き取ってもらった実の子。慎二。あいつには、普通の生活を送って欲しい。だからこそ、引き取ってもらう必要があった。

「あいつには何もしてやれなかったからな……」
「なら連れていけばどうだ」
「それだとあいつのためにならない」
「それは駄目だ」
「と、いうと?」
「小さいうちから色々な社会の裏を見せたらあいつのためにならない」

 というのは実際には違う。あいつには、普通に過ごして普通に成長してほしい。俺みたいな、適当な奴にならずに……

……なんとか、アメリカについた。
 それまでが苦悩の塊だった。
 大鳥に追われ、サメに食われかけ、散々だ。これも全てケビンの荒い運転のおかげだ。呪うぞてめえ。
 まあ、そんな冗談は良いさ。どうでもね。
 問題は、アメリカに来て早々任務を言われたことにある。
 ああ、もう最悪だよ。こんなんなら日本で慎二といればよかった……まあ、なんて冗談はさておき、問題はこれからだ。

「ケビン出来るか?」
「おう、勿論」

 ゲリラ隊の鎮圧。アメリカに来て早々これだ。
「じゃあ、いくぞ」
「おう」

 重火器の匂いで戦場たたり一帯が化す。

 「イーグルの初陣だ、狩らせてもらうぞ!!」

 そう言って鎮圧し続けること30時間。最後の一撃、敵の親玉の足に入れる。

「こ、これでーー」

 その時だった。

 ばん。鳴り響く銃声。俺のーー心臓を貫いていた。

「へっ、これで、最後ーー」

 ケビンのライフルの音で戦場の幕が下りた。


 この世界にはなんでも叶う箱が存在するらしい。
 その箱は聖女の血を浴び、聖女の最後を見届けたとされている。
 禁断の箱ーーパンドラ。そうとも言われている。
 
 しかし、その代償は自分自身の存在の在り方だという。持ち主はーー確実に死ぬ。

「復活させてやるさ。俺が、フランスの地でな」
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