引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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「ケビンもーータイムリープを?」
「ああ……長く、辛い旅だった」
「どれくらい?」
「ハルトを何回も殺したよ。救えるとわかってても、救えぬ運命だと。手を差し伸べても、拒否されるのだと」

 ケビンの表情が、これまでの葛藤をより現実へ呼び起こしていた。

「あいつが死ぬのはいつだって俺が無茶ばっかしたからだった。俺が死ねばいいと思った! でもーー一度お前に殺された時。こいつが俺と契約を求めてきた」
「な、それじゃあ!」
「ああ……俺は既に存在してはいけない存在。一度死んでいる存在なんだ」
「……」

 何も、言えなかった。
 何かをいえば、何かが帰ってくる。そう感じだ。

「だからよ、終わらせようぜ?」
「え……?」
「お前の求めてたものは所詮偶像だ。もう見るのはやめろ」
「で、でも!!」
「人を救うなら! 誰かが犠牲にならなければいけない!」
「ケビン……」 

 僕はだまり込んだ。
 ケビンの呼吸の度に、汗が出た。それは、冷や汗なんかじゃない。ケビンの、今までの経緯を悟ったからだ。

「俺は、いつもお前の前でタイムリープをさせない未来へと導こうとした。でも! 結局はこうなった。こうなってしまったんだ!」

 僕と真逆のことを、続けていたとケビンは言った。

 それでも、僕の偶像は偶像に過ぎない。そう、言いたかったんだと思う。

「始めようぜ」

 そう言って始まった、世界線の修復。あるはずのないものの除去。なければいけないものの修復。そしてーー

「お前はこれから、廃人になるかもしれない」
「それでもいいよ。それが、ケビンの野望だろ?」
「はは、バカ言うな。俺はそんな冗談言わねぇ」
「確かに、ね」

 少しづつ、戻っていく世界。その光景は、崩壊と再生を両方とも内包していた。

「さて、そろそろ別れだ」
「うん。わかってる」
「箱の呪いはお前に一生付きまとう。それでも平気か?」
「平気だよ。だって、ケビンが平気だったんだもん」
「はは、最後に、会えたのがお前でよかったぜ」

 その言葉最後にーー



 世界の修復は終わった。

「……終わった。」

 天使も、ケビンも、父さんも、晴ちゃんも。みんないない世界線。だけど、それでも、僕は勇者であり続けたい。
 木山春斗なんて名乗る必要は無い。
 今ーー堂々と言えるーー

「あー! くっそー! なんでひきこもりの俺が勇者にされたんだっつーのー!!」

 その叫びは、ケビンにも、父さんにも届かないだろう。
 でも、遥か遠く、この声を聞く人は必ずいる。

 僕は、世界を旅することにする。父さんがそうしていたように。


ーーそして、次世代の勇者の時代にーー
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