引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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夢を見るために

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 馬車に揺れながら、神と交わした契約。それは、果たしてどうなるのだろうか。わからない。ただ、私の中の力ではない別の力が私の中に生まれたという事だけははっきりとわかる。
 しばらくしてから、私は疲れて眠りについてしまったらしい。
 その眠りが―――安眠ならばよかった。眠りについた私は、夢を見た。悪夢だ。それも、リリが死んだときの物。それが、永遠と眠る私を縛り付けた。
 繰り返される悪夢。それを見るたびに私の中で何かが壊れていくように見えた。
 
 悪夢にうなされている私を見て、兵士の人がたたき起こした。
 大丈夫かい? その一言と一緒に。しかし、疲れてしまったからか、再び眠りについた。今度は、あの悪夢は見ないだろうと。

 さっきのような悪夢は見なかった。だが、それよりももっと苦しい夢を見た。
 押し寄せる民衆、その民衆は、何かに訴えるように叫んでいた。そして、民衆を押さえつける兵士の姿も。何が起こっているのだろうか。その疑問は、次の瞬間分かった。十字架に張り付けられている少女と、その少女に刃を向ける少女がいた。一人は―――私。もう一人は―――リリだった。彼女は、少し躊躇いながらも、私に刃を突きつけた。その感覚は、夢でもはっきりしていた。夢の中での痛覚共有。それも、神が与えたものだろうか? 刃が突き刺さり、意識が失う私に、兵士がさらに追い打ちをかけた。手に持ってるのは、たいまつだろうか? そして、私の手首を縛り付けていた縄にその火を近づける。

 次の瞬間、私は火に包まれた。その顔は、何かを訴えているように、リリの方を向いていた。そこで、私は目が覚めた。辛すぎたからだ。夢でも、私は親友だと思っていた少女に殺されていた。
 その悪夢が事実だよ。そういうように、神は私に言った。
 
『君が今見たのは、まぎれもない。未来に起こる出来事さ』

 と。未来に起きる出来事―――つまり、私は火あぶりの刑で殺される。だが、逆にこうも言えた。その未来に行きつくまでに、「リリを救える」そうも言えた。
 ならば、夢を見続ければ、そのうち何かがわかる? でも、夢を見るとまたつらい思いをしなければいけなかった。辛かったからだ。次に夢を見たら、恐らく私は自分でその命を終わらせるだろう。そうすれば、リリに会える? いや、駄目だ。それでは、何かがいけない。さっきの未来は、なぜ起きたのだろうか? 思い出せば、あの場にシャルル皇太子らしき人物も見えた。つまり―――私は国を敵に回し、親友にも裏切られる。そういう事だろうか―――? しかし、それが事実だとしても、リリを救えればいい。そう思えた。
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