女装男子の俺と...変態カメラマン?

日向 ずい

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第14号 「俺にしなよ...。」

画面に現れた救世主。 その2

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 琉架は、救急隊の人が病院に着くと貸してくれた服に着替えて、待合室で亜衣希の緊急手術が終わるのを今か今かと待っていた。
「...。......。...っ!?」
琉架は、じっと目を閉じ、まだ自らの身体にこびりついている、生々しい鉄の臭いを捉えながら、何度も何度も亜衣希との思い出に記憶をめぐらせていた。
 そんな時...再度携帯の着信音が静かな病院にうるさく鳴り響いた。
 琉架は、ビックリして咄嗟に思考を止めると、急いでポケットに入れていた携帯の画面を確認した。
 「...また...坂沢...なんで...。(汗)」
 琉架は、出る気などサラサラなかったが、気がついた時には何故か手が勝手に通話ボタンを押しており、坂沢からの電話に応えていた...。そうして、耳に携帯を当てると、コンマ0.1秒とかからずに、騒がしい声が琉架の耳へと入ってきた。
「...も『おい!!!琉架!??お前なぁ~、来るって約束しただろ????...今回は、お前に断る権限ないって言ったじゃん!!!(怒)って......えっ...琉架......泣いてるの...???(汗)...えっ...えっ...ごめん...!!強く言いすぎた...。(汗)俺のところに来るのがそんなに嫌だったなんて...。(汗)』...ちがっ...違うんだ...。確かにそう思う時もあるけど...今は......違う、そんなんじゃない...。(汗)ただ...ただ今は...坂沢の声を聞いていたい...。そう...何故か聞いていたいんだ...。(泣)」
 琉架は、さっきと同様に妙に明るい、でもそれでいて、何処か優しい声色の坂沢の声に無性にも安心感を抱いていた。
 そのため自分でも知らない間に、目から涙を流しており、それを坂沢に指摘され初めて自らの状態に気が付いたのだ。
 琉架はどうしようもない感情に押され、ずっと隠そうとしていた思いに歯止めが効かなくなり、遂には坂沢に弱みを見せていた。
 そんな琉架の様子に、坂沢は琉架の話が終わるまでただじっと押し黙り、先ほどと何ら変わらない声色で優しく言葉を返した。
「...琉架...俺は、エスパーじゃないから、お前が何で困っているのかなんてわからないが...。でもお前が辛いのなら、俺が話を聞く...だって、俺はお前のダチで救いのヒーローだろ???なぁ???だから、俺の前では無理すんなよ!(笑)」
「うっ...坂沢...。...俺の大切な人が...俺がその大切な人を、傷つけてしまった...。...傷つけたんだ...。坂沢...俺はどうしたらいい...??(汗)俺は、この先一体どうしたらいいんだ...???『琉架...お前は...そんな事しない...。お前は、人を傷つけるようなことなんて絶対にしない!!だから、それは事故だ...。お前が、責任を感じる必要は無い...。今まで通りの顔でいればいい。もし...それで何か言われたら、俺に相談してこい!!俺が、何とかしてやるから。』...っ...でも...これは...俺の...『お前の大切な人だって...琉架が自分のせいで...自分のせいでって言ってるの...きっと見なくないと思うぜ???ほら、いつものお前はどうしたよ!!!なぁ!!女子にかっこいいって言われている琉架は、どこに行っちまったんだよ!!!』...うっ...坂沢...俺...俺は...。」
 その瞬間、緊急治療室から処置を終えた医師が静かな足取りででてきた。
 琉架は、医師を目に留めると坂沢との電話も途中だったが、携帯を耳から離して 、慌てた様子で医師の元へと駆け寄った。
「...先生...あの...亜衣希さんは...亜衣希さんは...無事なんですか...!??(汗)」
「...えぇ、なんとか一命は取り留めましたが...その...『そのって...なんですか!???(汗)...亜衣希さんに何かあったんですか!???(汗)』...あっ、落ち着いてください!!...八神さんは...一命は取り留めたものの...いつ目を覚ますのか...全くわからない状態にあります...。何せ...出血の量も...傷の深さも、普通で考えれば、死んでもおかしくないものだったので...一命を取り留めただけでも...奇跡と言えるほどです...。(汗)どうか...気を確かに持って...。」
 医師は、興奮気味の琉架を宥(なだ)めると険しい表情をしたまま、琉架に亜衣希の容態を伝えた。全てを伝え終えた医師は、琉架に軽く頭を下げ、静かにその場を去っていった。
 残された琉架は、ただ医師の去っていった方向を、じっと見つめていた。......いや、正確には見つめることしか出来なかったのだ。
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