俺の兄貴、俺の弟...(続々)

日向 ずい

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第1章「音海恋の恋模様!」

「俺をひとりにしないで。」

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 「れ~んさん!!...今日は、確か一限だけでしたよね??講義が終わったら、サークル棟に来てくださいね???待ってますから。...では、先輩。また後で...。(笑)」

 「......あっ...あぁ、分かった。(汗)」

 俺は、風三谷に対して恐怖心を抱いていた。

 何故なら...風三谷は、俺の個人情報を全て把握しているからだ。

 いや...俺も信じたくたなかったよ???

 でもさ...

 『恋??どうして主人である俺の誘いを無断で断って、あんなダサ男と一緒にいたの????ねぇ、真っ裸にされて、これから何されるのかも分かってるくせに......まだ黙秘するつもり????...分かったよ。お望み通り、酷くしてあげる。(愛).........恋のことなら、どんな事でもぜーんぶ把握してるから、無駄なこと考えないほうが身のためだよ??チュッ。』

 ......なんていうことが、かれこれ3回以上続いているんだ...。

 ぜーっ対にバレないと思った逃走ルートも先回りされてて......流石の俺でも、此奴からは逃げられないって悟ったよ...。

 そして現在、俺が取っている一限の講義室前に、当然のごとく風三谷が待ち伏せをしていて、俺は風三谷に半ば強制的に約束をさせられたのだった。

 俺は、さっさと風三谷を追っ払うと講義室に入り、俺の友達である壮馬の元へと一目散に駆け寄った。

 「壮馬~!!!!!聞いてくれよ!!!!さっき、風三谷の奴が...!!!!」

 「あ~、はいはい。分かったよ....って、近いな......。もうちょっと離れて...これじゃあ、寄り目になっちゃうから。はいはい、それで...あのストーカーくんがどうしたって???」

 「壮馬~!!!!!なんで友達の生死を分けるかもしれない相談に対して、あからさまに嫌そうな顔するんだよ!!!!」

 「....いや....だってねぇ。」

 俺は目の前で、見るからに嫌そうな顔をしている壮馬に、涙目だが半ギレ状態で問いただすと、壮馬はため息をひとつつき、俺にこう言った。

 「おまえのストーカーくんさ???俺に対して、もの凄い恨みというのか....妬みみたいなの持ってんじゃん....???そう考えるとさぁ、お前の相談に乗っている時のことも、盗み聞きされているんじゃないのかなって思って...そう思うとさ????お前の悩み事を、素直に聞く気になれないっていうのか....その~、何というのか....。」

 俺は、壮馬が言葉を濁した様子に、ぐっと壮馬の両肩を掴むと大声で

 「壮馬!!!そんなことどうだっていいんだよ!!!!俺は、この気持ちの悪い情報を一人で抱え込みたくないだけなんだ!!!!だから、話を聞いてくれよ!!!!頼むこの通りだ...!!!」

 と言った。

 だが、この俺の叫び声が、賑やかな講義室に思った以上に響いていたらしく...教室にいた全ての視線が、俺たち二人の方へと注がれていた。

 この様子に、壮馬は次第に顔を赤く染め、俺をひと睨みすると

 「お前なぁ、ちょっとこっちに来い!!!!」

 と言って、俺の腕を強引に引いて、講義室を後にしたのだった。

 講義室を後にして俺たちが向かったのは、男子トイレだった。

 トイレに着くと、壮馬は俺の腕を放して、少し強めの口調でこう言ってきた。

 「お前なぁ....俺に話を聞いて欲しいからって、場所も考えずに大声出しやがって!!!ったく....はぁ、それで今日は一体何を言われたんだ???」

 壮馬のこの一言を待っていた俺は、さっと壮馬の目を見つめると

 「実はな....今日のこの講義が終わったら、サークル棟に来いって言われていて....。俺は、行きたくないって言おうとしたんだ。でも....『風三谷の馬鹿がそれを許してくれなかったんだな...???』....うっ、壮馬。その通りなんだ。しかも、奴から逃げる方法は無いに等しいし....なぁ、壮馬。俺は、一体どうするべきなんだ????頭の良いお前なら、何か良い方法思い浮かぶんじゃないのか????」

 と言った。

 すると壮馬は、困った顔を俺に向け

 「....ごめん。話を聞くに...それさぁ、お前が逃げるために、俺が手を貸したってばれたら....俺の命が吹き飛ぶってことだよな????ホントに申し訳ないけど...それなら尚更、お前に協力することは出来ない。それにさ、大人しくしていれば、包丁で切られたり、殴ってきたりはしないんだろ???俺なら、間違いなく殺されるが、お前は大丈夫だろ???......ならいいんじゃないのか????」

 というのである。

 俺の気も知らないで....男に犯されている事は当然だが、壮馬には言えていない。

 ....いや、口が裂けてもそんなこと言えるわけが無い!!!!

 男とせっ......ゴホンッ、末路までやるとか、ほんと...生まれて初めて味わった屈辱だ。

 こんな恥ずいこと言えない。

 俺は、言いたいけど言えないもどかしい思いを胸に抱えながら、壮馬に小さく

 「協力してくれなくて良いから....一人にしないでくれ。お願いだから。俺を、一人にしないで....壮馬。」

 と言って、壮馬にぎゅっと抱きついたのだった。

 壮馬は一瞬ビクッと体を震わせ、俺に聞こえるか聞こえないかの声で

 「恋....好きだ....。」

 と小さく零したかと思えば、俺の両肩を思い切り押して、

 「っ...何すんだよいきなり!!!男同士で抱き合うとか....お前、正気じゃないぞ!!!まぁ、寂しがり屋の恋きゅんだから、仕方ない。一緒にいてやるよ....。」

 と言って、そっぽを向いてしまった。

 俺は、壮馬の一言が聞き取れておらず、壮馬が俺に好意を寄せていたなんてこと、この時の俺はまだ知らなかったんだ。

 壮馬が、俺の事をどれほど思ってくれていたのかも....自分勝手な俺は、知るよしも無かったのだ。

 「....っ、ごめん。壮馬....ありがとな。頼れるのは、やっぱり友達の壮馬しかいないから...ほんとに助かってる。いつもありがとな。お前には、感謝しかないわ。」

 俺が壮馬にこう言うと、壮馬は少し悲しそうな顔をして

 「...友達か....。あぁ、おまえみたいな奴は、俺としか釣り合わねぇし、面倒だってみれねぇよ。」

 と言って、俺の肩をばしっと叩き、

 「講義室戻んないと、そろそろ講義始まるぞ???」

 と言い、さっさと男子トイレから出て行ってしまった。

 俺は、はっとして壮馬に

 「待てよ!!!!さっき一人にしないでって、言ったばっかだろ!!!!」

 と叫び、急いで壮馬の背中を追ったのだった。

 この様子を風三谷に見られていたなんて.....壮馬を追うことで必死な俺は、気付いていなかった...。
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