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47 信じてほしい

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「んぁ、ちょ、っと」

 流れるように僕を押し倒したエドワードは、そのまま覆い被さってくる。下着に手をかけられたあたりで、さっと顔色を悪くするが抜け出せそうにない。

 好き勝手に急所を弄られれば、ろくに抵抗もできなかった。

「リア。よく聞け。私がおまえを捨てることなんて絶対にない」
「んっ」

 こんな状況で言われましても。とりあえず離してくれないかな?

 だが期待に反して僕を強く抱き締めたエドワードは、散々前を弄っていた手を後ろに伸ばす。いやいやいや、ちょっと待て。

「待った! ちょっと」

 人に話に耳を貸さないエドワードは、僕の抗議なんてまるっと無視して事を進めてしまう。こいつマジで自分勝手過ぎないか?

 なんとか逃れようとエドワードの逞しい胸を押してみるがびくともしない。それどころか鬱陶しそうに眉を寄せたエドワードが首に顔を埋めてきてくすぐったさに身をよじる。

「んっ、あっ」
「リア」

 熱っぽい声で名前を呼ばれて、なんだか背中がむず痒い。僕を抱き起こしたエドワードと真正面から向き合う。首に手を回して縋り付けば、彼はそのまま僕を横抱きにしてベッドへと移動する。

「なぁ、リア。これはリップサービスでもなんでもなくて私の本心なのだが」

 ベッドに上がってきたエドワードが、なにやら苦しそうな顔をしていた。

「好きだよ、リア。愛してる」

 なんでそんなに泣きそうな顔してんだよ。僕が好きなら、愛してくれるっていうならもっと楽しそうな顔しろよ。

 ふいっと視線を逸らせば、エドワードが再び覆い被さってくる。

「リア、愛してる。おまえを捨てたりなんか絶対にしない」
「そ、そんなこと、言われても」

 わかんないよ。

 今までだって僕を愛してるだの、好きだの、ずっと一緒に居ようだの言ってきた男は山ほど居る。でもその全員が今は僕と一緒じゃない。つまりはその場限りのお遊びってことだろ。僕だってそのつもりだったし。エドワードもそうじゃないの?

 捨てないとか、そんな将来のこと言われたってわかんないだろ。急に冷めるかもしれないだろ。過去の男たちの言動が、エドワードと重なる。

 でもいつになく真剣なエドワードの眼差しに、僕の心がゆらゆら揺れる。

 もうなんだかよくわからなくなってきて、ちょっぴり目頭が熱くなった。

「泣くな、リア」
「泣いてないからぁ」

 滲む視界の向こうで、エドワードがどんな顔をしているのかわからない。ただ困ったように彷徨う手が、やがて僕の頭を優しく撫で始める。

「私を信じてみてはくれないか?」

 なんだそれ。

「そんなの、わかんないって」

 おまえだって僕のこと信じてないだろ。それなのに自分のことは信じてくれとか無責任過ぎる。

「私はリアのことを信じている」
「うそだ」

 ムスッとしたエドワードは、「たしかに」と迷うように言葉を紡ぐ。

「おまえは目を離すとすぐにふらふらとどこかへ行ってしまうが。それでもリアが私のことを忘れずにいてくれると信じている」
「それは」
「だからリアも、私のことを信じてくれないか? リアのことを忘れるなんて絶対にないから」

 どうしよう。何かがつっかえたように黙り込んでいれば、エドワードが「私のことが嫌いか?」と静かに問いかけてくる。

「嫌いじゃない、けど」
「じゃあ好きか」
「う、うん。好きかも、しれない?」
「リア」

 ぎゅっとエドワードに抱き締められて、胸が締め付けられるような思いがする。おずおずと彼の背中に手を回せば、一層強く抱き締められた。

「戻ってきてくれるか」

 エドワードにしては弱々しい声。

 なんというか、すごく疲れ切った僕はまわらない頭を必死に働かせようとする。でもなんだかもうどうでもいい気がする。普通にエドワードと一緒にいるのは楽しいし、それに先のことをあれこれ考えるのは僕らしくなかった。いつも行き当たりばったりの生き方をしてきたはずだ。

 だったらいつも通り、今が楽しい生き方をすればそれでよくないか? その後、何か困ったことがあるかもしれない。でもそれはその時に考えればよくないか?

 迷いを断ち切るように、僕は一度強く目を瞑る。そうして開けた視界には、不安そうに瞳を揺らすエドワードがいた。

「……うん」

 もういいよ。
 逃げるのは諦めた。だからさっさと僕を捕まえるといい。
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