王太子の愛人である傾国の美男子が正体隠して騎士団の事務方始めたところ色々追い詰められています

岩永みやび

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46 色々言いたいが

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 えっと。これは一体どういう状況だろうか?

 ナンパ初心者みたいな優男くんについて来たら、なぜか不機嫌顔のエドワードがいた。なぜ?

 たらたらと流れる冷や汗に、ばくばくと音を立てる心臓。よくわからんが、非常にまずい状況だということはわかる。

 じりじりと徐々に後退るが、例の優男くんが邪魔で部屋の外に出ることができない。てか君は誰なんだよ。なんでエドワードと一緒にいるのか。いや予想はつくけどさ。

「ご苦労だったな」

 エドワードが優男くんに労いの言葉をかける。それを受けて退出する優男くん。これは逃げ出すチャンスと思いきや、入れ替わりで入室してきた男を見て軽く絶望する。

「スコット」

 なにやら憮然と腕を組むスコットは、僕を睨み付けてくる。思わず首をすくめていると、立ち上がったエドワードがこちらに歩み寄ってくる。

 大ピンチだ。

 逃げ場をなくしてあわあわしている間に、あっさりと追い詰められてしまう。

「……色々言いたいことはあるが」

 静かに言葉を切ったエドワードは、その青い瞳に僕を映す。

「誰にでもついていくなと言っただろうが」

 なにやら相当お怒りらしい。おかしい。僕はエドワードを捨てて逃げてきたはずなのに、なぜ現在彼に捕まっているのか。

 容赦なく僕の腕をとったエドワードが、ぐいっと引き寄せてくる。たたらを踏んだ僕だが、エドワードの腕力には敵わない。そのままずるずると引きずられるようにして先程までエドワードが占領していたソファーに連行されてしまう。

「な、なんか怒ってる?」

 おずおずと確認すれば「逆になんで怒っていないと思うんだ?」と高圧的なお答えがあった。ですよね。

 そのままソファーに座らせられた僕の隣を、エドワードが陣取る。

「まさかこんなわかりやすい手に引っ掛かるとはな」

 不機嫌なエドワードは、僕が優男くんにのこのこ引っ付いてここまでやって来たことを怒っているらしい。やはりあの優男くんは近衛騎士で、僕をとっ捕まえるべく声をかけてきたらしい。なんて酷い罠だ。

 というかエドワードが仕掛けた罠なのに。それに僕が引っ掛かって喜ぶどころか、怒るとは。相変わらず気難しい奴である。

「なんであいつについて行った?」
「なんでと言われても。ちょっと泊めてもらおうと思って」

 相当気に食わないらしく、ネチネチとその件ばかりを追求してくる。気まずくてふいっと顔を逸らせば、がっちりと顎を掴まれて上を向かされる。そのまま瞳を覗き込まれて、あわあわと慌てることしかできない。

「そもそもなぜ逃げた? それにあの男はなんだ。知り合いか? なんでよりによって騎士団なんかで働いていたんだ」

 そんな一気に訊かないで。

 答えられずに口を閉じていると、なにやら苦しそうなエドワードの顔が近付いてくる。

 え、と思ったのも束の間で。口に触れる柔らかな感触に、ぎゅっと目を閉じる。何度もついばむようなキスが降ってきて、やがて口内に侵入してきた舌に息が上がる。好き勝手やって満足したのか。ようやく顔を離したエドワードを涙目で睨みつけると、鋭い眼光が返ってきた。

 いつの間にか退出していたスコット。おかげでエドワードとふたりきりになってしまった。

「なんで逃げた? そんなに私のことが嫌いか?」
「い、いやそういうわけじゃあ」

 うろうろと視線を彷徨わせていると、再びエドワードに顎を掴まれる。

「リア?」
「う、うーん、その」

 なんだか白状するまで解放してもらえない雰囲気だぞ。だが面と向かって本人に言うのは憚られる。もごもごしていると、焦れたらしいエドワードが再度僕の名前を口にする。

 もうどうにでもなってしまえ!

「エドワードに捨てられたら困ると思って!」

 ヤケクソで白状すれば、エドワードが虚を突かれたような顔をする。

「は?」
「だから! エドワードに捨てられたら僕生きていけないから。自立しようと思って、その」

 自立? と首を傾げたエドワードは、なにやら言いたげに顔を顰める。

 たっぷりの沈黙の後、重々しいため息が吐き出された。

「おまえは本当に」

 本当になんだよ?
 言葉を飲み込んだエドワードは、感極まったかのように瞳を揺らす。

「捨てるわけないだろ」
「うぇ?」

 ぐいっと体を引き寄せられて、抱き締められる。脱出を試みるが、僕の力では敵わない。

 だがエドワードの言葉は到底信じられない。今までそんなリップサービスいくらでも聞いてきた。今回だってそうに違いない。ただでさえエドワードは最近ちょっと浮かれ気味である。そんな浮かれ野郎の言葉をそのまま信じ込むほど僕は馬鹿じゃないぞ。

 だが場の雰囲気というものがある。なにやらエドワードは必死なのであわせてやらないと。そう思って「本当に?」と小首を傾げてやれば、なにやらエドワードがすんっと真顔になる。どうした?

「リア。おまえ、私のこと信じてないだろ?」
「ん? そんなことないよ」

 本日のエドワードはすごく勘が良いな。そのままソファーに押し倒された。
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