王太子の愛人である傾国の美男子が正体隠して騎士団の事務方始めたところ色々追い詰められています

岩永みやび

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第二章

4 お悩み相談

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 今日も僕は可愛い。ものすごく。

 エドワードの我儘が原因で、最近の僕は王宮に入り浸っている。まぁ昔から入り浸ってはいたけどさ。どうやらエドワードは毎日僕の顔が見たいらしい。気持ちはわかる。だって僕はすごく可愛いから。

「行くよ、ザック」
「もうやめません?」

 上着を手に取ってザックを振り返れば、そんなやる気のない言葉が返ってきた。ザックは近衛騎士として僕の護衛をやっているなかなかに使える男だ。

 だが、ちょっと気の弱いところがあるのはいただけない。もっと自分に自信を持った方がいいと思う。

 エドワードが仕事に出かけて、スコットもそれに同行した。ザックと共に部屋に残された僕は、渋る彼を睨みつけた。

「ほら行くよ。はやくして」
「いい加減やめません? 殿下のお耳に入ったら大変なことになりますよ」

 肝心なところで弱気になるザックを無視して外に出る。ザックは僕の護衛なので。僕が行動すれば結局はついてくるのだ。

「最近、規模が大きくなり過ぎですよ。あんまり目立つと王立騎士団とかが調査に来ますよ」
「王立騎士団ってそんなに暇なの?」
「暇ではないですが。怪しい団体があれば普通に調査くらいするでしょうよ」
「じゃあ大丈夫!」

 勢いよく宣言すれば、ザックが「は?」と間抜けな声をあげた。

「うちはまったく怪しくないから」
「いや怪しいですよ」

 間髪入れずに否定してくるザックは、「怪しいです」とわざわざ繰り返してくる。

「女性だけを大勢集めて妙な集会を開いている団体があると既に街中で噂になりつつあります」
「それのどこが問題なの?」

 目を瞬けば、ザックが「それ本気で訊いてます?」と変な顔をする。

「どう聞いたって怪しいでしょ!? 俺が騎士だったら間違いなく一度くらいは探りを入れますよ! いや俺は騎士なんですけど」

 もごもごと変な言い訳を挟んで、「とにかく! そろそろ潮時だと思います」と主張するザックのことを眺める。

 これだから気の弱い男は困る。

「あのね、ザック。バレる前に引いてどうする」
「バレてから引いたって遅いでしょう」
「甘いなぁ。これだから人生経験に乏しい奴は」

 やれやれと肩をすくめれば、ザックが「悪かったですね」と半眼になる。僕がこれまでの人生において一体どれだけの修羅場をくぐり抜けてきたと思っているんだ。

「バレた時のことはね、バレた時に考えればいいんだよ!」

 胸を張って教えてやれば、ザックが「すごいですね」と言った。

「なんでそこまで楽観的になれるんですか? 俺には真似できません」
「そうだろう」
「いや、褒めてはいないですからね」

 なんだと。
 失礼な男である。

 それにザックの心配はよくわからない。なんでかエドワードの耳に入ると僕が怒られること前提で話を進めているが、断言しよう。僕はエドワードに怒られるようなことは何ひとつやっていない。そうならないように細心の注意を払っている。なんせ僕は気遣いのできる素晴らしい人間なので。

「多分だけどね。エドワードが僕の活動を知ったら感動して泣くと思うよ」
「激怒した殿下にリア様が泣く羽目になるのでは?」
「なんでだよ」

 エドワードが激怒するわけない。あいつは常々人のために動けみたいなことを言っている。今の僕は、まさに人々のために働いている。褒められることはあれど、怒られることはない。

 だから大丈夫と何度も説明するのだが、ザックは「もうやめましょうよ」とうるさい。

 それを無視して、さっさと足を進める。
 そうして到着した会場に、足早に入る。あまり顔を見られたくはない。

「こんなでかい建物。目立つからやめましょう」
「えー? だって使っていいって言うから」

 なんかいい場所ないかなとふらふらしていた時に、昔何度か遊んでいた男がここを使ってもいいと言ってきた。

 最近までは劇場として使用されていたみたいだが、思うように稼げなかったらしく潰れたのだ。そうして持て余された建物を買い取った男が、なんか知らないけど僕に貸してやると言ってきた。しかも家賃はいらないときた。断る理由なんてない。まぁ、その代わり頻繁に会おうと声をかけられてはいるのだが。今のところは適当にあしらっている。ザックはこの男についても心配しているらしい。

「そのうち怒鳴り込んできませんかね」
「なんで? 向こうが貸してくれるって言ったのに」
「貸す代わりによりを戻そうみたいなこと言ってませんでしたか?」
「そうだっけ?」

 笑って誤魔化して、控え室に入る。でも今のところはあちらも好意的だから大丈夫だと思う。返せと言われたらすぐに撤退するだけだ。ここは人を大勢集めるのに便利だから利用させてもらっているだけで、別になくても構わない。追い出されたら次の場所を見つけるだけである。

 僕は今、持て余した時間を使ってお悩み相談的なことをやっている。別にこういうことを目指していたわけではないのだが、暇な時間にふらふら街を散歩していたら仲良くなった女の子たちがいて、彼女たちにあれこれ求められるままに会話をしていたらこんなことになってしまった。自分でもちょっとよくわからない。でも人にちやほやされて悪い気はしない。

「悩み相談というか。単にリア様の顔を見たくて集まってきてますよね、みなさん」
「そうなの?」
「だって何ひとつ解決してないじゃないですか」
「そんなことないよ」

 僕はいつだって真摯に対応している。その丁寧な対応が認められてここまで人気になったのだ。いつのまにか神子様と呼ばれるまでになった。誰が言い出したのかはよくわからない。だが、ザックは「絶対に違います。みなさんリア様とお話したいだけですよ」と妙なことを言う。

 別にそれでもいいけど。

 だって僕が可愛いのは事実だもんね。
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