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第二章
16 怪しい
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「で? どこ行く?」
久しぶりのエドワードとのお出かけである。彼は一応王太子なので、日々忙しいらしくそう簡単に遊んでいられない。
にこにことエドワードの顔を見つめていれば、彼が「あー」と気まずそうに視線を逸らした。
「今は忙しいから今度な」
「はぁ?」
おまえ、この嘘吐きが。
さっき僕の顔見て「どこか行く?」と訊いただろうが。なんだそのタチの悪いフェイント。
力いっぱいエドワードの肩を叩いてやるが、エドワードは「すまない」とちょっぴり眉尻を下げるだけでびくともしない。
「次の休みには必ずどこかへ連れて行ってやるから」
「どこかってどこ」
「リアの好きなところに」
「ふーん?」
その次の休みとやらがいつなのかは不明。
露骨にがっかりしていれば、エドワードが誤魔化すように僕の頭を撫でてきた。
「代わりにスコットを貸してやるから。今日はどこかに連れて行ってもらえ」
「いいよ、別に」
というかザックがいるからスコットはいらない。全力で遠慮するのだが、エドワードの中ではすでにそう決まったらしい。
「美味いものでも食わせてもらえ」
そう言い残したエドワードは、さっさと部屋を出てしまう。
「……怪しい」
ひとり部屋に残された僕は、顎に手をやって考える。ここ最近、エドワードが僕に冷たい。おまけに今の逃げるような態度。
ここ最近の出来事を思い出していれば、「なにが怪しいんですか」とスコットがエドワードと入れ違いで入ってくる。
その顔を見上げて、疑いの目を向けておく。スコットはエドワードの側近である。常にエドワードの側にいるので、彼の怪しい行動に関しても知っているかも。いや、それどころか共犯かもしれない。
「スコットはエドワードとグルかもしれないから教えてやんない」
「グル? 俺と殿下が?」
一体なんの話ですか、と眉を寄せるスコットは僕のために椅子を引いてくれる。どうやら本当に今日は僕の側にいるつもりらしい。ザックはどこに行ったのだ。きょろきょろしていれば、スコットが「ザックなら今日は休みですよ」と初耳の事実を突きつけてきた。
「そんなの聞いてない」
「急遽決まったことですから」
それ以上教えてくれないスコットは「ですから今日は俺がお供しますよ」とにこやかに言ってのける。
これはきっとあれだ。僕とザックをふたりにしておくとまた余計なことをすると疑われている。半眼で腕を組む僕に、スコットが苦笑している。
「それで? 怪しいこととは?」
窓を開けるスコットは話を戻してくる。
「エドワードには内緒にできる?」
「……」
黙り込むスコットは、「内容次第ですね」と開き直る。それでは困るのだが、スコットは引かない。僕の顔が見える位置まで移動してじっと続きを待っている。
仕方がないので、再度エドワードには内緒にしておくよう言い含めて息を吐き出した。
「エドワードが浮気しているかもしれない」
「……え?」
ここ最近の違和感を整理すればこういう結論が出てきた。思い詰めた表情を作る僕に、けれどもスコットはたっぷり沈黙した後、「え?」と怪訝な顔をした。
「えっと。リア様ではなく?」
「失礼だな。僕が浮気をするような男に見えるか?」
「はい」
クソ失礼なスコットを睨みつけて、エドワードの不審な行動について説明してやる。
僕の扱いが雑だし、怒ってばかりだし、毎日忙しそうで僕の相手をしてくれないし。
すべて他に恋人がいると仮定すれば全部説明がつく。
「エドワードめ。僕を侍らせておいて浮気するなんて。信じられない」
「殿下が浮気など。とんでもない」
「君はなにもわかってない!」
ビシッとスコットを指差して、勢いよく立ち上がる。
「エドワードの浮気相手を突き止めてやる!」
「存在しないものを探してどうするんですか」
呆れた顔するスコットは、エドワードが浮気なんてするわけないと主張している。本当にそう言い切れるのか? 僕の目の届かないところでなんかやってるんじゃないのか?
「というわけで。今日は一日こっそりエドワードの様子を観察するから。君も付き合ってね」
「それは構いませんが」
外を出歩かれるよりはマシだと思ったのだろうか。「殿下の邪魔をしないように気をつけてくださいね」と注意してくるスコットと共に、早速エドワードの元に向かう。
「エドワードどこ?」
とはいえ、エドワードがどこにいるのかわからない。スコットを頼れば「今の時間は執務室に」と案内してくれた。
こっそり浮気現場をおさえたい僕は、エドワードがいる部屋のドアをゆっくりと開く。そうして半開きになったドアを覗いてエドワードを観察していれば、スコットが「これはちょっと」と僕を退かそうとしてくる。
「仕事の邪魔ですよ」
「やましいことでもあるの?」
「気が散ると言っているんです」
そんな感じで言い争っていれば、半開きにしていたドアが全開になった。見れば、呆れ顔のエドワードが立っていた。
「なにをしているんだ」
咄嗟に笑顔を浮かべた僕は「エドワード。お仕事頑張ってる?」と甘えた声で腕を絡めておいた。
久しぶりのエドワードとのお出かけである。彼は一応王太子なので、日々忙しいらしくそう簡単に遊んでいられない。
にこにことエドワードの顔を見つめていれば、彼が「あー」と気まずそうに視線を逸らした。
「今は忙しいから今度な」
「はぁ?」
おまえ、この嘘吐きが。
さっき僕の顔見て「どこか行く?」と訊いただろうが。なんだそのタチの悪いフェイント。
力いっぱいエドワードの肩を叩いてやるが、エドワードは「すまない」とちょっぴり眉尻を下げるだけでびくともしない。
「次の休みには必ずどこかへ連れて行ってやるから」
「どこかってどこ」
「リアの好きなところに」
「ふーん?」
その次の休みとやらがいつなのかは不明。
露骨にがっかりしていれば、エドワードが誤魔化すように僕の頭を撫でてきた。
「代わりにスコットを貸してやるから。今日はどこかに連れて行ってもらえ」
「いいよ、別に」
というかザックがいるからスコットはいらない。全力で遠慮するのだが、エドワードの中ではすでにそう決まったらしい。
「美味いものでも食わせてもらえ」
そう言い残したエドワードは、さっさと部屋を出てしまう。
「……怪しい」
ひとり部屋に残された僕は、顎に手をやって考える。ここ最近、エドワードが僕に冷たい。おまけに今の逃げるような態度。
ここ最近の出来事を思い出していれば、「なにが怪しいんですか」とスコットがエドワードと入れ違いで入ってくる。
その顔を見上げて、疑いの目を向けておく。スコットはエドワードの側近である。常にエドワードの側にいるので、彼の怪しい行動に関しても知っているかも。いや、それどころか共犯かもしれない。
「スコットはエドワードとグルかもしれないから教えてやんない」
「グル? 俺と殿下が?」
一体なんの話ですか、と眉を寄せるスコットは僕のために椅子を引いてくれる。どうやら本当に今日は僕の側にいるつもりらしい。ザックはどこに行ったのだ。きょろきょろしていれば、スコットが「ザックなら今日は休みですよ」と初耳の事実を突きつけてきた。
「そんなの聞いてない」
「急遽決まったことですから」
それ以上教えてくれないスコットは「ですから今日は俺がお供しますよ」とにこやかに言ってのける。
これはきっとあれだ。僕とザックをふたりにしておくとまた余計なことをすると疑われている。半眼で腕を組む僕に、スコットが苦笑している。
「それで? 怪しいこととは?」
窓を開けるスコットは話を戻してくる。
「エドワードには内緒にできる?」
「……」
黙り込むスコットは、「内容次第ですね」と開き直る。それでは困るのだが、スコットは引かない。僕の顔が見える位置まで移動してじっと続きを待っている。
仕方がないので、再度エドワードには内緒にしておくよう言い含めて息を吐き出した。
「エドワードが浮気しているかもしれない」
「……え?」
ここ最近の違和感を整理すればこういう結論が出てきた。思い詰めた表情を作る僕に、けれどもスコットはたっぷり沈黙した後、「え?」と怪訝な顔をした。
「えっと。リア様ではなく?」
「失礼だな。僕が浮気をするような男に見えるか?」
「はい」
クソ失礼なスコットを睨みつけて、エドワードの不審な行動について説明してやる。
僕の扱いが雑だし、怒ってばかりだし、毎日忙しそうで僕の相手をしてくれないし。
すべて他に恋人がいると仮定すれば全部説明がつく。
「エドワードめ。僕を侍らせておいて浮気するなんて。信じられない」
「殿下が浮気など。とんでもない」
「君はなにもわかってない!」
ビシッとスコットを指差して、勢いよく立ち上がる。
「エドワードの浮気相手を突き止めてやる!」
「存在しないものを探してどうするんですか」
呆れた顔するスコットは、エドワードが浮気なんてするわけないと主張している。本当にそう言い切れるのか? 僕の目の届かないところでなんかやってるんじゃないのか?
「というわけで。今日は一日こっそりエドワードの様子を観察するから。君も付き合ってね」
「それは構いませんが」
外を出歩かれるよりはマシだと思ったのだろうか。「殿下の邪魔をしないように気をつけてくださいね」と注意してくるスコットと共に、早速エドワードの元に向かう。
「エドワードどこ?」
とはいえ、エドワードがどこにいるのかわからない。スコットを頼れば「今の時間は執務室に」と案内してくれた。
こっそり浮気現場をおさえたい僕は、エドワードがいる部屋のドアをゆっくりと開く。そうして半開きになったドアを覗いてエドワードを観察していれば、スコットが「これはちょっと」と僕を退かそうとしてくる。
「仕事の邪魔ですよ」
「やましいことでもあるの?」
「気が散ると言っているんです」
そんな感じで言い争っていれば、半開きにしていたドアが全開になった。見れば、呆れ顔のエドワードが立っていた。
「なにをしているんだ」
咄嗟に笑顔を浮かべた僕は「エドワード。お仕事頑張ってる?」と甘えた声で腕を絡めておいた。
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