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17歳
779 保護者
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「えっと。それでルイス様はなぜここに?」
ロレッタを止められないので、もう無視してしまうことにしたらしい。今更のようにティアンに問われて、俺は本来の目的を思い出した。
そうだった。ブルース兄様以外にもティアンとお付き合いすることになった旨をご報告しようと思っていたんだった。ティアンも連れて行くべきだというユリスの言葉に促されて、ティアンを呼びに来たのである。すっかり忘れていた。
相変わらずにこにこと俺たちを眺めるロレッタをちらりと見やって、ティアンに向き直る。セドリックはあまり頼りになりそうにない。ロニーが頑張ってセドリックの背中を押しているけど、やる気に欠ける団長はまったく動く気配がない。みんなに言われて仕方なく外に出てきたけど、思っていたよりも面倒な事態だったので二の足を踏んでいるのだろう。
ロレッタの使用人さんも頼りにならない。一歩どころか数歩離れた位置で、自分には無理だとぶんぶん首を左右に振っている。どうやらロレッタを止める手段は皆無のようだ。彼も苦労しているのだろう。
やんわりとした態度なのに、一歩も引かない姿勢が厄介だ。妙な粘り強さを持っている。
「あの、お父様とお母様のところに行こうと思って」
ティアンの袖を引いて耳打ちすると、綿毛ちゃんが「ご報告に行くんでしょ?」と余計なことを言った。案の定、ロレッタが食いついてきた。
「もう大公様にご報告を? 私は構いませんが、少々気が早過ぎるのでは?」
にこっと笑って自分の頬に手を添えるロレッタ。ちょっぴり照れているらしい。違う。君は無関係だ。
「ロレッタじゃないよ。ティアンと行くの!」
ムキになった俺は、ティアンと腕を組む。されるがままになっているティアンは、もうロレッタの言動に突っ込むのをやめたらしい。非常に疲れた顔をしている。
俺の勢いに、ロニーが戸惑っている。そう言えばロニーにも説明していない。しかし面と向かって改めてお付き合い宣言するのは照れる。あとにしよう。いや、もうロレッタとのやり取りで色々と察してはいそうだけど。ここまで無言のセドリックは、ロニーとニックに挟まれて遠い目をしている。帰りたそうに騎士棟建物をちらちら見ている。セドリックがいてもどうにもならないので、もう帰ってもいいと思うよ。
「僕も立ちあってやる」
非常に上からの提案をするユリスに、ティアンが「え? あぁ、はい」と困惑気味に返している。
正直ユリスを連れて行くと事態がややこしくなりそうな気もする。しかしユリスを追い払うだけの気力もない。さすがのロレッタも、お父様のところまではついて来ないだろう。彼女から逃れたい一心で、俺はティアンの手を引いた。
思惑通り、ロレッタは流石に追いかけてはこなかった。けれどもすごく穏やかな笑顔で「ルイス様。またお会いいたしましょう」と手を振られた。
「彼女、結婚したいらしくて」
ロレッタの姿が見えなくなった辺りで、ティアンがそう言った。彼女のことは、セドリックとロニーに任せておけば大丈夫だろう。
『坊ちゃん。ロレッタさんとも付き合うのぉ? 側室?』
素早く犬姿に戻った綿毛ちゃんが、困った顔で見上げてきた。綿毛ちゃんは、このサイズが落ち着く。髪の長いお兄さん姿もいいけど、気軽に抱っこできるもふもふもいい。
綿毛ちゃんを抱えて、屋敷を目指す。追いかけてくるユリスは、名残惜しそうに何度も振り返っている。ユリスは、なぜかロレッタのことを気に入ったらしい。多分ティアンの困った顔が見たいだけだと思う。
「付き合わないよ。側室もいらないの。わかったか?」
心配そうな毛玉に言い聞かせると『ふーん?』と疑うような目を向けられた。失礼だぞ。
ティアンによると、ロレッタは結婚相手が見つからないことに焦りを覚えているらしい。それであれこれ声をかけて回っているのだとか。
「そんなに焦る必要ある?」
まだ十八だと言っていた。ティアンも「さぁ?」と不思議そうに首を傾げている。とはいえ、ロレッタにはロレッタの事情があるのかもしれない。なにか焦る理由があるのかもしれない。俺がわざわざ彼女の行動を否定する必要はない。とはいえ、少々強引なのは困ってしまう。別れ際の様子だと、どうやら今日のことは冗談で終わらせてくれそうだ。
「ティアンは、ロレッタのこと好きだったりする?」
「いえ、まったく」
きっぱり否定するティアンに、笑ってしまう。ユリスが退屈そうに欠伸をしていた。
『オレもあんまり。オレ、坊ちゃんがティアンさんと別れるんじゃないかとヒヤヒヤしちゃった』
妙な心配をしていたらしい綿毛ちゃんに、ティアンと顔を見合わせた。なぜ毛玉にそんな心配をされなければならないのだ。
「俺のことなんだと思ってんの」
いくらなんでも、付き合い始めたばかりで別れたりはしない。俺だって、色々考えてこの結論に至ったのだ。
「綿毛ちゃんって変なことばっかり考えるよね」
『変なことじゃないもん。オレは真剣に坊ちゃんの人生を考えてるの』
「なんで綿毛ちゃんが俺の人生を考えるんだよ」
『保護者だもん! オレが育てたんだもん。そりゃ気になるよぉ』
「綿毛ちゃん、俺のこと育ててないだろ!」
なに適当なこと言ってんだ。この毛玉め。
ロレッタを止められないので、もう無視してしまうことにしたらしい。今更のようにティアンに問われて、俺は本来の目的を思い出した。
そうだった。ブルース兄様以外にもティアンとお付き合いすることになった旨をご報告しようと思っていたんだった。ティアンも連れて行くべきだというユリスの言葉に促されて、ティアンを呼びに来たのである。すっかり忘れていた。
相変わらずにこにこと俺たちを眺めるロレッタをちらりと見やって、ティアンに向き直る。セドリックはあまり頼りになりそうにない。ロニーが頑張ってセドリックの背中を押しているけど、やる気に欠ける団長はまったく動く気配がない。みんなに言われて仕方なく外に出てきたけど、思っていたよりも面倒な事態だったので二の足を踏んでいるのだろう。
ロレッタの使用人さんも頼りにならない。一歩どころか数歩離れた位置で、自分には無理だとぶんぶん首を左右に振っている。どうやらロレッタを止める手段は皆無のようだ。彼も苦労しているのだろう。
やんわりとした態度なのに、一歩も引かない姿勢が厄介だ。妙な粘り強さを持っている。
「あの、お父様とお母様のところに行こうと思って」
ティアンの袖を引いて耳打ちすると、綿毛ちゃんが「ご報告に行くんでしょ?」と余計なことを言った。案の定、ロレッタが食いついてきた。
「もう大公様にご報告を? 私は構いませんが、少々気が早過ぎるのでは?」
にこっと笑って自分の頬に手を添えるロレッタ。ちょっぴり照れているらしい。違う。君は無関係だ。
「ロレッタじゃないよ。ティアンと行くの!」
ムキになった俺は、ティアンと腕を組む。されるがままになっているティアンは、もうロレッタの言動に突っ込むのをやめたらしい。非常に疲れた顔をしている。
俺の勢いに、ロニーが戸惑っている。そう言えばロニーにも説明していない。しかし面と向かって改めてお付き合い宣言するのは照れる。あとにしよう。いや、もうロレッタとのやり取りで色々と察してはいそうだけど。ここまで無言のセドリックは、ロニーとニックに挟まれて遠い目をしている。帰りたそうに騎士棟建物をちらちら見ている。セドリックがいてもどうにもならないので、もう帰ってもいいと思うよ。
「僕も立ちあってやる」
非常に上からの提案をするユリスに、ティアンが「え? あぁ、はい」と困惑気味に返している。
正直ユリスを連れて行くと事態がややこしくなりそうな気もする。しかしユリスを追い払うだけの気力もない。さすがのロレッタも、お父様のところまではついて来ないだろう。彼女から逃れたい一心で、俺はティアンの手を引いた。
思惑通り、ロレッタは流石に追いかけてはこなかった。けれどもすごく穏やかな笑顔で「ルイス様。またお会いいたしましょう」と手を振られた。
「彼女、結婚したいらしくて」
ロレッタの姿が見えなくなった辺りで、ティアンがそう言った。彼女のことは、セドリックとロニーに任せておけば大丈夫だろう。
『坊ちゃん。ロレッタさんとも付き合うのぉ? 側室?』
素早く犬姿に戻った綿毛ちゃんが、困った顔で見上げてきた。綿毛ちゃんは、このサイズが落ち着く。髪の長いお兄さん姿もいいけど、気軽に抱っこできるもふもふもいい。
綿毛ちゃんを抱えて、屋敷を目指す。追いかけてくるユリスは、名残惜しそうに何度も振り返っている。ユリスは、なぜかロレッタのことを気に入ったらしい。多分ティアンの困った顔が見たいだけだと思う。
「付き合わないよ。側室もいらないの。わかったか?」
心配そうな毛玉に言い聞かせると『ふーん?』と疑うような目を向けられた。失礼だぞ。
ティアンによると、ロレッタは結婚相手が見つからないことに焦りを覚えているらしい。それであれこれ声をかけて回っているのだとか。
「そんなに焦る必要ある?」
まだ十八だと言っていた。ティアンも「さぁ?」と不思議そうに首を傾げている。とはいえ、ロレッタにはロレッタの事情があるのかもしれない。なにか焦る理由があるのかもしれない。俺がわざわざ彼女の行動を否定する必要はない。とはいえ、少々強引なのは困ってしまう。別れ際の様子だと、どうやら今日のことは冗談で終わらせてくれそうだ。
「ティアンは、ロレッタのこと好きだったりする?」
「いえ、まったく」
きっぱり否定するティアンに、笑ってしまう。ユリスが退屈そうに欠伸をしていた。
『オレもあんまり。オレ、坊ちゃんがティアンさんと別れるんじゃないかとヒヤヒヤしちゃった』
妙な心配をしていたらしい綿毛ちゃんに、ティアンと顔を見合わせた。なぜ毛玉にそんな心配をされなければならないのだ。
「俺のことなんだと思ってんの」
いくらなんでも、付き合い始めたばかりで別れたりはしない。俺だって、色々考えてこの結論に至ったのだ。
「綿毛ちゃんって変なことばっかり考えるよね」
『変なことじゃないもん。オレは真剣に坊ちゃんの人生を考えてるの』
「なんで綿毛ちゃんが俺の人生を考えるんだよ」
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