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103 考えておいてやる
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その後も頑張って魔力を込めようとしたのだが、結果は失敗に終わった。コンちゃんのアドバイスは抽象的過ぎて何ひとつ理解できない。それをコンちゃんに指摘しても「は?」みたいな顔をされる。
全部俺が悪いみたいな態度をとるコンちゃんには人の心というものがない。まぁ、コンちゃんは人じゃなくてキツネなんだけどさ。
ポメちゃんを魔力でコントロールするのは諦める。ぐうたらポメラニアンめ。ずっと寝てたら太っちゃうぞ。腹の立った俺は、ユナを拾ってポメちゃんの背中に乗せておく。ポメちゃんの上に乗せると、ユナは小さく見える。『なにするんだ』と怒るユナであるが、小さいもふもふが怒ったところでなにも怖くない。
「じゃあ、オリビアに見つからないよう街に行く方法考えて」
パンパン手を叩いてみんなを見渡すと、しばし沈黙がおりる。やがてユナがおずおずと声を出した。
『……あ、それはボクらが?』
「当たり前だろ。はやく考えて」
えー、と生意気な悲鳴をあげるユナはあまり役に立ちそうにない。まぁ、小さい猫には最初から期待なんてしていない。
「方法を考えるとはどういう意味だ。普通に行けばいいではないか」
コンちゃんに至っては、俺の質問の意図すら理解していない。なんだ、この魔獣たち。全然役に立たないぞ。腕を組んで仁王立ちする。俺を叱りつけるときのオリビアを真似して怖い顔をしてみる。けれども魔獣たちはまったくビビらない。ポメちゃんはすやすや寝ているし、ユナも欠伸をしている。コンちゃんもやる気なさそうに窓の外を眺めている。
「ねぇ! 真面目に考えて! ちゃんと考えないとおやつあげないぞ!」
『はいはい』
「もう!」
雑な返答しかしないユナを抱っこして、出鱈目に振りまわしてやる。『ちょっと! やめてよ!』とユナが怒るけど、無視してやった。
「普通に行けばいいだろ。そんなに遠くないんだから」
器用に片眉を持ち上げるコンちゃんは、呆れたと言わんばかりの態度だ。
「普通ってなにぃ!?」
「門から外に出て歩いて行けばいいだろ。わざわざそんなことまで説明しないと理解できないのか?」
俺を馬鹿にするような挑発的な物言いに、むすっと頬を膨らませる。コンちゃんは、なにかと俺を見下してくる。俺が主人なんですけど? それに俺が聞いているのはそういうことではない。どうしたらオリビアの目を盗んで街に行けるのかという話をしているのだ。
「オリビアに見つかるだろ!」
「見つかってなにか不都合でも? 私は人間如きには負けない」
「バトルするつもりなのか?」
やる気満々のコンちゃんは、オリビアに鉢合わせたら真正面から戦うつもりでいるらしい。なんて物騒な考え方。さすが魔獣である。もうちょい平和的な思考をしようよ。
「オリビアは強いよ。コンちゃん、せっかくもふもふの尻尾があるのに。オリビアに尻尾とられちゃうかもよ」
『オリビアはそんな野蛮なことしないから。適当なこと言わないで』
なぜかオリビアの味方をするユナは生意気。この猫は、いつも生意気である。
眉を寄せるコンちゃんは、「私のことが信用できないのか?」と低い声を出す。そういう問題ではなくない? 俺は街に行きたいんだけど、別にオリビアを倒してまで行くつもりはない。ちょっと隠れてこっそり行きたいのだ。
わかる? とコンちゃんに詰め寄る。
眉を寄せるコンちゃんは、言葉にはしないけど「わからない」という雰囲気が漂っている。
「オリビアとバトルするのはだめ。平和に街に行く」
わかった? と魔獣たちを見回してみる。
誰ひとりろくな反応を返してくれない。ポメちゃんはもう寝ていた。
「真剣に俺の話聞いて!」
ままならない状況に地団駄を踏む。
ぴょんぴょん飛び跳ねていると、ユナが面倒くさそうに息を吐いた。
『だったら普通にオリビアも誘って行けば? それが一番平和だよ』
「なに言ってるの?」
これでは話が進まない。
コンちゃんの腕を掴んで「ねー! 内緒で行こうよ!」と引っ張っておく。体重をかけて引っ張るけど、コンちゃんはびくともしない。けれどもオリビアに負けたくはないという思いはあるのだろう。やや間を置いてから「わかった」と呟いた。
コンちゃんは人間に興味がない割には、オリビアをどこかライバル視しているような雰囲気もある。俺がなにかと「オリビア」と連呼しているからだろうか。謎だ。
「では私の言うことに従え」
「なんで?」
唐突に偉そうな発言をしたコンちゃんは、器用に片眉を持ち上げる。
「おまえに任せてもろくな計画を立てない。私が計画を立てる」
「コンちゃん、計画とか立てられるのか?」
「私をなんだと思っている」
「キツネおばけ」
人間にもなれる不思議なキツネ。
途端にコンちゃんが顔をしかめた。
「……やはりやめるか」
「やめないでぇ!」
コロコロ意見を変えるコンちゃんに、俺は再びぴょんぴょん跳ねる。どうやらキツネおばけと言ったのが気に食わなかったらしい。慌ててごめんねと謝っておく。やれやれと息を吐いたコンちゃんは、「考えておいてやる」と非常に上から目線の言葉を口にした。
全部俺が悪いみたいな態度をとるコンちゃんには人の心というものがない。まぁ、コンちゃんは人じゃなくてキツネなんだけどさ。
ポメちゃんを魔力でコントロールするのは諦める。ぐうたらポメラニアンめ。ずっと寝てたら太っちゃうぞ。腹の立った俺は、ユナを拾ってポメちゃんの背中に乗せておく。ポメちゃんの上に乗せると、ユナは小さく見える。『なにするんだ』と怒るユナであるが、小さいもふもふが怒ったところでなにも怖くない。
「じゃあ、オリビアに見つからないよう街に行く方法考えて」
パンパン手を叩いてみんなを見渡すと、しばし沈黙がおりる。やがてユナがおずおずと声を出した。
『……あ、それはボクらが?』
「当たり前だろ。はやく考えて」
えー、と生意気な悲鳴をあげるユナはあまり役に立ちそうにない。まぁ、小さい猫には最初から期待なんてしていない。
「方法を考えるとはどういう意味だ。普通に行けばいいではないか」
コンちゃんに至っては、俺の質問の意図すら理解していない。なんだ、この魔獣たち。全然役に立たないぞ。腕を組んで仁王立ちする。俺を叱りつけるときのオリビアを真似して怖い顔をしてみる。けれども魔獣たちはまったくビビらない。ポメちゃんはすやすや寝ているし、ユナも欠伸をしている。コンちゃんもやる気なさそうに窓の外を眺めている。
「ねぇ! 真面目に考えて! ちゃんと考えないとおやつあげないぞ!」
『はいはい』
「もう!」
雑な返答しかしないユナを抱っこして、出鱈目に振りまわしてやる。『ちょっと! やめてよ!』とユナが怒るけど、無視してやった。
「普通に行けばいいだろ。そんなに遠くないんだから」
器用に片眉を持ち上げるコンちゃんは、呆れたと言わんばかりの態度だ。
「普通ってなにぃ!?」
「門から外に出て歩いて行けばいいだろ。わざわざそんなことまで説明しないと理解できないのか?」
俺を馬鹿にするような挑発的な物言いに、むすっと頬を膨らませる。コンちゃんは、なにかと俺を見下してくる。俺が主人なんですけど? それに俺が聞いているのはそういうことではない。どうしたらオリビアの目を盗んで街に行けるのかという話をしているのだ。
「オリビアに見つかるだろ!」
「見つかってなにか不都合でも? 私は人間如きには負けない」
「バトルするつもりなのか?」
やる気満々のコンちゃんは、オリビアに鉢合わせたら真正面から戦うつもりでいるらしい。なんて物騒な考え方。さすが魔獣である。もうちょい平和的な思考をしようよ。
「オリビアは強いよ。コンちゃん、せっかくもふもふの尻尾があるのに。オリビアに尻尾とられちゃうかもよ」
『オリビアはそんな野蛮なことしないから。適当なこと言わないで』
なぜかオリビアの味方をするユナは生意気。この猫は、いつも生意気である。
眉を寄せるコンちゃんは、「私のことが信用できないのか?」と低い声を出す。そういう問題ではなくない? 俺は街に行きたいんだけど、別にオリビアを倒してまで行くつもりはない。ちょっと隠れてこっそり行きたいのだ。
わかる? とコンちゃんに詰め寄る。
眉を寄せるコンちゃんは、言葉にはしないけど「わからない」という雰囲気が漂っている。
「オリビアとバトルするのはだめ。平和に街に行く」
わかった? と魔獣たちを見回してみる。
誰ひとりろくな反応を返してくれない。ポメちゃんはもう寝ていた。
「真剣に俺の話聞いて!」
ままならない状況に地団駄を踏む。
ぴょんぴょん飛び跳ねていると、ユナが面倒くさそうに息を吐いた。
『だったら普通にオリビアも誘って行けば? それが一番平和だよ』
「なに言ってるの?」
これでは話が進まない。
コンちゃんの腕を掴んで「ねー! 内緒で行こうよ!」と引っ張っておく。体重をかけて引っ張るけど、コンちゃんはびくともしない。けれどもオリビアに負けたくはないという思いはあるのだろう。やや間を置いてから「わかった」と呟いた。
コンちゃんは人間に興味がない割には、オリビアをどこかライバル視しているような雰囲気もある。俺がなにかと「オリビア」と連呼しているからだろうか。謎だ。
「では私の言うことに従え」
「なんで?」
唐突に偉そうな発言をしたコンちゃんは、器用に片眉を持ち上げる。
「おまえに任せてもろくな計画を立てない。私が計画を立てる」
「コンちゃん、計画とか立てられるのか?」
「私をなんだと思っている」
「キツネおばけ」
人間にもなれる不思議なキツネ。
途端にコンちゃんが顔をしかめた。
「……やはりやめるか」
「やめないでぇ!」
コロコロ意見を変えるコンちゃんに、俺は再びぴょんぴょん跳ねる。どうやらキツネおばけと言ったのが気に食わなかったらしい。慌ててごめんねと謝っておく。やれやれと息を吐いたコンちゃんは、「考えておいてやる」と非常に上から目線の言葉を口にした。
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