ビッチキャラに成り代わり!セフレとの関係を切ったら幼馴染騎士が急接近してきた件

岩永みやび

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10 謝罪

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「というわけで、もしかしたらドミニク隊長に命狙われるかもしれない。なんかごめんね」
「おまっ! なんでそうなる」

 ウォルトの帰宅後。
 両手を合わせて深々謝罪した俺に、ウォルトが言葉を失った。

 天を仰いでしばし考えたウォルトは、やがて額を押さえて深く息を吐いた。

「クソが」
「申し訳ありません」

 再度頭を下げて、精一杯謝罪の意を表明しておく。
 俺もうっかりウォルトの名前を出したのは、悪いと思っている。けれどもあの時の俺は本気で命の危機を感じていたのだ。元はと言えば奔放な生活を送っていたレオのせいなのだ。俺はその尻拭いを押し付けられたようなものである。つまり俺も被害者。

「ごめんね。ほんとごめんね。だってドミニク隊長が怖いんだもん」
「っ!」

 ベッドに腰掛けたまま上目遣いで謝ると、なぜかウォルトが息を呑んだ。

 そのまま勢いよく俺から顔を背けたウォルトは、仕方がないと言わんばかりに腕を組む。

「やけに隊長に睨まれるなと思っていたんだが」
「あー、俺のせいだね」

 俺と話した後、ドミニクは仕事に戻った。その間、ずっとウォルトはドミニクに睨まれていたらしい。睨まれる心当たりのないウォルトは、心底困惑したに違いない。マジごめん。

 だが、ドミニクだって本気でウォルトの命を狙っているわけでもない。あの様子だと多少の嫌がらせくらいはされるかもしれないけど。

「そんなことよりさ」
「おまえ、他人事だと思いやがって」

 恨めしそうな視線を送ってくるウォルト。笑って誤魔化した俺は、話題を変える。

「なんか今日だけで五人くらいに声かけられた」

 ここは騎士団の活動拠点である。当然ながら騎士がたくさんいる。ドミニクに絡まれて恐怖に竦んでいた俺は、あの後すぐにウォルトの部屋に避難しようと思った。けれどもその道中、なんかたくさん声をかけられた。

 レオは美男子だし、目を惹く容姿をしている。だから注目されること自体は不思議ではないのだが、注目のされ方がなんか変だった。

「それでさ。その声かけてきた五人が五人ともね。自分はレオの恋人だって言うんだけど」
「へー」
「いや、なんだよ。その冷たい目」

 こっちは急に現れた恋人五人という事実を前にして困惑しているんだぞ。

 けれどもウォルトは冷たい。おまけに「おまえの男癖の悪さはどうしようもないな」と失礼なことを言ってのけた。

 え? マジなの?
 あの五人、マジでレオの恋人なの? 多過ぎない?

 もしかしてドミニクとも本当に付き合っていたのか?

 思い返せば、俺がレオとして目覚めた時。俺はドミニクに押し倒されていた。貞操の危機を感じた俺は咄嗟に逃げたけど。あれって合意だったのか?

 そうだとすればドミニクは中々に憐れだ。
 ベッドに押し倒すとこまで行った相手が、直前になって急に逃げたのだ。プライド傷付けられて当然。

 あ、それでやたら俺の恋愛関係を探ろうとしていたのか。

 ふむふむ納得した俺であるが、現状を理解して固まった。

 いや、クソビッチじゃん。
 ウォルトがレオの悪口を散々言っていたが、ようやくその気持ちがわかった。

 騎士団内という狭い空間にて、同時に何人もの男と付き合っていたらしい。あとなんかセフレっぽいのもちらほら確認できたぞ。

 風紀が乱れきっている。
 レオひとりの介入で、騎士団内の風紀が乱れている。

「……なんかごめんね」

 今度は心からの謝罪をしておく。
 すると俺の顔を眺めていたウォルトが、唐突に俺の頭をわし掴んできた。そのまま頭を締めつけるように力を込められて、「痛い痛い!」と悲鳴をあげる。

 だが無表情のウォルトは力を緩めない。地味に抵抗していると、ようやくウォルトが手を離してくれた。

「痛い」
「うるさい。面倒ばっかり起こしやがって」
「ご、ごめん」

 面倒ばっかり起こしているのは、レオであって俺じゃない。けれども今は俺がレオなので仕方がない。そんな不満が前面に出ていたのだろう。ウォルトが軽く俺の頭を叩いてきた。

「おまえの記憶がないのはわかっている。だが巻き込まれているこっちの身にもなれ」
「はい。すみません」

 ウォルトのお怒りももっともなので、はいはい頷いておく。

 ひと通り俺へと説教したウォルトは、やがて満足したのだろう。ふうと息を吐いて「飯は食ったのか?」と表情を和らげた。

「まだ! 今日はなに食べる?」

 ちょうど腹が減っていた。嬉々として立ち上がる俺に、ウォルトが呆れ顔になる。

 この狭い部屋に食材はほとんどない。ウォルトは料理をしない人らしく、食事は毎日外食。寮内に共有のキッチンはあるが、ウォルトは使用しない。料理ができないのだろう。まぁ、俺もできないけどね。

 早速外出の準備をする俺。苦笑したウォルトが、上着を羽織った。騎士団の制服ではない私服だ。

 ウォルトと共に夜の街へと繰り出した俺は、楽しそうな雰囲気に目移りしていた。既に何度か足を運んでいるが、祭りみたいな雰囲気で楽しい。思わず駆け出すと、後ろからウォルトの気怠い声が飛んでくる。

「おい、レオ。はしゃぐな」
「はしゃいでないよ」
「嘘つけ」

 ふふっと笑って、俺はウォルトの隣に並ぶ。俺は金を持っていないので、もちろんウォルトの奢りである。俺の生活は、すべてウォルト頼り。早いところ自立したいのだが、異世界で自立するというのは中々に難しい。

「何にする? 俺が店選んでもいい?」

 ウォルトを見上げると、彼の眉間に少し皺が寄った。けれどもダメとは言われない。

「あんまり高いところはやめろよ」
「どこが高いのかわかんないや」

 へへっと笑うと、ウォルトが「おい」と険しい顔になった。

 そうして店を探して視線を彷徨わせていた俺であったが、視界を掠めたものに目を見開く。

「え……」

 見間違いかと思って目を擦るが、どう頑張ってもそれは視界から消えない。思わず立ち尽くした俺の背中に、ウォルトが「どうした」と言いながら手を添えてきた。
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