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第二章 目覚め 〜名前を知らない熱〜
12話 ふいの再会
しおりを挟む朝。
あの後なかなか寝付けなかったのに、あやは自分でも驚くほど早く目が覚めていた。
まだ外の空はぼんやりと淡い青で、窓を開けると少し冷たい風が頬を撫でた。
(……はぁ、夢のせいだ……また)
唇に残る感覚が、ほんのりとくすぐったい。
昨夜の夢の中のキスは、朝になっても、まるで本当にあったことのように体に残っていた。
(もう……わたし、どうしちゃったんだろ)
頬が勝手に熱くなるのを、両手で抑える。
服にアイロンをかけ、髪をいつもより丁寧に巻いた。
理由なんてない。
――けど、今日は少しだけ、きちんとしていたかった。
会社に着いて、受付のカウンターに座る。
まいが顔をのぞき込んでくる。
「おはよ~、あや。……てかさ、聞いた?」
「え?」
「さっき連絡あったんだけど……急遽、また風間さん来るって。午前中、資料の件でだって」
「……え、うそ……」
その瞬間、心臓が「ドクン」と跳ねた。
夢の記憶が、一気に熱を帯びて蘇る。
(うそ……今日、また来るの……?)
「すれ違うだけかもだけど、見れるね、ねぇ~~~?」
まいが肩を寄せてきてニヤニヤ笑う。
「ちょ、ちょっと……」
声が裏返りそうになりながら、あやは視線を逸らす。
でも、心の奥では、完全に落ち着かなくなっていた。
10時を少し過ぎたころ――
「お世話になっております」
エレベーターの廊下から、低く落ち着いた声が聞こえた。
あやは反射的に背筋を正す。その時――
「風間さんっ!」
乾いた靴音と共に、スーツ姿の社員、間宮が受付を遮って足早に近づいてきた。
背中には緊張感がにじんでいて、手には資料を数枚抱えている。
「間宮さん、お世話になります」
「あ、すみません。
昨日の今日でお呼びたてしてしまって。
昨日の件で、こちらの資料、至急確認が……」
間宮の声はやや焦っていて、周囲の空気が少しだけぴんと張りつめた。
見えたのは、横顔だけ。
スーツの肩越しに一瞬だけ、視線が、確かにこちらを――
(……目が……)
数秒だった。
けれど、その目はすぐに鋭いビジネスモードに切り替わった。
でも、あやの胸は、その短い時間に全部持っていかれたようにドキドキしている。
彼の背中が間宮と共に会議室の奥に消えるまで、あやは動けなかった。
まいがすぐ後ろから囁く。
「……見てたよね、絶対あれ、こっち……」
「……知らない……」
小さくうつむいて、答えるあやの耳は、真っ赤になっていた。
まだ何も始まっていないはずなのに。
ただ、夢を見ただけなのに。
(……どうしてこんなに、気になっちゃうの……)
ポケットの中で、指が無意識に、ないはずのハンカチを探していた。
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