道産子令嬢は雪かき中 〜ヒロインに構っている暇がありません〜

荒瀬ヤヒロ

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18、レイシール・ホーカイドはぼーっと過ごしたい

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 ゲームのレイシールはまっすぐで色素の薄い金髪に青白い透き通るような肌をしていたのだけれど、今の私の容姿はゲームとはちょっと違っている。具体的に言うと、肉付きが。
 ごはんをもりもり食べて適度に雪かきで体を動かしたせいか、筋肉がついたのである。腕とか太股とか、こう……みっしりと肉が詰まっている。
 髪も邪魔だから令嬢としてギリギリの長さに切ってしまっているし、日に焼けて傷んだせいか毛先がちょっと跳ねてしまっている。もりもり食べて日を浴びたため血色もいい。

 自分ではそこそこ美少女だと思うんだけど、学園にやってきて他の家の可憐な令嬢を目にするとちょっと自信がなくなる。筋肉つけすぎたかな?
 皆、細い。吹けば飛びそうな華奢な子ばっかりだ。
 ちなみにジェンスからは顔を合わせる度に「可愛い」と言われるが、奴は部屋でブリッジしていた私を見ても「半円になっているレイシーが可愛い」とほざく男なので信用ができない。

「レイシール・ホーカイドです。よろしくお願いします」

 入学式を終え、初めての教室でクラスメイト達に自己紹介した私は、突き刺さる視線に自分の容姿がどこかおかしいのかと考えていた。

 順番に自己紹介を終え、担任が授業内容の説明を始める。

 それをぼーっと聞き流していると、担任が「では次に、監督生の発表に移る」と宣言した。

 あ、そうか。確かそんなものがあったわね。
 この学園には生徒会というものがない。代わりに、各学年から成績上位三名が監督生に任命される。まあ、仕事の内容は生徒会がやることと変わりないんだけれどね。

 アルベルト他の攻略対象達は皆、監督生に選ばれているので、ヒロインは頑張ってステータスをあげて監督生に選ばれないといけないのよね。

「まず、一人目の監督生はAクラスのルイス・ミヤッギ」

 うわ、出た。

 ルイス・ミヤッギ。
 ゲームではルイス・ホーカイドだった男。
 つまり、攻略対象であり私の義弟となるはずだった男だ。ヒョードルお兄様が生存しているためにもちろん我が家とは関わりなく生きている。

「二人目はCクラスのティアナ・カーナガワ」

 三人目はニチカ・チューオウだろうなぁ。二年生の監督生に大阪と沖縄……オッサカーとナワーキオがいて、三年の監督生に言わずもがなの東京都ことアルベルト・トキオートが入っているのだ。
 ちなみにニチカが監督生に選ばれなかった時でもレイシールが選ばれることはなかった。このゲーム、ことごとくレイシールに厳しい。悪役令嬢だからだろうけど。

「三人目は我がDクラスのレイシール・ホーカイドだ。皆、ホーカイドに協力してよりよい学園づくりを目指すように」
「……はぇ?」

 完全に他人事のていで聞いていた私は、万雷の拍手にぱちくりと目を瞬いた。




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