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しおりを挟むサリーは人気のない校舎の突き当たりまでやってくると、誰もいない空き教室へ入り窓を開けた。
「ふう……」
新鮮な空気に触れて、思わず息を吐く。
うまくいっている。大丈夫だ。あとほんの少しの我慢よ。自分にそう言い聞かせる。
「もうすぐなんだから……」
「何がだ?」
ぽつりと呟いた独り言に反応があって、サリーはばっと振り向いた。
誰もいないと思っていた教室の片隅に、一人の男子生徒が座っていた。
「誰?」
「俺は三年のオーガスト・フロイスンだ。お前、サリー・ホールデンだろ。悪役令嬢って噂の」
オーガストはニヤニヤと笑ってサリーを見た。
サリーはきっと眉をつり上げてオーガストを睨みつけた。
「何か用なの?」
「別に。泣きそうな顔をしていたから気になっただけだ」
サリーは目を見開いた。意地悪そうに歪んでいた顔が、つかの間、幼い印象になる。
だが、すぐにまた目元をつり上げる。
「変なこと言わないで。見間違いよ」
「いいや、今にも泣き出しそうだったぜ」
「見間違いだって言ってるでしょう!」
サリーは踵を返して足早に教室から出て行こうとした。
だが、その前にオーガストの腕に行く手を阻まれてしまった。
「待てよ。噂に聞く悪役令嬢とは思えないな。何か理由があるんじゃないのか」
至近距離で顔を覗き込まれて、サリーはぐっと一瞬怯んだ。足が震えそうになったが、動揺と緊張を押し隠してオーガストを睨んだ。
「理由なんてないわ。そもそも、貴方には関係のないことよ」
サリーはオーガストの腕の下をくぐって教室から走り出た。オーガストはそれ以上は追ってこなかった。
サリーはほっと息を吐き、動悸する胸をそっと押さえた。
***
魔女が住むという森で、シエラとサリーは一人の老婆と出会った。
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