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08「令嬢の素顔」
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「お坊ちゃま。報告書がそろいました」
「うむ。イデアはどうした?」
「本日は他となっております」
仕事を掛け持ちしているメイドは多い。イデアは戦闘にも詳しいのでメイド相手に心得などを指導していた。メイドギルド経由で他家にも出入りし、冒険者ギルドにも顔がきく。
ヴァレンテはうやうやしく書類を差し出した。
「ふむ、婚約相手は当然なしか……」
シルヴェリオは報告書をめくった。貴族同士の婚姻は政治でもあるので、婚約の段階から王政の書類として報告が義務付けられていた。閲覧も自由だ。
「フランチェスカ嬢は教会に通う習慣あり。活動も積極的。セルモンティ伯爵家は教会に多額の寄付か」
公的な寄付の記録も閲覧可能だ。経済活動は順調なのだろう。
「サークルへの参加は今回が初めて。休日は友人と街の散策など。他の男の影はなさそうだな。当然か」
報告には兆候なし、と書かれていた。
「男がいると、メイド仲間の噂にもないそうです。誰とどこの令嬢がイイ仲だとか……。まあ、女どもは口が堅いですからなあ」
メイドギルドの鉄の掟。たとえシルヴェリオが毎夜フランチェスカ嬢をこの部屋に連れ込み、毎朝イデアがベッドメイクしてもそれが外部に漏れることはない。
「いや私も口は堅いですな!」
「しかし噂になる場合もある。本人たちが、特に隠さない場合だ」
「つまり本気はいない、ということですな」
「うむ……。秘密とてないさ」
秘密裏に男と付き合っている可能性は残る。互いに隠す事情がある、男が隠したく女性が同意した場合等々などだ。貴族としての事情などもあった。
(しかし、あの家にそんな事情はない。行動パターンに不明な時間は存在しないが――)
シルヴェリオは書類をめくった。
「ほう。我が領地の南国フルーツを仕入れているな」
それはフィオレンツァ商会からフランチェスカの屋敷への納品リストであった。
「令嬢様たちへの認知が広まっているようですな。品薄になりはしないかと心配されております」
(フランチェスカだけの現象ではないか……)
他には雑貨消耗品が並ぶだけだ。行動につながるような手がかりはない。
「情報が少ないですなあ」
フランチェスカは派手な暮らしぶりではなさそうだった。学院での行動と一致している。毎夜パーティーなどを渡り歩いている令嬢とているのだ。
シルヴェリオは満足する。幼少の頃に抱いた恋心のままの、フランチェスカであったからだ。
「学院と街中、ダンジョンは押さえられるが……」
「教会は私も明るくありません。デメトリアが教会の仕事をしておりますな」
「そちらに協力を求めてみるか」
「さっそく伝言を飛ばします」
今のところ接点は学院とダンジョンしかない。それ以外を求めるなら、相手の懐に飛び込むしか方法がなかった。
「うむ。イデアはどうした?」
「本日は他となっております」
仕事を掛け持ちしているメイドは多い。イデアは戦闘にも詳しいのでメイド相手に心得などを指導していた。メイドギルド経由で他家にも出入りし、冒険者ギルドにも顔がきく。
ヴァレンテはうやうやしく書類を差し出した。
「ふむ、婚約相手は当然なしか……」
シルヴェリオは報告書をめくった。貴族同士の婚姻は政治でもあるので、婚約の段階から王政の書類として報告が義務付けられていた。閲覧も自由だ。
「フランチェスカ嬢は教会に通う習慣あり。活動も積極的。セルモンティ伯爵家は教会に多額の寄付か」
公的な寄付の記録も閲覧可能だ。経済活動は順調なのだろう。
「サークルへの参加は今回が初めて。休日は友人と街の散策など。他の男の影はなさそうだな。当然か」
報告には兆候なし、と書かれていた。
「男がいると、メイド仲間の噂にもないそうです。誰とどこの令嬢がイイ仲だとか……。まあ、女どもは口が堅いですからなあ」
メイドギルドの鉄の掟。たとえシルヴェリオが毎夜フランチェスカ嬢をこの部屋に連れ込み、毎朝イデアがベッドメイクしてもそれが外部に漏れることはない。
「いや私も口は堅いですな!」
「しかし噂になる場合もある。本人たちが、特に隠さない場合だ」
「つまり本気はいない、ということですな」
「うむ……。秘密とてないさ」
秘密裏に男と付き合っている可能性は残る。互いに隠す事情がある、男が隠したく女性が同意した場合等々などだ。貴族としての事情などもあった。
(しかし、あの家にそんな事情はない。行動パターンに不明な時間は存在しないが――)
シルヴェリオは書類をめくった。
「ほう。我が領地の南国フルーツを仕入れているな」
それはフィオレンツァ商会からフランチェスカの屋敷への納品リストであった。
「令嬢様たちへの認知が広まっているようですな。品薄になりはしないかと心配されております」
(フランチェスカだけの現象ではないか……)
他には雑貨消耗品が並ぶだけだ。行動につながるような手がかりはない。
「情報が少ないですなあ」
フランチェスカは派手な暮らしぶりではなさそうだった。学院での行動と一致している。毎夜パーティーなどを渡り歩いている令嬢とているのだ。
シルヴェリオは満足する。幼少の頃に抱いた恋心のままの、フランチェスカであったからだ。
「学院と街中、ダンジョンは押さえられるが……」
「教会は私も明るくありません。デメトリアが教会の仕事をしておりますな」
「そちらに協力を求めてみるか」
「さっそく伝言を飛ばします」
今のところ接点は学院とダンジョンしかない。それ以外を求めるなら、相手の懐に飛び込むしか方法がなかった。
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