幼少期に相思相愛だった相手に婚約を申し込んだら袖にされた。 十二年疎遠だったから無理もない? 私たちは毎夜語らっていたのになぜ……。

川嶋マサヒロ

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13「飲み会をストーク(捕食)」

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 三人は屋敷に戻り応接ダイニングに入った。ワインとオードブルを楽しんでいると、ほどなくして来客用のディナーが運ばれる。
「じゃ、ゴチになるぜ」
「先に頂きます」
「うむ。今日の目標、セルモンティ・フランチェスカは教会に通っているそうだ」
「そっちはデメトリアの専門だなー」
「調べておきました。西の管轄で奉仕活動に参加しているようです。その関係でレイ西・カチェル教会に通い近くの孤児院なども手伝っているとか」
「デメトリアはどのように係わっているのだ?」
「教会騎士に登録しておりますので、そちらのクエストで奉仕しております」
シスター修道女の補佐もしてんだろ?」
ヒール癒しグレースも少しは使えますから」
「そのレイ西・カチェル教会について情報を集めてくれ」
「分かりました。信心深くお優しいお方と評判のようですね」
「そうだろ、そうだろ。さすが我が君だ」
 次々に運ばれてれる料理を片付けつつ、カールラはワインをボンボン開けた。シルヴェリオは冒険者話などに耳を傾ける。【サンクチュアリ】の活動はいずれダンジョン外にも及ぶと考えていた。先を読まねばならない。

 ほどなくしてチェレステが帰る。
「ただいまニャーン」
「早かったな。どうだった?」
「健全な学生さんたちニャン」
 どうやら羽目を外して,おかしなゲームなどは強行しなかったようだ。
「凄いご馳走ニャン。ずるいニャン」
「悪かったな。すぐに用意してくれ」
「かしこまりました」
 イデアはうやうやしく頭を下げた。
「悪いなー。私たちいつも酒場ビールだしな」
 ビールは庶民の飲み物だ。貴族の子弟たちが何をたしなんだのか、シルヴェリオは興味が湧く。
「学生どもは何を飲んでいたんだ」
「ホッピーニャン」
「!」
 そのような酒の名を聞いたことがない。シルヴェリオは敗北感に顔を歪めた。今、眼前になら並ぶのはたかだか二十年物のワインだ。
(高級酒か? 恐るべし、冒険サークル【サンクチュアリ】……)
 落ち込むのはホドボトにして続きを進めねばならない。シルヴェリオは不安になった。
「その……、どのような感じだったのだ? 酔ってたとか……」
「アルコール度数高めを飲んでたニャン」
「女子たちを酔わして何をするつもりなのだ!」
「男子は皆ベロベロだったニャン。女子たちは強いニャン」
「酒豪令嬢か……」
 シルヴェリオひとまず安心する。懐から硬貨の入った封筒を取り出す。
「これが追加の報酬のだ」
「ごっつぁんニャン」

「さて――」
 チェレステの胸から追跡光球出てきて、それはテーブルの上に浮かび大きくなった。そに打ち上げ会の様子が映る。シルヴェリオは手をかざして特定の映像を決めた。
「ぼんやりとだが情報をつかめる」
「シルヴはそんなスキルばっかりですね」
「壁に耳あり、扉の隙間に目ありだな-」
「有力なスキルだよ」
「使いようだよなー」
 長いテーブルに男女が差し向かいで座っていた。フランチェスカは新人なので端にいる。隣は学院の広場で話しかけてきた女子だ。向かいの男子は背中しか見えない。
「こいつはしきりに話しかけている。狙っているな。間違いない」
「幹事だから気をつかっているだけニャン」
「こいつはフフランチェスカの方ばかりなめ回すように見ている。許さんぞっ!」
「もぐっ……。その隣にいる女子が気になってるみたいニャン」
 チェレステは料理にパクつきながら答えた。
「やれやれ。せっかく情報を得ても分析がこれじゃなー」
「先入観が先に立っていますね。もう少し客観的に考えねば」
「そうか……」
 シルヴェリオは自身の前のめり感を反省する。すると突然フフランチェスカが隣の女子と爆笑した。
「! 何を笑っているのだ?」
「ダンジョンでの戦いを面白おかしく話しているニャン。もぐ……。リーダーが頑張ってるニャン」
(令嬢の気を引くための話術か。なかなかしたたかなリーダーだな)
「スゲー盛り上がってるな。冒険者の酒場もこんな感じだぜ」
 シルヴェリオは猛烈な疎外感に襲われた。自分の世界とはずいぶんと違う世界だ。冒険者のノリとはこんな感じかと、令嬢の笑顔に見入る。
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