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52「群雄たちの対決」
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【美・ガーディアンズ】の校内街宣活動は、本日も盛況である。日に日にギャラリー学生は増えていた。
『ヤツは女性を物としてしか見ていない――』
ウマーノ・ガースは大勢の聴衆を前にしてご満悦の様子だ。自信たっぷりに魔導メガホンを持つ。
『――お前たち全てがモノ扱いなのだよ……』
女子たちは互いに顔を見合わせた。
『ただ利用されているだけだ。使い捨てのアクセサリーとして』
「お待ちなさいっ! いいかげんな言説など、この学院では許されませんわっ!」
一人の女子生徒がたまらずに声をあげた。群衆がどよめく。
生徒会長ジョルダーノ・ロレーナ辺境伯令嬢。人呼んで女帝ロレーナ。
『ヤツの創作物を見るがよい。女性をモノとしか扱わない、蔑視に満ち溢れているぞ!』
「我らが生徒会は、このような活動は認めておりません。ただちに退去いたしなさい!」
『我らには正当な理由がある。生徒会自ら自由な校風を否定するのかな?』
「ならば、その理由とやらを説明いたしなさい!」
『学院のアイドルに対して失礼な対応。断じて許すまじ』
「結局はそれかしら?」
『自分に行為を寄せない女子は、徹底危機に無視する。それこそが蔑視! 蔑視、蔑視、蔑視っ!』
「「「ベントラーッ!」」」
「詭弁です。特定の美の押しつけこそが蔑視ではないですかっ!」
『ふふっ、【貴公子親衛隊】。生徒会を名乗るなど、それこそが詭弁ではないか?』
女帝ロレーナの背後に、四十余名の女子たちが居並ぶ。ついに【貴公子親衛隊】がその姿を現したのだ。
「知っているのなら、話が早いですわ……」
白い三角マスクを被った【美・ガーディアンズ】と、女子親衛隊員たちの間に火花が散る。
「「「アールデルス・バイエンス・バーイエンス・ボースマブラッケ・テン・ボスケ・ゼンデーン。ベントラー、ベントラー……」」」
「こけおどしはけっこうです。皆さん、この人たちの目的は他にございますわ。この一件で一番得をするのは誰かしら?」
ロレーナの問い掛けに学院生たちはしばし考えた。芸術文化に造詣がある者たちの判断に賭けたのだ。
「得をするヤツなんているのか?」
「損する人はいるけどなあ……」
「登場人物たちから、消去法で絞っていけば――」
「「「ベントラーッ!」」」
「ひっ……」
『利を得る者など存在しない。我らは美を貶める者に、女神の鉄槌を下すのみ』
「どうかしら?」
雰囲気が犯人捜しへと移りつつあった。ウマーノ・ガースの威嚇も効果を発揮しない。皆がこの問題の発端について考えた。
「オタクたち。ちょっと待ったあっ!」
そこに唐突に新たな戦力が乱入する。魔導具研究会のメンバーたちが勢揃いしていた。白い布が掛けられたキャンバスを抱えている。
「彼こそが美の追究者なんだ。これを見ろっ!」
その布が取り払われ、とどよめきが起こる。四枚の【ラヴキュア】画が並び、女子生徒たちは目を剥いた。
「「「ベントラーッ……」」」
『おお、我らが女神たち。この絵を踏みにじる者こそが――』
「貴公子こそが、美のガーディアンなんだよっ!」
「そうだっ! この絵の作者が貴公子なんだよっ!」
『なんだとお!? 差別主義者の貴公子が、こんな絵を描くなど信じられるかあっ!』
「「「ベントラーッ……」」」
「そうです! 貴公子様がお描きになるのは神々しい女性。つまり女神様だけなのですわっ! そんなものは偽物ですっ!」
「「「ベンッ……」」」
【美・ガーディアンズ】はうっかり女帝ロレーナに賛同しそうになる。
「これは本物さ。さあ、みんな見てくれ! 芸術の天才、フィオレンツァ・シルヴェリオ画伯の新作だっ!」
ガストーネが声を張り上げ、生徒たちは興味津々で絵に集まる。じっくりとタッチを観察し分析を始めた。
「これは、本物じゃないの?」
「ただの真似じゃないぜ。ホントかあ?」
「だけどサインがないぜ」
「僕らの依頼だからさ。天才の名声は必要ない。ただ僕らはこの絵を欲し、そして貴公子は応えてくれた。その結果がこの素晴らしい絵なのさ」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい。わたくしが判定いたしますわ」
女帝が男子たちを押しのけ前に出る。女子隊員たちも続いた。
「信じられない。これは本物ですわ……」
「「「おおっ……」」」
男子たちは唸る。生徒会長からのお墨付きが出たのだ。
「でも、いったいいつ描いたんだ? モデルを頼んだのか?」
「天才は一目見ただけで、ここまで描けるんだ。この衣装は想像だよ。残念だけどね」
そう言ってガストーネは肩をすくめた。
「承服できません! この方々が女神に肩を並べるなど、一部の生徒だけを描くなど贔屓ではないですかっ!」
「いや。女子生徒全員を描くなど、さすがに無理ですよ」
「なぜこの三人を……」
「だから僕らの依頼でして……。あっ、本人が来ました。聞いてみては?」
「ええっ!!」
【美・ガーディアンズ】はいつの間にか消えていた。見事な敵前逃亡だ。
『ヤツは女性を物としてしか見ていない――』
ウマーノ・ガースは大勢の聴衆を前にしてご満悦の様子だ。自信たっぷりに魔導メガホンを持つ。
『――お前たち全てがモノ扱いなのだよ……』
女子たちは互いに顔を見合わせた。
『ただ利用されているだけだ。使い捨てのアクセサリーとして』
「お待ちなさいっ! いいかげんな言説など、この学院では許されませんわっ!」
一人の女子生徒がたまらずに声をあげた。群衆がどよめく。
生徒会長ジョルダーノ・ロレーナ辺境伯令嬢。人呼んで女帝ロレーナ。
『ヤツの創作物を見るがよい。女性をモノとしか扱わない、蔑視に満ち溢れているぞ!』
「我らが生徒会は、このような活動は認めておりません。ただちに退去いたしなさい!」
『我らには正当な理由がある。生徒会自ら自由な校風を否定するのかな?』
「ならば、その理由とやらを説明いたしなさい!」
『学院のアイドルに対して失礼な対応。断じて許すまじ』
「結局はそれかしら?」
『自分に行為を寄せない女子は、徹底危機に無視する。それこそが蔑視! 蔑視、蔑視、蔑視っ!』
「「「ベントラーッ!」」」
「詭弁です。特定の美の押しつけこそが蔑視ではないですかっ!」
『ふふっ、【貴公子親衛隊】。生徒会を名乗るなど、それこそが詭弁ではないか?』
女帝ロレーナの背後に、四十余名の女子たちが居並ぶ。ついに【貴公子親衛隊】がその姿を現したのだ。
「知っているのなら、話が早いですわ……」
白い三角マスクを被った【美・ガーディアンズ】と、女子親衛隊員たちの間に火花が散る。
「「「アールデルス・バイエンス・バーイエンス・ボースマブラッケ・テン・ボスケ・ゼンデーン。ベントラー、ベントラー……」」」
「こけおどしはけっこうです。皆さん、この人たちの目的は他にございますわ。この一件で一番得をするのは誰かしら?」
ロレーナの問い掛けに学院生たちはしばし考えた。芸術文化に造詣がある者たちの判断に賭けたのだ。
「得をするヤツなんているのか?」
「損する人はいるけどなあ……」
「登場人物たちから、消去法で絞っていけば――」
「「「ベントラーッ!」」」
「ひっ……」
『利を得る者など存在しない。我らは美を貶める者に、女神の鉄槌を下すのみ』
「どうかしら?」
雰囲気が犯人捜しへと移りつつあった。ウマーノ・ガースの威嚇も効果を発揮しない。皆がこの問題の発端について考えた。
「オタクたち。ちょっと待ったあっ!」
そこに唐突に新たな戦力が乱入する。魔導具研究会のメンバーたちが勢揃いしていた。白い布が掛けられたキャンバスを抱えている。
「彼こそが美の追究者なんだ。これを見ろっ!」
その布が取り払われ、とどよめきが起こる。四枚の【ラヴキュア】画が並び、女子生徒たちは目を剥いた。
「「「ベントラーッ……」」」
『おお、我らが女神たち。この絵を踏みにじる者こそが――』
「貴公子こそが、美のガーディアンなんだよっ!」
「そうだっ! この絵の作者が貴公子なんだよっ!」
『なんだとお!? 差別主義者の貴公子が、こんな絵を描くなど信じられるかあっ!』
「「「ベントラーッ……」」」
「そうです! 貴公子様がお描きになるのは神々しい女性。つまり女神様だけなのですわっ! そんなものは偽物ですっ!」
「「「ベンッ……」」」
【美・ガーディアンズ】はうっかり女帝ロレーナに賛同しそうになる。
「これは本物さ。さあ、みんな見てくれ! 芸術の天才、フィオレンツァ・シルヴェリオ画伯の新作だっ!」
ガストーネが声を張り上げ、生徒たちは興味津々で絵に集まる。じっくりとタッチを観察し分析を始めた。
「これは、本物じゃないの?」
「ただの真似じゃないぜ。ホントかあ?」
「だけどサインがないぜ」
「僕らの依頼だからさ。天才の名声は必要ない。ただ僕らはこの絵を欲し、そして貴公子は応えてくれた。その結果がこの素晴らしい絵なのさ」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい。わたくしが判定いたしますわ」
女帝が男子たちを押しのけ前に出る。女子隊員たちも続いた。
「信じられない。これは本物ですわ……」
「「「おおっ……」」」
男子たちは唸る。生徒会長からのお墨付きが出たのだ。
「でも、いったいいつ描いたんだ? モデルを頼んだのか?」
「天才は一目見ただけで、ここまで描けるんだ。この衣装は想像だよ。残念だけどね」
そう言ってガストーネは肩をすくめた。
「承服できません! この方々が女神に肩を並べるなど、一部の生徒だけを描くなど贔屓ではないですかっ!」
「いや。女子生徒全員を描くなど、さすがに無理ですよ」
「なぜこの三人を……」
「だから僕らの依頼でして……。あっ、本人が来ました。聞いてみては?」
「ええっ!!」
【美・ガーディアンズ】はいつの間にか消えていた。見事な敵前逃亡だ。
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