幼少期に相思相愛だった相手に婚約を申し込んだら袖にされた。 十二年疎遠だったから無理もない? 私たちは毎夜語らっていたのになぜ……。

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
53 / 53

52「群雄たちの対決」

しおりを挟む
【美・ガーディアンズ守護者たち】の校内街宣活動は、本日も盛況である。日に日にギャラリー学生は増えていた。
『ヤツは女性を物としてしか見ていない――』
 ウマーノ・ガースは大勢の聴衆を前にしてご満悦の様子だ。自信たっぷりに魔導メガホンを持つ。
『――お前たち全てがモノ扱いなのだよ……』
 女子たちは互いに顔を見合わせた。
『ただ利用されているだけだ。使い捨てのアクセサリー装身具(そうしんぐ)として』
「お待ちなさいっ! いいかげんな言説など、この学院では許されませんわっ!」
 一人の女子生徒がたまらずに声をあげた。群衆がどよめく。
 生徒会長ジョルダーノ・ロレーナ辺境伯令嬢。人呼んで女帝ロレーナ。
『ヤツの創作物を見るがよい。女性をモノとしか扱わない、蔑視に満ち溢れているぞ!』
「我らが生徒会は、このような活動は認めておりません。ただちに退去いたしなさい!」
『我らには正当な理由がある。生徒会自ら自由な校風を否定するのかな?』
「ならば、その理由とやらを説明いたしなさい!」
『学院のアイドルに対して失礼な対応。断じて許すまじ』
「結局はそれ・・かしら?」
『自分に行為を寄せない女子は、徹底危機に無視する。それこそが蔑視! 蔑視、蔑視、蔑視っ!』
「「「ベントラーッ!」」」
「詭弁です。特定の美の押しつけこそが蔑視ではないですかっ!」
『ふふっ、【貴公子親衛隊】。生徒会を名乗るなど、それこそが詭弁ではないか?』
 女帝ロレーナの背後に、四十余名の女子たちが居並ぶ。ついに【貴公子親衛隊】がその姿を現したのだ。
「知っているのなら、話が早いですわ……」
 白い三角マスクを被った【美・ガーディアンズ守護者たち】と、女子親衛隊員たちの間に火花が散る。
「「「アールデルス・バイエンス・バーイエンス・ボースマブラッケ・テン・ボスケ・ゼンデーン。ベントラー、ベントラー……」」」
「こけおどしはけっこうです。皆さん、この人たちの目的は他にございますわ。この一件で一番得をするのは誰かしら?」
 ロレーナの問い掛けに学院生たちはしばし考えた。芸術文化に造詣ぞうけいがある者たちの判断に賭けたのだ。
「得をするヤツなんているのか?」
「損する人はいるけどなあ……」
「登場人物たちから、消去法で絞っていけば――」
「「「ベントラーッ!」」」
「ひっ……」
『利を得る者など存在しない。我らは美を貶める者に、女神の鉄槌を下すのみ』
「どうかしら?」
 雰囲気が犯人捜しへと移りつつあった。ウマーノ・ガースの威嚇も効果を発揮しない。皆がこの問題の発端について考えた。

「オタクたち。ちょっと待ったあっ!」
 そこに唐突に新たな戦力が乱入する。魔導具研究会のメンバーたちが勢揃いしていた。白い布が掛けられたキャンバスを抱えている。
「彼こそが美の追究者なんだ。これを見ろっ!」
 その布が取り払われ、とどよめきが起こる。四枚の【ラヴキュア】画が並び、女子生徒たちは目を剥いた。
「「「ベントラーッ……」」」
『おお、我らが女神たち。この絵を踏みにじる者こそが――』
「貴公子こそが、美のガーディアン守護者なんだよっ!」
「そうだっ! この絵の作者が貴公子なんだよっ!」
『なんだとお!? 差別主義者の貴公子が、こんな絵を描くなど信じられるかあっ!』
「「「ベントラーッ……」」」
「そうです! 貴公子様がお描きになるのは神々しい女性。つまり女神様だけなのですわっ! そんなものは偽物ですっ!」
「「「ベンッ……」」」
【美・ガーディアンズ守護者たち】はうっかり女帝ロレーナに賛同しそうになる。
「これは本物さ。さあ、みんな見てくれ! 芸術の天才、フィオレンツァ・シルヴェリオ画伯の新作だっ!」
 ガストーネが声を張り上げ、生徒たちは興味津々で絵に集まる。じっくりとタッチを観察し分析を始めた。
「これは、本物じゃないの?」
「ただの真似じゃないぜ。ホントかあ?」
「だけどサインがないぜ」
「僕らの依頼だからさ。天才の名声は必要ない。ただ僕らはこの絵を欲し、そして貴公子は応えてくれた。その結果がこの素晴らしい絵なのさ」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい。わたくしが判定いたしますわ」
 女帝が男子たちを押しのけ前に出る。女子隊員たちも続いた。
「信じられない。これは本物ですわ……」
「「「おおっ……」」」
 男子たちは唸る。生徒会長からのお墨付きが出たのだ。
「でも、いったいいつ描いたんだ? モデルを頼んだのか?」
「天才は一目見ただけで、ここまで描けるんだ。この衣装は想像だよ。残念だけどね」
 そう言ってガストーネは肩をすくめた。
「承服できません! この方々が女神に肩を並べるなど、一部の生徒だけを描くなど贔屓・・ではないですかっ!」
「いや。女子生徒全員を描くなど、さすがに無理ですよ」
「なぜこの三人を……」
「だから僕らの依頼でして……。あっ、本人が来ました。聞いてみては?」
「ええっ!!」
【美・ガーディアンズ守護者たち】はいつの間にか消えていた。見事な敵前逃亡だ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...