【BL】消滅する前に…

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甘い時間

4. 西野清貴の場合

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 勤が大学に行ってから胸騒ぎが収まらなくて、急いでタクシーに乗って大学に駆けつけた。

 フラつく足腰を支えるため、晴天だと言うのに傘を杖代わりにして勤のいる講堂までやって来た。

 あ♡勤………と、

 徳永弘明………。


 勤の仲のいい友達だとは解っているけど徳永は俺とは身長や容姿がまるで逆なんだ。

 徳永が隣でピッタリと座っている。


 何だよあれ! 徳永と同じ講義を取っているのは知っていたけど、いつもあんなふうに徳永と座ってんの? 距離が近すぎないか??

 二人の間に割って入りたい気持ちを押さえて、気付かれないように講堂の隅でこっそり勤を監視する。

 今の所、普通にしているけれど、俺を家に置いていく用事なんて、何があるんだろう?


 あっ!! ちょっと!くっつき過ぎだろそれっ!! 勤に近寄るなよっ!! 

 しかもめちゃくちゃ楽しそうに話してるなんて、イライラするっ!!
 
 
 はっ!! 
 
 俺を越させないようなしたのは女じゃなくて、徳永とイチャイチャするため?!

  
 徳永のこと好きだったとかっ!?

 嫌だ、嫌だ、そんな、徳永のことが好きだなんて…


 手がブルブルと震える。
 

 確かに徳永は俺や勤より背が低くて、可愛いとか庇護欲が湧くかもしれないけど、俺だって勤に可愛く思われるように色々とおねだりとか、可愛い仕草や言葉とか、スキンケアとか頑張ってるんだぞっ。

 俺の身長は勤より少し………2センチ…………6センチくらい大きいけど………身長は変えられないんだから仕方ない。

 二人から目を離さないようにしていると、急に徳永が立ち上がって席を移動した。


 えっ!? 何があった?!
 

 勤は失敗したって顔して後悔しているみたいだぞ?

 あれって、もしかして告白して徳永に振られた?

 
  ………告 白………

 
 悔しいのと嬉しいのがごちゃまぜになって心の中に渦巻く。

  
 ………俺、勤に好きって言われたことない…。

 
 目頭が熱くなって視界が歪む。


 泣くな。

 泣いたらまた不細工になる。


 涙をこらえている間に、やっと講義は終わった。





 勤は学食に行くみたいだ………徳永に告白したことは気が付かないふりして、追いかけて一緒にランチを食べよう。
 
『来ちゃった♡』って言っておどけてみせるんだ………


 
 ……なっ?!


 徳永が勤に駆け寄って行く……何話してるんだ?



 な、 なんで ? ?


 二人は学食とは反対方向に歩いていく。


 何処に行くんだ………嫌だ。


 離れた位置にいたことが災いして、遠くの二人を目で追うのが精一杯で距離が縮まらない。


 人の流れに逆らって歩く二人が早くて、もたもたしているうちに見失った。


 何処、何処に行った?………何処っ!!


 自由がきかないこの身体が悔しい。

 
 廊下に一際目を引く黄色い清掃用の看板が、トイレの出入り口に出ているのが見えた。

 そこには『清掃中』と赤でデカデカと書いてある。


「昼休みに掃除?」


 ! 


 ………ここに二人がいる?!

 これはもう恋する男の直感だ。

 迷うことなく足を踏み入れると案の定、中から勤の声が聞こえてくる。


「………たいんだ。徳永尻を見せてくれ…」



 えっ?



 ………抱きたいんだ。徳永尻を見せてくれ?



 嘘………勤…どうして………? 

 俺は飽きたってこと?

 それともトイレココで徳永をつまみ食いしたいだけ?


 ショックのあまりふらついて反射的に近くの壁にすがりつくと、手にしていた傘を床に落とす。

 二人の視線が俺に集中する。

 冷静に平静を装わなくちゃ


「………こんな看板立てて二人でナニしてんのかな?」


「「西野っ!!」」

「ふふふ、来ちゃった♥」


 どうしよう。

 恐怖で声が震える。

 勤に振られたら………どうしよう…………どうしよう………………
 
 
 
 
 
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