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【白虎編】

白虎様と初めての夜①(※R18)

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 その夜は、宴が開かれ見たことも無いような西の國の豪華な料理が並べられ、命鳥ミンミャオ族の踊り子が美しい羽を羽ばたかせて舞い、狼族の少女が美しい歌声を披披露ひろうした。
 鳴麗の前には、鹿ルー族の美女とラァン族の美少女がすました様子で食事を取っている。
 新参の者の鳴麗に対して、まだ気を許していないような、重苦しい雰囲気と緊張感で鳴麗はあまり箸が進まなかった。
 宴会は嬉しい。
 だが、見知らぬ霊獣達や役人に気を使って食事をするより、白虎帝と二人でお話をしながら食事をしてみたい。そんなふうにぼんやりと考えていると、いつの間にか宴会はお開きになり女官が鳴麗の耳元で囁いた。

『鳴麗様。今宵こよい白虎帝様が貴女様のお部屋に参ります。お体を清めてお待ちになられてください。貴女様には月花の香が宜しいでしょう、焚いておきます』
『え、あ、は、はい』

 鳴麗は上ずった返事をしてしまった。
 北の國から帰る際に『お前を抱きたい』と白虎帝に言われた事を思い出し、赤面する。
 いくら、雄と付きあった事がない鳴麗も『月の印』の症状を知り、龍月に鎮め方を教えて貰って桃源郷の誓いで起こったあの事件を考えれば、意味深な言葉の意味もなんとなく分かる。
 たぶん、これから『愛人』として教科書でさらっと習った『交尾』をするのだろう。
 それなりに身分のある家では、どの種族もたいてい雌も雄も成獣になって、つがいを見つけると、母親が婚姻のために絵巻物を渡す。
 だが、鳴麗は両親に告げる暇もなくここに連れ去られてしまったので、結婚して交尾をすると幼獣ができるということしか分からない。黒龍族の場合は、卵を産むことになるのだが。
 鳴麗は正直なところ『交尾』どんな事をするのかよく知らないし、見当もつかないが四聖獣の一人である白虎帝と交尾をするなんて、失礼があったらどうしようとガチガチに緊張してしまった。

 湯で体を綺麗にし、渡された服を着込むと自室に落ち着いた香りのする香が焚かれていた。まるで静かな夜に輝く満月のような、清らかで爽やかな香りで心地よい。
 白虎が部屋を訪れる間、鳴麗はキョロキョロと周りを見渡したり、尻尾をぱつかせたり落ち着かない様子でそわそわと待っていた。
 遠くから規則正しい鈴の音がして、白虎帝が訪れたことを知る。
 女官によると、初めての逢瀬は狼族の雌二匹が先頭を歩き鈴を鳴らして部屋まで主を導くと、西の國の白虎帝が訪れたことを合図する鈴を三度鳴らす。それが西の國の古いしきたりのようだった。
 そして、言われたとおり鳴麗は扉を開けて白虎帝を招き入れた。
 彼の顔を見た瞬間、緊張と恥ずかしさで心臓が激しく波打ち顔が熱くなるのを感じ慌てて取り繕う。

「ど、どうぞっ!」

 思わず声が裏返り、緊張しているのが白虎に伝わってしまった。
 背の高い白虎は、鳴麗を見下ろしながらふと口元に笑みを浮かべる。雄を知らぬのは、初めて出遭った時の反応から見てもわかっていた事なので、耳をしならせ頬を赤く染める鳴麗の唇を愛でるように親指でなぞった。

「緊張しているのか? まぁ、無理もないか……北の國で俺のことをどう聞いているの知らんが、安心しろ。初めてのおんなを乱暴したり、気絶するほど抱くわけじゃない」
「え、交尾って……き、気絶するんですか??」
「お前の体がどれだけ感じやすいかにもよるな。まぁ、何を言っても今はわからんだろ。ともかく俺に身を任せておけ、心配するな」
「は、はい……?」

 世間で言われているほど、自分は雌を酷い目に合わせる訳ではないと断りを入れたが、本当のところは無垢な鳴麗に夜伽よとぎへの恐怖心を植え付けない事が目的だ。
 かえって彼女におかしな知識がついたような気がするが、部屋の入口で鳴麗の顎を掴むと口付けた。

「んっ……! んぅ……はぁっ」

 白虎帝が慣れた様子で唇を合わせると、舌先を、するりと隙間へと忍ばせる。柔らかな鳴麗の舌先を誘い出し、踊るように絡ませると敏感な口腔内をたどるように撫でた。
 ドクン、と体が打ち震えて『月の印』の発情症状が現れて、思わず白虎の服を掴む。全身が熱くなって、触れられる場所が敏感になり舌を絡めるだけで恥ずかしい甘い声が漏れた。

「んっ……はぁっ、んっ……んんっ、はぁっ……白虎様、はぁっ……息、が……んん」
「はぁ、これで呼吸ができるか? 黒龍族の発情条件は個体によって異なるようだな。やはりお前は口付けで反応する。簡単に他の男に反応せぬよう、俺が躾けてやる」

 もう一度深く口付けられると、ガクガクと足が震えてしまうくらい心地よい舌の動きに、鳴麗は涙を浮かべた。雄と舌を絡めているという行為がどうしてこんなに気持ちいいのか、鳴麗の理解が及ばす呼吸を乱して声を震わせる。
 自分が自分で無くなりそうなくらい、心地よい口付けに頭がぼんやりとする。

「はぁっ……はっ、やっ、白虎様、だめ、腰が抜けちゃ……んんっ、ん」 
「そうか、ならば捕まってろ」

 白虎はそう言うと鳴麗をあの時のように軽々と抱き上げた。反射的に首元に抱きつくと首筋から、柔らかな香りが鼻腔びこうをくすぐりドクン、と心臓が鳴る。
 そまま寝具まで連れて行かれると柔らかなシーツの上に寝かされると、鳴麗は頬を染めながら耳をしならせ、ギュッと胸元に両手を置き目を閉じて震えた。
 白虎のことは恐ろしくないが、初めてのことは怖い。
 覗き込むようにして両手を寝具に置き、ギシっと音を鳴らせて白虎帝が体重をかけると、耳元で吐息がかかった。

「ガチガチに緊張しているな。力を抜けよ、大丈夫だから」
「は、はい……でも、あの、やり方がよくわからなくて……んっ、ふぁっ、あっ……はぁっ」
「じっとしてろ……ん、それだけでいい」

 白虎帝の猫科の分厚い舌先が首筋からゆっくりと舐められると、ぞくそくと尻尾の付け根から背中まで快感が走って体が跳ねた。
 耳朶みみたぶの付け根を唇に含み、耳の形をなぞるように舐められ、鳴麗は瞳をうっすら開けて身悶みもだえる。
 徐々に鳴麗の力が抜けていくのを確認すると、首筋から鎖骨へと唇と舌を這わせされ、思わず息を飲んだ。

「はぁ、ん、ぁっ……あつ、はぁ、体が熱くて、じんじん、します、んっ、んんっ……ゃ、ぬがさな、はずか……し、い……です」

 寝間着の帯を取られ、小さく抗議する鳴麗を白虎帝が嗜虐的しぎゃくてきに微笑んだ。薄青色の瞳が、肉食獣の色香を漂わせている。
 熱っぽい鳴麗の呼吸はさらに乱れ、褐色の肌に汗が滲み始めた。

「俺がそれを鎮めてやるんだよ、鳴麗。見られるのが恥ずかしいか?」

 当然だが成獣になってからは、水狼にも義兄にも裸体を見られた事は無い。ぼんやりと表情を蕩けさせながら、鳴麗はこくりと頷いた。
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