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ストーカーと宗教④
しおりを挟むドート、お前への罰はこれだ!!!
『強制魔法少女の刑』
その名の通りだ! 『お前が魔法少女になるんだよ!』的な刑である。
それプラス『トラブル体質』と『ラッキースケベヒロイン体質』をプレゼントだ! ティーンズマガジンのちょっとエッチ系のヒロインのようになってしまえ!
これで酷いセクハラを反省しろ! 猛省しろ! 地の果てまで!
困っている人を助けるまで、魔法少女は解除されないぞ! ちなみに魔法少女の時はトラブル体質やラッキースケベヒロイン体質は倍仕事する。
………あとは解るな?
ガワは美少女でも中身はおっさん! そして狙われる貞操! フハハハハ! 反省するがいい!
今まで酷い目に合わせた少年少女の心を少しは理解するといい!
今日も枕を「こんなはずじゃなかった」と涙で濡らすドートを、小姓たちは憐み1000%の視線で慰める。自業自得だが、男の矜持を全力で圧し折られ、もし周囲にバレたら聖職者の地位も怪しいし変態扱い一直線。しかも、その変身後の姿を熱愛する若いイケメンたちがいる。呼吸をするように口説き、フラグは乱立し、メッチャ体を狙われている。性的な意味で。
悪は改心したのだ。
アヤネコ、とっても良いことした。
神様にも伝えると「よかったね」と褒められた。
ただファンシーマスコット先輩だけは顔色が青い。ガタガタ震えながら、私を見てドン引きだ。酷い。
「お前に人の心はないのか……」
次はぬいぐるみ好きのブルドックに似たワンちゃんの玩具にして差し上げた。
勢い余って綿をまき散らされないといいね!
エルストンは困っていた。
最近、自分の後見人であるフェルゼン辺境伯がけったいな宗教にドハマりしているのだ。
その名もヌッコ教。
主にやっていることはヌッコを模した石像に祈りをささげること。
そして、その祭壇が当然のように屋敷にあった。石像もまたあった。それはいい。まだスルー出来たのだが、それに飽き足らず屋敷の中にも外にも大量にヌッコの石像を飾り、小物がいちいちヌッコ柄やヌッコ模様なのだ。
もとであるヌッコ自体が落書きのようなシンプルな顔なので厳かとは無縁。むしろ間抜けた愛嬌がある。
ある日、自分の服に袖を通そうとして止まった。ボタンが全てヌッコだった。シャツからベスト、ベルトの金具までヌッコ。
普通に外に出られない。というより、弟妹にすら見られたくない。
あまりにヌッコが溢れかえっていた。テラスで読書をしようとしてヌッコクッションをどかそうと思ったらリアルヌッコだったときがある。初めて触ったヌッコはマシュマロとの柔らかさとベルベッドの肌触りだった。抱き上げられて驚いたヌッコはしゅばっと逃げた。もっと触りたかったのは内緒だ。
数日後、何故か顎にガーゼを付けたフェルゼン辺境伯がいたが。同時にクローゼット内の服もフルヌッコ仕様が解除されていたから誰かにどやされたのかもしれない。
よかった。この屋敷の執事も従僕もメイドたちもなぜかヌッコ教徒なので、誰も止める気配がなくて心配だった。
いつもの習慣で、テラスで本を広げて読み始める。
(この前のベリーパイは美味しかったな。今日も当たりだといいんだが……)
この屋敷に来てから頻繁に食べられるようになった甘味。
昨日も良かった。スコーンに添えられるフルーツジャムも苺、林檎、ブルーベリー、桃、イチジク、ラズベリー、アプリコット等豊富だった。読書後の脳にあの味は癖になる。
ただ甘ったるいだけでなく、果物の酸味と香りが舌先から鼻に抜ける。色々な種類を食べ比べても美味しい。
そして、その日――エルストンは運命と出会う。
プリンという魅惑的で甘美な味と。
応援ありがとうございます!
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