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3巻
3-1
プロローグ
元社畜の相良真一は異世界転移者である。
連勤で疲れ切った状態でバスに乗ったある日、彼はトラック転生ならぬバス転移した。ところが、移動した先の異世界で最初に関わった国――テイラン王国が、大層腐っていた。私利私欲のために異世界人の召喚を繰り返す迷惑国家だったのだ。
しかし、真一はその世界の主神である女神フォルミアルカに予めこの辺りの事情を聞いていた。大した称号も持たない子供と侮られて放逐されたのを良いことに、さっさとトンズラした。
その後、足取りを追われないように名前をシンと改めた彼は、旅をしてティンパイン王国へと辿り着く。
田舎の山村タニキ村で静かなスローライフを目指すことにした――のだが、ティンパインのお騒がせ王子ティルレインに妙に気に入られてしまったおかげで計画が狂いはじめる。うっかり国の重鎮に評価されたり、最強の魔馬デュラハンギャロップに懐かれたりと、何故かトラブルが追いかけてくる――これはそんなシンのお話である。
◆
デュラハンギャロップのグラスゴーを巡る王都での騒動も終わった。地位の高くない平民や冒険者たちから騎獣を窃盗し、密売していたサギール伯爵は処罰された。グラスゴーが暴れて破壊した屋敷の残骸から、彼が奴隷商をしていたことも発覚。宰相のチェスターが張り切って調査した結果、事態は急速に終息した。何はともあれ、シンはタニキ村に戻っていた。相変わらずちょっとしたトラブルは起きるが、これは日常の範囲である。
――そんな秋も深まるある日。
シンはより良いスローライフを目指して、今日も奮闘していた。
その一つが、お家のリフォームだ。
シンの住まいは、狩人のハレッシュから貸してもらっている離れだが、家主から好きにして良いと許可をもらったのをいいことに、せっせと改造している。
古びた木造の家は色々足りない。春、夏、秋までは良いとしても、積雪の多いタニキ村では冬場の防寒が心許ない。
そんなわけで、魔法やスキルを駆使して、せめて〝住めば都〟と言えるくらいにしようとしているのだ。
目指すは――こぢんまりとしていていいから――煉瓦製の瀟洒なお家。
シンはさっそく素材を得るために、山林や河原で採取作業に勤しんだ。
山は降雪量が多い。その環境に適応できない生き物たちは、冬場は暖かい地域に移動するか、冬眠する。寒くなってきているとはいえ、タニキ村の周りではまだ獣や魔物が出ることもあるから、シンはジュエルホーンのピコではなく、グラスゴーに乗っていた。ピコもそれなりに速く走れるが、やはりグラスゴーの方が運動力・戦闘力共に段違いに高い。
シンは河原に落ちている手頃な石をどんどん『異空間バッグ』のスキルで収納していく。結構な量を入れたが、バッグの残容量には全く問題がないようだ。
岩の下にはサラサラした砂や小石がある。それらも『砂利』や『砂』といった素材として異空間バッグに入れられた。また、河原の流木も、素材や薪として使えそうなら拾っていく。
ついでに、清流を泳いでいた魚は、魔法で雷を落として気絶させて、保存食用に確保した。干物にしてもいいが、異空間バッグの中に入れれば劣化しないので、いつでも鮮度抜群だ。未加工のままとっておくのもいいだろう。
山林の木の葉は、黄や赤や茶に色付きはじめたものが目立ってきた。シンは落葉が始まって鮮やかさを失いつつある木々を眺める。
山間のタニキ村周辺では、王都よりも季節の移り変わりを強く感じる。風もだいぶ冷たくなってきており、冬の寒さが訪れるのもそう遠くなさそうだ。
途中、ボアやスリープディアーといった魔物が出てきたものの、シンは弓で確実に仕留めていく。熊と遭遇した際は驚いたが、数十メートルの距離からでもあっさり射貫くことができたし、相手はグラスゴーの巨体にかなり尻込みしていたので、仕掛けやすかった。
他にも採取できそうな素材や獲物はないかと探していたところ、シンは妙に気になる茂みを発見した。
茂みというより木だろうか。葉がやけに青々としている一帯がある。
その木が寒さに強いだけかもしれないが、若草色と言っていいような色合いをしているものも多くあった。そして、林檎に似た真っ赤で丸い実をつけており、艶やかで甘い香りがほのかに立ちこめている。
警戒しているのか、グラスゴーはジッと見つめたまま動かない。
シンもこの不自然な木に目を凝らす。背筋というか、腹の底というか、そのあたりにぞわぞわと落ち着かない感覚が走る。
シンは警戒を続けつつ、矢筒から取り出した矢を弓に番え、違和感を覚えた付近に連射した。矢はほとんど木の幹に突き刺さったが、次の瞬間に変化が起こる。風もないのに幹が撓み、枝を振り乱して葉を揺らしはじめたのだ。
当然、普通の樹木がこんな動きをするはずがない。現に、その青々とした樹木以外は一切動いていない。
窪みや洞だと思われたところに、人面瘡のような不気味な顔が出来上がっていく。目玉と思しき部分に虚ろな光が灯り、こちらを睨みつけている。
(トレント!? いや、上位種か!?)
それらは蛸みたいにしなやかで不気味な動きをしていて、根や枝を揺らす。地面を滑るようにして、じりじりと、集団でこちらに寄ってくる。
シンが一度倒したことがあるトレントは単体だったが、今回は集団だ。
まだ距離はあるとはいえ、数と地の利は相手に有利。山林は枝や根を隠すにはうってつけだ。青々としすぎた葉が目立つので本体の位置はわかるが、あまり近寄るとどこから攻撃が飛んでくるかわからない。
(弓矢は大して効いていないみたいだな。樹木型だから痛覚が鈍いのか? だとしたら、物理攻撃よりも火か氷、あと条件が揃えば発火するから、雷もありか?)
シンは再び矢を番え、矢尻の部分に火の魔力を乗せて連射した。
射貫かれたトレントたちは、幹の内部から燃えて口から煙を吐き出しながらバタバタと倒れていく。
表面は燃えていないが、幹の内部からぶすぶすと音がする。
内側で燻ぶりながら燃えているか、急激に水分が気化したことによる膨張や、逃げ場を求める水蒸気の音だろう。
無論、シンはもっと強力な火の魔法を使えるのだが、いくら効率が良くても、火球をむやみやたらに投げて森林火災を起こしてしまっては、洒落にならない。
木の魔物たちが地面を揺らして倒れていく。
運良く火矢の第一波を逃れた残りのトレントたちは、ギィギィと軋むような声や唸りを上げている。
そして次の瞬間、根を蛸足のように這わせて一斉に逃げはじめた。
(逃がすか! あんなのがタニキ村に下りたら困る!)
そそくさと木立に紛れて逃げようとするトレントたちの背に、シンは容赦なく火炎矢を撃ち込んでいく。
シン自身は弓や魔法が使えるし、グラスゴーという強力な騎獣がいるので、トレントから身を守るくらい容易い。
だが、タニキ村には老人もいれば女性もいる。隣家のカロルやシベル兄弟のような普通の子供だっているし、領主家のジャックはまだ幼い。
トレントにとって、彼らは格好の獲物になるだろう。
「グラスゴー!」
追えと腹を軽く蹴って合図すると、グラスゴーは応とばかりに軽く嘶いた。
一躍で距離を詰め、蹄を地面に叩きつけて岩を隆起させる。
クラスター型の岩に弾き飛ばされ、転倒するトレントたちに、シンは追い打ちの矢を放つ。
樹木の魔物たちは、はらはらと葉を舞い散らしながら、次々と倒れていく。
一方的な蹂躙とも言えるが、シンとしては容赦するわけにはいかない。
放っておいて人間を襲っても困るし、今後雪が降った状態でも動き回れるものがいるとしたら厄介だ。
これ以上増える前にこの場で退治しておかねばならない。
最後の一匹を仕留めたシンは、周囲を見渡す。
不自然に青々とした緑はないし、動くものもいない。
地面に大量のトレントの死体が折り重なっている。女神にもらったスマホで確認すると、トレント、エルダートレント、マーダートレントと表示される。どうやらランクが違う魔物が混在していたようだ。
ちなみにこのスマホには、アイテムや魔物の鑑定、所持品やスキルの管理など、異世界で生活する上で便利な様々な機能が備わっている。
シンはスマホをポケットに仕舞い、まだ手に矢を持っていたことを思い出す。
火の魔力がついたままの矢をどうしたものかと、くるくる回して弄びながら歩いていると、コツンと何かに当たった。
「ヤッバ……」
山火事になると思って慌てて振り返ると、そこには枝に火が燃え広がった一際巨大な木――ではなくトレントが暴れていた。
樹齢数百年クラスの太い幹をしたトレント。今まで倒したトレントを鼠にたとえるなら、これは牛である。さっき倒した青々としたトレントとは違い、このトレントの葉は常盤色と枯葉色が入り混じっており、完全に森と溶け込んで擬態していた。
しかし、今は枝についた火を振り払おうとして、無茶苦茶に暴れている。
よく見れば、その枝はシンとグラスゴーを取り囲むように周囲に巡らされていた。
シンが合図をするより早く、グラスゴーは燃え広がった枝を蹴り飛ばしてその包囲網から抜け出す。
「こいつが親玉か!?」
巨大なトレントは鞭のように枝を地面に叩きつけるが、魔法の火はなかなか消えない。導火線のごとくじりじりと幹に燃え移ろうとしているのに気がついて、燃えている枝を別の枝で切り離した。
シンは反射的にさらに火矢を放ち、火種を追加する。
グラスゴーは絶えず移動しながら撹乱して、トレントの枝や根が近づかないように警戒している。
この規格外なトレントに何度も矢を撃ち込んでいるうちに、シンはあることに気づいた。
(このトレント、他のトレントよりずっと燃えにくい……。耐火特性やスキルでもあるのか?)
巨大トレントは、前のトレントより明らかに耐久力が高かった。
火矢は全く効いていないわけではないが、それにしても一発ごとの効果は低い。枯葉や枝先などにはすぐに火がつくものの、太い枝や幹はなかなか燃えず、火の広がり方が緩やかだ。
それでも、木としての本能なのか、巨大トレントは火をとても嫌がっているのは間違いない。積極的に火消しに回って、余計な動きが増えている。防戦に注力しているため、シンへの攻撃が疎かになっている。
他のトレントたちより効果が薄いのは確かだが、火が苦手なのは変わりないらしい。
もし開けた場所や河原に誘い込めれば、山火事を気にせず火炎魔法の連打で力押しできるかもしれない。しかし、そうした場所はここからだと距離がある。
ふと、シンは足元にやたら葉が落ちていることに気づいた。まだ真新しい葉もたくさん落ちている。
落葉自体は季節を考えればおかしくはないが、それはまるで雨のように次から次へと周囲の木々の枝から落ちてくる。
まだ紅葉が進んでおらず、緑の濃かった葉まで、目の前でしおれて、ドライフラワーみたいになっていく。
一方、巨大なトレントを見れば、木々がしおれるのに呼応するように焼けていた樹皮が再生しているのがわかる。
(こいつ、周囲の木から栄養を奪い取っている?)
それだけではない。逃げようとした小鳥や小動物を枝や根で仕留めて取り込んでいる。
まるで食虫植物――というより、むしろ蛇の捕食を思わせる姿だった。
(冗談じゃない! 森が枯れて動物たちまで!? 早く仕留めなきゃ!)
だらだらと戦えば、山の幸たっぷりのこの一帯がハゲ野にされてしまう。
幹に火矢を撃ち込んで中を焼こうにも、あまりに大きくて、このトレントには決定打に欠けるようだ。ダメージを蓄積させていくことはできるが、周りの動植物から養分を奪い取って回復していくことを考えると、持久戦は避けられない。
待つのは得意なシンだったが、はっきり言って、彼はあまり体力がない。
回復は早いものの、トレントに攻撃に回られて主導権を握られてしまうと、非常に困った状況になるだろう。
シンは常に仕掛ける側になるようにしていたし、相手に先制されても、高火力でやり返して積極的に主導権を奪うことを心掛けていた。
精神的余裕が欲しいゆえの行動だ。
シンは俺TUEEEEタイプではない。戦いに生きるタイプではないのだ。
(狩りは嫌いじゃないけど……こーいう殺し合いって感じのは、好きじゃないんだよ!)
シンが欲しいのは、強者への勝利による達成感ではなく、安定的な生活だ。
戦いで自分の能力を誇示することより、豊かな生活と防災的な備蓄や金銭的余裕こそを欲している。
村での生活を守るためにこの場で勝負をつける覚悟を決めたシンは、腹に力を込めて、今までで一番大きな魔力を練り上げた。風と火の魔法だ。
二属性の魔法を同時に使うことは初めて。ましてやここまで大きく魔力を動かした経験はない。
魔法はこの世界に来てから本で覚え、その知識に基づいて感覚で行使していた。
人生において〝魔力ない歴〟の方が長いシンは、魔法を〝便利だけれどどこか恐ろしいもの〟だと感じていた。
正直言って、この力が怖いのだ。
今彼は、簡単に生き物を殺せるし、破壊できる力を持っている。
中二病を患っていらっしゃる系のなんちゃって魔法使いではなく、ガチデストロイヤーとして君臨できる。もちろん、実力的に見れば上には上がいるだろうけれど、それでもやろうと思えばできてしまうのだ。
(僕が希望しているのはスローライフであって、バトルでもレベリングでもないんだってば!)
恐怖と怒りがせめぎ合う中で、火炎渦が生まれた。
紅蓮の竜巻は大樹の魔物をすっぽり覆い、根を巻き込み、葉を巻き込み、枝を巻き込みながら、炎の螺旋で焼き尽くす。
暴風に巻き上げられた枯れた枝葉も、魔物と一緒に燃えていく。
だが、風魔法によって火の勢いは完全に制御されているため、周囲には燃え広がらない。灰や燃え滓は木っ端になって上空に巻き上げられる。
魔物はしばらく抜け出そうともがいていたが、その体は再生するより早く燃えていく。
全身を舐める煉獄。炭化した部分から折れて、さらにそこから燃え広がる。
シンは馬上から巨大なトレントが徐々に小さくなっていくのを見つめていた。
シンの黒い瞳は炎を映して真っ赤だった。
熱気と疲労にうっすら脂汗をかきながらも、それを拭う間も惜しんで燃え盛る渦の奥を睨みつけている。
炎と竜巻の制御に魔力と神経がすり減って、きりきり舞い状態だ。
最初はつんざくような怒声とも悲鳴ともつかない声を上げていた魔物は、すっかり静かだ。
熱気を孕んだ風が頬や髪を撫でる。
肌がひりつくような熱さと、じっとりと汗ばむ不快感。
真っ赤な炎と風の柱は、周囲の緑を赤く染めるほどに煌々と輝いている。
シンはしばらくその様子を眺めていたが、渦の中に魔物の影すら映らなくなったのを確認し、ゆっくりと炎を小さくしていく。
周囲は炎の熱にあぶられて焼け焦げ、すっかり炭だらけになっている。
シンは山火事防止のために魔法で水を撒いた。見たところ引火している雰囲気はない。
(これ、普通の炭かな? スマホ先生、出番です)
簡単に調べると『木炭』と出てきた。暖炉に使えそうなので、全て異空間バッグに仕舞った。
木炭を全て回収し終えると、バランスボールくらいの大きな丸い炭がいくつか残った。
シンは警戒しながら木の枝でつつく。
すると、球体の表面がボロボロと落ちていき、中から色々な物が出てきた。
(あ、これって、トレントを倒した時に出る木の実みたいなやつか!)
シンが以前トレントを倒した時にもドロップした。
表面は焦げていたが、幸い、中身は無事だ。灼熱地獄に晒されて燃え尽きたわけではなかったらしい。
他にも炭ボールは転がっており、中から色々とドロップアイテムが出てきた。
胡桃、栗、カカオ、林檎の他に、メープルシロップが詰まった『メープルドロップ』などもある。
その中の一つから、透き通る黄色い塊が出てきた。見た目はメープルドロップに似ているが、質感がちょっと違う。持ち上げてみると、硬くて石やガラスみたいな手触りだった。
陽にかざすとキラキラとして綺麗で、宝石のようだったが、シンは宝石にも鉱石にも詳しくないので、残念ながら何かはわからない。
スマホで調べてみたところ『琥珀』と出てきた。
(琥珀って、アンバー? 宝石だよなぁ、確か樹脂の化石……)
あまりに興味がないから忘れていたが、以前にトレントかマーダートレントらしき魔物を討伐した際も出てきた気がする。ただし、あの時よりもだいぶ大粒だ。
しかし、巨大トレントがいくら長く生きた個体でも、化石ができるレベルの長寿とは考えられない。樹脂ということでぎりぎり植物繋がりではあるが、その辺はモンスターが落とすものだし、魔法も神様もたっぷりてんこもりなファンタジーかつ異世界に、突っ込んでも無駄だろう。
この世界ではこの世界独自の仕組みがあるのだ。シンはそう納得することにした。
手に入った琥珀は明るい蜜色から茶褐色のものまで様々。どれもとても綺麗である。
しかもデカい。シンの両手に余る巨大なサイズの琥珀もあった。
(僕には使い道ないしなぁ。綺麗だし、ミリア様やチェスター様なら有効活用してくれるかな?)
宰相であるチェスター伯爵と、その美しき妻のミリア。王都にいた時はお世話になったし、貴族の二人なら宝石をアクセサリーとして身につけて使う機会だってあるだろう。
さらに、炭の中からはトレントの魔石がいくつも出てきた。魔石が出るということは、それなりに強い魔物だったようだ。もっとも、図抜けて手ごわいトレントがいたせいか、他のトレントの強さは全く感じなかったが。
グラスゴーがじゅるりと涎を垂らしそうなおねだり顔でうろうろしている中、シンは魔石を拾い集める。
シンはグラスゴーの大きなうるうるの瞳に弱いので、目を合わせないようにする。
ボストレントの魔石は今まで見た中でもダントツに大きな緑の魔石だった。これだけは仕舞っておく。他のトレントたちの魔石はぼちぼちのサイズだったので、グラスゴーに食べさせた。
(あ、討伐部位……確かトレントは根っこのこぶを持って帰ればいいと聞いた気がするけど……全部燃えているな、これは)
聞いたのはかなり前だからうろ覚えだが、どの道ほぼ炭と化している状態ではどうしようもない。
改めて、戦場となった一帯を見ると、どこもかしこも真っ黒だ。もともとは鬱蒼とした森だったはずの斜面が、かなり焼け野になっている。
真っ黒な地面を見ていると、シンの心にだんだん罪悪感と不安感が湧いてくる。
自然破壊、あるいは環境破壊――いずれにせよ、思いがけずかなり森を荒らしてしまった。
(これ、地滑りとか起きないかな?)
森には保水、土壌補強、自浄作用など様々な能力がある。生物の棲処にも食料にもなり、豊かな生態系を築くために必要な環境を作ってくれるのだ。
これから雪が多くなってくる季節には、雪崩防止にも一役買ってくれる。
普通に育つのを待っていたら、再生するのに何年かかるかわからない。
(うーん、炭化した木にポーションをかけても駄目だろうし)
採取した植物などにポーションをかけると、栄養剤のかわりになるのか、一気に成長する。
何か植えられそうなものはないかと探していたシンは、落ちていた枝にドングリがついているのに気づいた。ちょっと煤けてはいるものの、焦げてはいない。
山の恵みを貰って生活する者として申し訳なくなったシンは、熱がなくなった地面にドングリを蒔いた。ついでに少し離れたところから取ってきたよくわからない木の苗をぽつぽつ植えていく。
そして、ポーションを少し混ぜた水をかけておいた。
(まさか異世界に来て植林するとは……)
野生動物や魔物に食べられてしまうものもあるだろうが、何本かが生き残って育てば儲けものだ。
ちなみにグラスゴーは、シンが植林している間、炭化したトレントの残りカスを一生懸命探していた。普通の植物より魔物の植物の方が美味しいのかもしれない。
作業が一段落したシンは、ふうと溜息をついて植林した場所を見る。
すると、早くも苗木やドングリがずごごごと地鳴りを上げて成長しはじめた。
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