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一人より二人

村人、ルームシェア。

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やることも決まった、お開きムードになった。

バーから一歩出ると安心感がない。

私はフェンリルのスーツの裾を掴む。

「何をしている」

「泊めて、一人になりたくない、怖い」

「戯れ言はやめろ……!多少でも勇者に申し訳がないとか思わないのか」

「そんな義理ない……」

今さらそんなこといわれても……。私がそう言う心境がわからないでもないのか、あまり強くは言えないらしい。

フェンリルは困惑を隠すために怒ったふりをしているが、わずかに口元がはにかんでもいた。ご指名をもらうのは、まあ、悪い気はしないのだろう。


「じゃあさ、いっそのこと、みんなでフェンの部屋に泊まればいいんじゃない?それなら困ることないでしょ」

サイファの提案に、フェンリルは肩を竦める。

「はあ?そんなベタベタしたのヤだよ、ガキじゃあるまい……」

「僕的にはレミィちゃんとフェンを二人っきりにするのってちょっとヤだし」

「なんで」

「嫉妬」

フェンリルはさっと私を隠すように、サイファとの間に立った。

「お前まさか……!?」

「ちょっと好きになってきちゃったかも。発破かけてくれる子って貴重だよ?やる気に火がついた」

んふふ、と歌うように笑うサイファ。

挑発したつもりはなかったが……そういうことにはなるな。余程の負けず嫌いなのだろう。


「気持ちは嬉しいけど困る……」

私は首を振った。

瞬間、二人とも何が起こっているのかわからず、ポカンとした間を置いた後。

サイファは自分を指差した。

「えっ、僕、今フられた?」

「王は無理」

「……すごいフられ方した!わぁ!初めてフられた!」

そこにあるのは悲しみでも衝撃でもなく『すげえ!』という興奮のようだ。垂れ目が無闇に見開かれている。

「よくやった!誉めてやる!」

フェンリルもまったく同じテンションだ。常勝無敗の男はフられるだけで盛り上がるようだ。

旧知のような感覚とは言え別に長い付き合いでもない。ついていけないのが残念である。


頭を撫でる代わり、フェンリルは肩をトンと軽く叩いてきた。

「俺の部屋は二部屋ある。リビングの方に泊まれ。どうぞ魔王様はご心配なくご自分のベッドでご就寝なさいますよう」

「えー。独り占めはずるっこいー。初めてにして最速でフられたこの興奮分かち合わせてよー」

「却下。こいつをお前から引き剥がすことが優先だよ」

「ちえー」

唇を3の形に尖らせると、途端に顔全体がシンプルに見えてしまう。美形なのにここまで破顔できるからサイファはすごい。


しかしラッキーだ。本命はこっちである。
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