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一人より二人

村人、面接をする。

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朝イチの業務が『シー君』の面接だった。面接と言っても内定しているから、顔合わせと説明が正しいかもしれない。

こんな近々で?と思うが、フェンリルは昨晩のコウモリで連絡を済ませていたようだ。ぜんぜん気が付かなかったのでびっくりである。


三日ぶりの謁見の間。

玉座にサイファ。その脇に控えるフェンリル。

そして玉座に近い場所に座らされた私。来賓だから、ということらしい。

肩幅を縮める私に、フェンリルが心配そうな目を向けた。

「どうした。具合でも悪いのか」

「私この席嫌い……」

こういう偉そうな席は身の丈に合わない。まだ人質らしい扱いの方がましだ。縄で縛られたりしてたら反発だけで堂々とできるけど、こんな場所にいる人間でないことは重々承知である。

サイファはおかしそうにヘラヘラ笑った。

「あはは、緊張?それじゃー僕の奥さんにはなれないな。頑張ってよ」

「なるつもりないんだけど」

しらーっと横目で見るが、サイファは相変わらずニヤニヤと口元で笑うだけで、一体何を考えているか読みがたい。

ただのちゃらんぽらんかと思ったけど、昨日は妙に怖かった。一枚岩で魔王やってるわけじゃないんだろうな……。

「させるつもりもないな。まあ魔王様のナンパは女性に対する挨拶だ。仕方ない。レミールも女性と認識してもらえたことを喜ぶんだな」

名前で呼ばれたのが嬉しくて、ついニコニコしてしまう。でもフェンリルにはあまり異性と思われていないことが露見した。

「私こんなに可愛いのよ。当然じゃない」

「は?うぜぇ……」

フェンリルからものすごく冷たい目を向けられた。口元は半笑いだから、冗談として受け止められてはいるようだ。

「ぶふっ」

サイファが吹き出した。口を押さえてぶるぶる震えている。

「いやごめん、本当にそうなんだけどね。自分で言う子にはなかなか出会わなかった。うん、ピンクのドレスもよく似合うね。可愛いよ」

誉められたので「ありがとー」しとく。

「珍獣だな。魔界でも通用するぞ」

誉められて……る?誉められて……ない?皮肉屋の言葉は察し辛かった。精神的にたくましいと言う風に理解しておこう。


「あ、なんかちょっと気持ちが楽になったかも」

「それは良かった」

心を隠す作り笑いではなく、サイファの目が柔らかく笑う。

二人の視線は、なんとなく優しい気がする。

足をぶらぶらさせると「こら」とフェンリルに叱られた。
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