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一人より二人
村人、友人と勇者に手紙を書く。2
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「俺も見たい」
ハルへの手紙を楽しそうに開くサイファの横から、フェンリルが机を回って覗き込む。机に片手をついて近眼っぽく眼鏡を中指で押し上げる……二人の顔が近いなぁ。なんか変なもの見てる気がする。
手紙の内約。
『あなたが変なことを言うせいで魔王に拉致られました。私は非常に快適に過ごしていますが、面倒ごとは本来なら好かないのはご存知でしょう。見捨てて頂いてもいいけれど、それはちょっと困ることがあるので、一刻も早く魔王城に来なさい。
そして、私はあなたの婚約者ではありません。あなたを待つ義理もできていません。告白も婚約もしていないのに言いふらすとはおこがましいにもほどがあります。後生だから冒険先とかで素敵な恋人を見つけて早く幸せになりなさい。
追伸。
魔王城で素敵な恋をしています。今度こそ邪魔したら許しません。一生恨みます。』
空気が凍っている。二人の顔が引きつっている。
「この『できていません』って……いや、いいんだけど、言わなくていいんだけど、むしろ聞きたくないし」
珍しくサイファは早口だ。
「それが、勇者なんだけど……ああ見えて腹が黒いと言うか、拗らせているというか……」
な?とフェンリルから視線を向けられる。ので、昨晩話したのと同じ内容を説明した。
イケメンなのに変な顔芸をしながらサイファは黙ってうんうんと頷きながら聞いた。
「わぁ……なんでそんなまどろっこしいことを……素直に言うと、レミィちゃんが勇者のアプローチに気がついてない説も僕の中では浮上してる」
「私はあいつの気持ちは知ってたわよ。だから離れたかったんだけど」
「勇者だってこの態度とられたら傷付くぞ。普通は気が付くって」
フェンリルの言葉に「だねぇ。これで追い続けるのは相当だよ」とサイファは深刻な顔をした。
椅子にもたれ、腕を組み、うーん……としばらく唸る。
「……いやぁ。変な人間関係に巻き込まれちゃったな」
「まったくもって」
フェンリルが痛ましいように深く頷いた。
サイファは机に身をのりだし、頬杖をついた。そして、私の心を見透かすように目に覗き込んできた。
「ねぇ、レミィちゃん。勇者から逃げたい?」
「逃げたい」
「じゃあ、勇者が死んでもいい?」
冗談で言ってるわけではなさそうだ。目が真剣だった。こんなに口調は軽いけど、声は固く低い。
本気で勇者を始末することを考えている。魔王なら変じゃない。でも、この話の流れ、私のために殺すと言っても過言ではない。
ハルへの手紙を楽しそうに開くサイファの横から、フェンリルが机を回って覗き込む。机に片手をついて近眼っぽく眼鏡を中指で押し上げる……二人の顔が近いなぁ。なんか変なもの見てる気がする。
手紙の内約。
『あなたが変なことを言うせいで魔王に拉致られました。私は非常に快適に過ごしていますが、面倒ごとは本来なら好かないのはご存知でしょう。見捨てて頂いてもいいけれど、それはちょっと困ることがあるので、一刻も早く魔王城に来なさい。
そして、私はあなたの婚約者ではありません。あなたを待つ義理もできていません。告白も婚約もしていないのに言いふらすとはおこがましいにもほどがあります。後生だから冒険先とかで素敵な恋人を見つけて早く幸せになりなさい。
追伸。
魔王城で素敵な恋をしています。今度こそ邪魔したら許しません。一生恨みます。』
空気が凍っている。二人の顔が引きつっている。
「この『できていません』って……いや、いいんだけど、言わなくていいんだけど、むしろ聞きたくないし」
珍しくサイファは早口だ。
「それが、勇者なんだけど……ああ見えて腹が黒いと言うか、拗らせているというか……」
な?とフェンリルから視線を向けられる。ので、昨晩話したのと同じ内容を説明した。
イケメンなのに変な顔芸をしながらサイファは黙ってうんうんと頷きながら聞いた。
「わぁ……なんでそんなまどろっこしいことを……素直に言うと、レミィちゃんが勇者のアプローチに気がついてない説も僕の中では浮上してる」
「私はあいつの気持ちは知ってたわよ。だから離れたかったんだけど」
「勇者だってこの態度とられたら傷付くぞ。普通は気が付くって」
フェンリルの言葉に「だねぇ。これで追い続けるのは相当だよ」とサイファは深刻な顔をした。
椅子にもたれ、腕を組み、うーん……としばらく唸る。
「……いやぁ。変な人間関係に巻き込まれちゃったな」
「まったくもって」
フェンリルが痛ましいように深く頷いた。
サイファは机に身をのりだし、頬杖をついた。そして、私の心を見透かすように目に覗き込んできた。
「ねぇ、レミィちゃん。勇者から逃げたい?」
「逃げたい」
「じゃあ、勇者が死んでもいい?」
冗談で言ってるわけではなさそうだ。目が真剣だった。こんなに口調は軽いけど、声は固く低い。
本気で勇者を始末することを考えている。魔王なら変じゃない。でも、この話の流れ、私のために殺すと言っても過言ではない。
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