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一人より二人

村人、友人と勇者に手紙を書く。

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「雑魚は入れてもらえない場所だぞ」とフェンリルに言われて、サイファの執務室に通される。私は雑魚じゃない。

偉そうな机だ。ピカピカして、広くて、椅子は皮張り。壁際にずらりと並んだ整理整頓された書類は、なにやら重要そうなものまである。

壁には魔界と人間界の地図が張られていた。これ……城がどこにあるかわかる……。村から山二つくらい越えたところだから、ある意味、そこまで遠くはない。

他には何もない、シンプルさが寂しい部屋だ。落ち着かない。


「やあやあ、いらっしゃい。さーあ、検閲のお時間だ。お手紙拝見しようじゃないか」

直前までやっつけていたらしい資料をザカッと横にずらし、机についたままサイファは手を伸ばした。

「あんまり字は綺麗じゃないから恥ずかしいけど……」

「お前にも羞恥心はあるのか」とフェンリルの酷すぎるつっこみ。あるわい。睨みつける。


「大丈夫大丈夫……あれ?二つあるね」

「一つはハルに届けて欲しいの。できる?」

「レミィちゃんのお願いだよ。なんだってできるさ。……内容にもよるけどね」

遊びではないと印象付けられるような、声がワントーン下がる注意深い倒置法だった。

「まずはお友達に送る方から確認しよう」


なんとなくソワソワ落ち着かない数分が過ぎ。


「うん。まったく問題なし。完璧だね。うまく行きそうな気がしてきたよ」

……ひとまず大丈夫らしい。ホッとしてしまった。

「じゃあ、こっちは終了として……問題はこっちか。ふふふ、面白いことをしてくれるじゃあないか」

サイファのスラッとして綺麗な手がハル宛の手紙を掲げる。

「お前は予想外のことばかりする……」

「自分で考えて動くのはいいことだよ。信頼もできるからね。部下か妻に欲しいくらい」

部下優位。妻はおまけくらいに聞こえる。仕事ができると言われている気がする。嬉しいぞ!

サイファの言葉に、フェンリルが頷いた。

「ん。部下は悪かねーな。帰りたくなくなったら俺の部下になれよ。こき使ってやる」

「優しくしてくれないなら、やだ」

「部下は貴賓扱いできねぇな。上司の俺は怖いぜ~」

それはわかる。しかし、このからかわれ方はちょっと気持ちが良かった。「えー」とニヤニヤしてしまう。

「僕の奥さんになれば常にVIPだよ?」

「VIP過ぎてやだ」

ごめん、これは普通に首を振った。冗談のときでもNOははっきり示す主義だ。

一つ気になることと言えば、サイファがあしらわれるたびに、フェンリルがこそこそと暗い笑みをこぼすこと。なんとかして欲しい。
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